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ゴッホは白い雨を見逃さなかった!(訂正とお詫び)
過去記事の誤りについて
本年9月22日付で投稿した下記の記事で、ゴッホの素描に浮世絵と同じ線による雨の作品が多くあること、また著名な広重の模写を含む3枚の、線で表現した雨の彩色作品について紹介しました。
そのゴッホの彩色作品の中に、雨を黒い線ではなく、白い線で描いた雨の作品があり、強調文字を使って私は次のように断定しました。
なお、彩色版で気が付くのは、浮世絵では見られない「白」の線を使っていることです。このような「白線」での雨足の表現は浮世絵ではされていないので、ゴッホが独自に試そうとしたのでしょう。
(3)西洋絵画では描かれない雨の風景にチャレンジしている。素描および油彩があるが、成功しているかどうかは微妙である。
ところが、「浮世絵では見られない「白」の線」、「このような「白線」での雨足の表現は浮世絵ではされていない」、実はこの部分はまったくの間違いだったことが分かりました。
記事を投稿したあと、その箇所が言い過ぎたかもしれないとしばらく気になっていたので調べたところ、日本の浮世絵絵師こそ白い線による雨の表現を生み出したことが分かったのです。
お詫びと訂正
よく事前に確認せず断定してしまい大変申し訳なくお詫びいたします。
そのまま放置はできませんので、本記事で訂正し、元の記事にはこの記事を投稿した後、注を付けて対応したいと思います。
以下調べた結果を報告いたします。
まず、次のタイトルの記事が見つかりました。
ドンピシャのタイトルです。その他にも、太田記念美術館によるいくつもの雨に関する記事が見つかり、昨年6月の「江戸の天気」と題する美術展に関連して投稿されたようです。
白い線による雨の表現の説明は次のようにされています。
一方、白色で雨を表現することもありました。こちらは歌川国貞の「江戸八景 吉原ノ夜雨」。場所は吉原遊廓の妓楼。夜の時刻、外では雨が降っているようです。
https://otakinen-museum.note.jp/n/nb7b47a09bbe0
国貞の「江戸八景 吉原ノ夜雨」のフリー画像を探したのですが、みつかりませんでした。その絵をご覧になりたい方は、直接上に記した記事をお読みください。
もう一つの記事は、広重の「名所江戸百景 駒形堂吾嬬橋」についての太田記念美術館のツイートです。
雨をとらえた作品をご紹介。歌川広重「名所江戸百景 駒形堂吾嬬橋」。雨とホトトギスは、初夏の景を描く浮世絵で好まれた組み合わせです。対岸の明るい空や白い線による雨脚が、小雨であることを物語ります。※現在展示していません。 pic.twitter.com/YXNU6oOFUP
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) June 15, 2022
全体像を念のため示します。
ツイートではこの絵の天気は小雨で「白い線による雨脚」と紹介しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1666175562016-nxW5DEGLLG.jpg?width=800)
出典:wikimedia commons public domain
広重の雨の浮世絵は事前に丁寧に調べたのですが、この絵ではよく見ると一番上部の狭い部分が暗くなっており、そこに白い線で雨が描かれていたのです。図版では分かりにくく見逃していました。
白い線の部分が分かるように、上部の雨の部分を下に示します。
7本の白い斜線がはっきりと見えます。
![](https://assets.st-note.com/img/1666176238905-7bDKu7oJ1W.jpg?width=800)
今のところ、ネットの検索では、雨を白い線で表した例は、江戸期の浮世絵では上に述べた二つです。黒い線で雨を描くのは、浮世絵の絵師はほぼ誰もが描いているので、白い線で描いた絵師は他にいるかもしれません。
以上から、私のゴッホに関する記事は以下のように訂正いたします。
なお、彩色版で気が付くのは、白い線を使って雨を描いている絵があることです。このような「白線」での雨足の表現は、例は少ないですが浮世絵では国貞や広重の絵がありますので、ゴッホはそれらを見て試そうとしたのでしょう。
私の前の記事では、白い線で雨を描くことをゴッホが編み出したのではないかと推測しました。
しかし今回の調べではそうではなく、白い線による描写も日本の絵師が考え出したことがわかりました。日本の絵師、恐るべしです。
とはいえ、ゴッホも、あまた浮世絵がある中で、よくぞ広重の雨の絵を選び、線による雨の描写を模写しただけでなく、数少ない白線による描写の浮世絵をよくぞ見逃さなかったと、ニ重にほめたい気持ちです。
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