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中小規模SIer・ソフトハウス――下流に降りると、手を動かせるようになる。その代償とは

ITエンジニアの会社選びについての記事の6回目です。この記事では、中小SIerについて、あれこれ書きたいと思います。これまでの記事では企業の業態を次のように分類し、(1)と(2)について記事を書きました。今回の記事は(3)~(4)がターゲットになります。プライム、サブコン、N次請、という区分けは、受託開発という業態を商流でさらに分類したものです。

・ 情報サービス業
 ・ 自社サービス展開/自社プロダクト販売・・・(1) 記事
 ・ 受託開発
   ・ プライム(大手SIer)・・・(2) 記事
   ・ サブコン(中規模SIer)・・・(3)
   ・ N次請/SES/派遣(小規模SIer/派遣事業者)・・・(4)
    ・フリーランス・・・(5)
・他業種(いわゆるユーザ企業)・・・(6)

なお、これまで会社選びについて書いた記事の一覧はこちら。

中規模SIer――やはりマネジメントが求められることがある

中流の商流に位置する中規模SIerは、大手SIer同様、社員にIT技術そっちのけでマネジメントばかりさせられる可能性が大きいと言えます。この問題の構造は大手SIerと同じです。

たとえば、開発チームがプロパー社員だけで組まれれば、プロパー社員全員のIT技術の成長機会になります。しかしふつうは、ある程度の規模の会社だとこういうことはしませんよね。

かわりに、パートナー会社と協業するわけです。たとえば、10人のパートナーと10人のプロパーが協業すれば、同じ社員数でも、売上高は2倍に、利益も1.5倍くらいになる。会社が利益を最大化するための戦略としては、とても合理的でまっとうであると言えると思います。

会社にとっては良いことずくめですが、このときプロパーに与えられる成長機会の質はどうなるでしょうか。プロパー6人にIT技術の成長機会が与えられ、プロパー4人には代わりにマネジメント技術の成長機会が与えられる、といった感じになると思います。ここで困ったことは、後者の4人は単純に能力の高い者から順とか、年次順とかで選ばれる傾向にあるということです。

これは困りましたね。

小規模SIer/SES業者――戦略的なアサインが行われない

一方、最下流の商流に位置する小規模SIer/SES業者は、「エンジニアの稼働率を最大化するゲーム」で動いています。すると、社員のスキルアップに向けた戦略的アサインに無頓着になります。会社にとって最も利益を上げる方法は、いかに技術者の待機期間を作らず、押し込める案件にアサインできるか、それだけにかかっているからです。

無頓着な案件アサインの例です。「最初の半年はJava案件。次はPHP案件。その次はPython案件。」経歴書には言語を3つも書けてラッキー!?

これ、幅広いスキルを身に着けたと言えますか? 言えるわけがない。JavaとPHPとPythonで、Hello Worldとfor文とif文が書けるようになったところで、Javaができることにも、PHPができることにも、Pythonができることにもなりません。

まずは1つの分野に特化して技術力を身に着けないと、他分野で学ばなければいけない部分に、気づけない。なぜなら、他分野について無知であることは、自分の知っている分野の深い部分からの類推で、はじめてわかることなのですから。

まとめと次回予告

上流・中流・下流どの商流に位置する企業であっても、技術者が求めるキャリアパスと企業による案件へのアサインとのミスマッチは、その業態から構造的に起きやすいことが見えたかと思います。この構造的な問題に、その企業はいかに真摯に向き合えているか? ここが企業を選ぶときのポイントですね。

ところで、「上流・下流」という言葉は、商流を指す言葉であるとともに、開発工程を指す言葉でもあります。技術者の多くは「自身がどの商流に位置するか」よりも、「自分はどの工程に携われるか」の方に関心を持っているかと思います。

そこで、次回は「企業の業態(商流のなかでの位置)と開発工程との関係」を概観してみたいと思います。あわせて、フリーランス、ユーザ企業の情シスという選択について取り上げたいと思います。

#コラム #ITエンジニア #待機要員 #転職 #SIer #サブコン #SES

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