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【シない二人】#12 何もしない

”静”の努力をする

そう話してから本当に何もしなかった
誘うような発言や恰好
あからさまに香りや雰囲気を変えるとか
とにかく徹底してやめた
私にとってこれらの慣れない努力は苦痛だったのか
やめようと決めたら少し気が楽になった

プレッシャーを与えると
確かに繊細な男性は勃起しなくなると聞いたことがある

レスになってからずっと
ネットや書籍を駆使して少しずつ知識を増やしていた
それなのについ焦りもあって
私も多々NG行動をしてたんだな

今回それに気づけただけでも良かった

後は健次郎に任せよう

それからしばらくして
私は仕事を始めた
きっと家にずっといるから
考えすぎちゃうし視界が狭くなっちゃうんだ

この試みは功を奏し
私の世界が別にできたことで意識が分散した
突発的にレス問題を吹っ掛けて
健次郎とギスギスすることもなくなり
ただ仲良く楽しく他愛のない話をして
穏やかに過ごす

なるほど
これが続けばきっと
彼のプレッシャーもなくなって
その気になる日も来るんだよね
自然に待つっていうのも大事なんだね

…しかしその考えは甘かった
と気づいたのは6か月後

またとしても打ちのめされるとは
今度こそ改善すると信じていたのに

健次郎は
結局
何もしない

何故?

もはや怒りというよりも謎

誘わない
シようとする素振りすらない
心境を言うわけでもない
聞いても来ない

何故?

私は仕事を始めるなどして
この件で”動かない”ように努力してきた

彼には”動く”努力をしてくれとお願いしたけど
『動いてほしい』と示すことも
プレッシャーになると判断して
この期間一度も言ったことはない

彼は努力しているのだろうか?
しているとしても見えない
このまま待っていていいのだろうか…
いや、いいとは思えない
今までの経験で分かっている

仕方なく守ってきた”静”の誓い?を破ることにした

「あのさ…知ってた?
私達もう6か月後の世界にいるんだよ」

「え…?何、こわっ、SFの話w?」

この話題を長く続けすぎて
ポップに話せるようになってきた自分が悲しい

「健次郎、覚えてる?
半年前にレス問題について
お互い努力しようって」

半笑いだった彼の顔が引きつった
「あー…、うん、覚えてる」

「私は努力したつもり
何も言わなかったしアプローチもしなかった」

「そうだね…」

「貴方は?
私には努力らしきものは分からなかった
もし何かしていたなら教えて」

徐々にヤバいという焦りの顔になってきてる彼
きっと何もしていないんだな
私に言われるまで放置して良いと思ったの?

”動”に移る努力
そんなに難しいこと?
もっと具体的に指示しなきゃいけなかった?

何より悲しいのは
私の愛情も信頼も無下にされたこと

与えられた猶予期間に
努力どころかあぐらをかいて
この問題がどれだけ危機的かも気づいていない

信じていたのに…

彼の動揺する顔をみていたら
みるみる失望が広がっていく

「えっと…
一応シようと思ったことはあるんだけど
タイミング?ってゆーか、
なんか上手くいかなかったてゆーか…」

「…そう」

なんか話す気力すらなくなってきた

「…ごめん…」

「・・・・・」

泣きたいんだか
怒りたいんだか
自分でも感情が分からないまま

私は何も言わずフラフラとその場を離れた

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