茶柱たたない

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朝井リョウ 「正欲」 が文庫化されたので読んでみた

朝井リョウの正欲、前々から気にはなっていたものの文庫化されてないこともあり、なかなか手を伸ばせずにいた。しかし、この度なんと文庫化されるという事で早速発売初日に読んでみた。 読み始めると案の定みるみる世界観に引き込まれていき、そのまま一日で読み終えてしまった。以下感想。 自分が周りと同じ大多数に組み込まれていることを確認するために、自身の正義に従って少数を排除する。自分が社会的に正しい事をしているという実感が欲しいから、想像可能な少数だけを多様性のなかに包摂してしまう。背景

    • 散歩は憂鬱を膨らませていく

      犬に吠えられた 人間としての醜悪さを嗅ぎ取られたのだろうか 街中をゆくカップルが羨ましい 溢れ出る嫉妬から逃れるようにホストクラブの宣伝カーに視線を注ぐ 脇汗がとめどなく流れている 幸福の贅肉が落ち、最低限の筋肉と脆くなった骨、泥の詰まった臓物だけで出来た肉体から一体何が流れ落ちているのだろうか。臓物を満たす泥の水分か?毛穴で濾過された泥の水分は汗として流れ、その残りカスは体内に蓄積される。肉体の許容量を超えた残りカスがニキビや吹き出物となり、私の輪郭からはみ出てい

      • 隣の芝生は青い、砂で覆われた僻地へ…

        いつかこの経験が糧になるだろう 足元から押し上げるように吹いていた風は、何度も聞いているうちに常套句へと姿を変え当初感じられた力も弱まっていた。 いま自分は慰められているんだろうな そんな言葉が耳から入る音に靡く。 この人は私の何を知っているのだろう そしてなぜ輪郭のぼやけた希望ばかりちらつかせてくるのだろう 2年…失った年月は、友人らの声で初めてその空白に肉を付ける。 大学進学、就職、専門学校…おのおのが見据えた未来へと櫂を漕ぎだす。 彼らの後ろに続いた轍が

        • 「君のクイズ」の感想をダラダラと…

          「問題」「小説 君のクイズのジャンルは何?」 スポーツ?ミステリー?バトルもの?人生ドラマ?あらゆる言葉が宙を舞う。ただどれも違う。正解がどんな形をしているのか?解を探し回るが、浮かび上がった言葉のどれもがそこに空いたピースに収まる気がしなかった。 生放送かつ優勝賞金1000万が縣けられたクイズ番組『Q-1グランプリ』の決勝戦。主人公 三島怜央は対戦相手である本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちに解答をし正解、そして優勝を果たすという不可解な事態を訝しむ。いったい彼は

        朝井リョウ 「正欲」 が文庫化されたので読んでみた