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【シない二人】#21 決断(後編)

”何だろう、霧が晴れたような感じ”
奈々はこの結論に至ってからそんな気分だった

『友達に戻ろう』

健次郎は明らかに困惑していたが
奈々は全く意に介さない
”だって彼もこの先何のプレッシャーも感じずに
穏やかに過ごせるんだからいいじゃん”
そんな風に思っていた

だからこそこれは提案でなく結論なのだ
覆す気はない

「ちなみにさ、そもそもだけど
健次郎も別れたくないんだよね?」
「そりゃそうだよ!」
「だよね、良かった、じゃあこれでいこ」
「何その夕飯カレーにしよ、みたいなノリ…」

微妙に受け入れがたい雰囲気を出している健次郎だが
頑固な奈々が考えを変えるわけがないことも知っている

「はぁ…俺も別れるなんて選択肢にないから
とりあえず分かったけど
多分俺は友達と思えないと思う」

「それは無理強いはしないけど…
でも少なくとも私は
今意識を変えないと貴方とはやっていけない」

「…分かったよ…それなら仕方ない…」

ついに健次郎は力なく折れるしかなかった

こうして二人は
レス問題の解決策として
『友達夫婦』という歪な夫婦関係を成立させた

それが正解なのか
それが幸せなのか
まだ誰にも分からない

この先本当に友達でいられるのか
奈々の性欲はどう対処するのか
健次郎が性欲回復したら?
そして何より二人は子供をどうするのか

まだまだ不透明な課題はたくさんある

何でも話せる親友
全てを受け止めてくれる親友

本当に付き合う前の二人に戻れるなら
皮肉なことだが
これらの課題も乗り越えていけるかもしれない

二人は
離婚はしない
でも
セックスもしない
スキンシップもしない

夫婦ではない
『シない二人』

それでも一緒にいることを選んだ
一緒にいるために夫婦ではなくなることを選んだ

そんなイレギュラーで歪んだ関係
それが彼らの選んだ決断

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