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ITエンジニアから見た転職エージェントサービスの良さ、悪さ

ITエンジニアの会社選びについての記事の12回目です。今回の記事では、転職エージェントサービスについて書きます。これまでの記事はこちら。

転職エージェントサービスの便利さ

転職エージェントサービスは、便利なものです。非公開求人へのアクセスや、求人への応募・各種調整の代行など、そのメリットは、ググれば美辞麗句がわんさかでてきます(検索すると転職エージェントサービスが作っているサイトがヒットするのですから、当然ですね)。なんと「デメリットはありません」と豪語するサイトもみつかりました。

これらに加えて私が感じるメリットを1つ言えば、孤独感の緩和による心理的負荷の軽減、があると思います。転職活動は「孤独な戦い」になりがち。そこに共に戦うエージェントが現れるおかげで、孤独感が和らぐものです(私の心が弱いだけでしょうか)。

転職エージェントサービスに支払うコスト―― タダ=何よりも高いかも

しかし、先人は偉大な言葉を残しています――「タダより高いものはない」。とすれば、エージェントを使い転職を決めることによって、気づかずに失うものもきっとあるはずです。一体それは何でしょうか? 

本来、自身の条件に適した求人群のなかから、エージェントの利益のためにバイアスやフィルタを掛けられた求人ばかりが提示されるおそれ、というのが支払われるコストなのだと、私は思います。ではどんなバイアスやどんなフィルタが、なぜかかるのでしょうか? これはエージェントの収益構造から、逆算で考えてみると分かります。

「年収額の35%」をめぐるゲームと、プレイの数々

転職エージェントサービスの収益源、それは求人企業が支払う成功報酬です。その額は転職後年収額の35%あたりが相場。けっこうな大金ですよね。このルールで各ステークホルダーが利益を最適化させようとゲームをプレイすると、どうなるでしょうか。

エージェントは、いかに短期間でなるべく多くの転職を、かつ提示年収の高い求人に対して成功させるか、というゲームをプレイすることになります。すなわち、求職者には内定可能性が高く、かつ提示年収の高い企業を高頻度で数多く薦める。その求人がエンジニアにとってのキャリアプランにあっているかどうかは、実は興味を持ちようがない。なぜなら成功報酬が支払われる条件は、たかだか入社後1年間の勤続実態でしかないので。

一方求人企業は、この成功報酬をケチろうとする。このせいで、高い年収を提示したい人材に対しても、入社時の年収を低く提示せざるを得ない、ということが起こりえます。私の実体験として、ある企業から条件面談の場で「エージェントに馬鹿げた額の報酬を払いたくないので、約束したい年収より低いが、書面上はこの額で雇用契約を結ばせてくれ。そのかわり口約束で申し訳ないが、約束した年収との差額はすべてボーナスで積むから」と提案されたことがあります。うんざりするような話です。

非ITエンジニアによる「キャリアアドバイス」とは

ところで、転職エージェント担当はキャリアアドバイザーとしてのサービスも提供します。

しかし残念ながら、この担当者にITエンジニアの経験が無い場合はキャリアに関する話をする意味はほぼないと言ってよいでしょう。

なぜなら、スキルの陳腐化のスピードが速い「この世界」に生きたことがない彼(彼女)は、これまでの記事で述べたITエンジニアに特異的な企業選びの視点をもてないからです。彼(彼女)は会社を測る属性や物差しをさまざま持っていて、それぞれについてアドバイスします。「年商」「社員数」「離職率」「社員平均年齢」「諸制度」等々。しかし、「この会社は社員がITエンジニアとして成長できる会社か?」という視点以外のどのような観点で彼らが求人を評価しても、ITエンジニアにとっては的外れなものでしかありえません。

では、「前職でITエンジニアの経歴がある」方の場合はどうでしょう。この方は、今はITエンジニアではない。いわばITエンジニアくずれとしてのキャリアを積み重ね、現在に至っているわけですね。ですから、自分も「くずれ」として別業種に転職したいのであれば、助言を乞うべき相手としては適しているかと思います。

まとめと次回予告

今回の記事では、転職エージェントサービスについて見ました。端的にまとめると、エージェントサービスという業態が本質的に持つ利益相反性(大げさですが)を理解したうえで、注意して使いましょう、ということになります。

次回は求人へのアプローチのそれ以外の方法について書いていきます。

#コラム #ITエンジニア #転職 #転職活動 #転職エージェント

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