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<大阪レトロビル>をどう描いたか

大阪レトロビル086

なぜこの場所を選んだのか?

 街歩きスケッチの中で、近代建築は魅力的なスケッチ対象です。最初から有名な近代建築を狙って描くのではなく、街を歩いている時に偶然、無名の近代建築に出逢うと感激もひとしおで、つい描いてみたくなります。

 大阪市は、第2次大戦中に大規模な空襲に遭っているにもかかわらず、町の中心部に多くの近代建築が残っています。

 中之島や北浜などにある立派な近代建築も見ごたえがありますが、街中を歩き回る中で、ふと出会う無名のレトロビルにも心惹かれます。

 ここで描いたレトロビルは、市内を歩いているときに偶然出逢いました。元消防署で、取り壊されるところを、イタリアンレストランとして存続することになったと聞いています。小さなビルですが、かわいらしく、趣があるので描くことにしました。
(参考までに、実際のビルの写真を末尾に載せます。)

どこから描き始めたのか?

 このような立方体のビルの場合、私はビルの前面の屋上の横の線を最初に引きます。引いた線の長さで、ほかの輪郭線の長さが決まります。
 次に、ビルの右壁面の一番上の線を引きました。

遠近法を使ってどのように描いたらよいか

 なお、描いたビルの構図は、正面右側の隅が一番手前にある構図なので、消失点が二つある二点透視図法でビルを描くことになります。
(二点透視図法による建物の描き方についての別の記事を投稿する予定です。)

 まずは、自分の立ち位置の縦の線と、目線の高さに水平線を想定します。

 最初に引いた屋上の線は目線の水平線に対して左奥にある消失点に向かって左下がりの線になります。逆に、右壁面の屋上の線は、目線の右奥にある消失点に向かって右下がりの線になります。

 ですから、正面の2階の窓枠やベランダの横線、1階の看板や突っ張りオーニングテント、窓の枠の横の輪郭線も、すべて左奥の消失点に向かって線を引きます。

 一方、右側の壁面の窓枠の横の輪郭線、右側の壁面の横にあるブロック塀の横の輪郭線は、右奥の消失点に向かって引きます。

 以上の線を引くときには、想定した水平線(目線)に対してどれくらい傾斜しているかをよく観察し、決断したら思い切りよく線を引きます。

 なお、ビルの縦の輪郭線ですが、この絵では線遠近法の線とは異なる方向に描いています。末尾の写真を見ればお分かりのように、遠近法的には、ビルの縦の輪郭線は、高い空の一点に向かって、上に行くほど、狭まっていきます。

 なぜ、この絵では逆に広がるように描いたのか? 以下その理由を考えます。
 現場で描く場合、左を向いて左側の縦の輪郭を見て描くので、そのまま線を引くと自然に左側に倒れます。逆に、右側の縦の輪郭線は、右を向いて、右側の縦の輪郭を見て描くので、やはり右側に倒れます。その結果、ビルの上部が広がって見えるようになるのだと思います。

 ですから、上部で広がった縦の輪郭線は、現場で描いた作者の目がそのまま現れているとも言えます。

建物の装飾はどのように描いたらよいか

 近代建築のビルに装飾物はつきものです。このビルでは正面の壁面の最上部と2階と1階に装飾がなされています。

 まず装飾物の立体をよく観察します。立ち位置の左側にあることを意識して、厚みの状態、丸い装飾物の厚みのどのサイドが見えているかをよく確認して描きます。

 ほとんどが、目線の上部にあるので、出っ張っている装飾物や窓枠は、底の部分が見えています。

レンガをどのように描くか

 近代建築のビルでは壁面がレンガやタイル貼りである場合が多くあります。このビルでは、細かいタイルが一面貼られています。

 多数のレンガやタイルがある場合、必ずしもすべてのレンガやタイルを描く必要はありません。一部を描き残りはレンガやタイルの色に塗ることで、壁面全部がレンガやタイルであることを示すことが出来ます。

 今回は、細い線で全てのタイルを描くことにしました。ただ、それは、タイルを一つ一つ正確に数えて描いたということを意味しません。前面に細かいタイルが張られているという特徴を表せればよいので、実際の数は数えないで、適当に横線と縦の線を描き、多数のタイルが貼られていることが分かるようにしています。

 最後に、残りの電柱と樹木、建物手前の車や、日よけ傘、鉢植えの植物を描いて完成です。

<描いたビルの正面の写真>

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