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元法務部のCLM導入コンサルタントがChatGPT使ってみた(後編)

皆さんこんにちは、「すべての合意をフェアにする」MNTSQ(モンテスキュー)の佐藤でございます。

前回、ChatGPTを使って法文書について遊んでみるという記事をお届けしました。

専門的な用途には(弁護士法を無視しても)使えない、ということで前回はオチがつきましたが、では一般的な文章では?
私が書いているような採用広報文脈での社員ブログや入社エントリーを、ChatGPTを使って省力化することはできるのでしょうか。
やってみました。

※誤解のないように申し上げますと、今回の前後編は、あくまで佐藤が自分ですべてを執筆しています!!!


前提 使っての改めての注意点

1. 機密情報を入れるのはやめよう

前回書き漏れていましたが、ChatGPTは質問された内容、及び回答へのフィードバックを学習しています(FAQ6問目参照)。
そのため、学習されること、学習後のアウトプットとして公開されては困ることが含まれる情報は、絶対に質問しないようにしましょう。
実際、Amazonでは機密情報を書かないようお達しが出たらしいです

2. 鮮度の高い情報の調べものには向いていません

これもさんざん指摘されているし本家もFAQで書いていますが、ChatGPTは2021年までの学習データをクローズドな環境で学習しアルゴリズムを生成しています。

逆に言えば、インターネットに常時接続して情報をクローリングして、アップデートし続けているというわけではありません。

そのため、市場に関する情報を調べる、とか、21年まで存在しなかった/ほとんど公開されていなかった情報(22年にデビューしたスポーツ選手とか歌手とか)についてまとめようとしても正確な答えを持っていません。

特に苦手なのが学説や論文調査をしてその著者や出所のリンクをまとめる、というようなことで、アップデート前は平気な顔で研究者やリンクを捏造して答えてくるという事例が頻発したくらいです。

但し、枯れた情報についての調査は可能なので、「SWOT分析について知りたい」といったような、定義が固まっていて変遷することがあまりなさそうなものは適応します。

この最新情報の調査については、ごく最近にわかに注目を集めているのがPerplexity.aiという別のAIツールです。こちらはインターネット上の情報を収集しているようで、出典・論拠をきちんと実在のものから引っ張ってきます。

Perplexity.aiで弊社について聞いてみたスクショ

時間と紙幅の都合で触れられませんが、今度Perplexity.aiの検討記事もやってみたいですね

質問してみた

入社エントリーについて

さっそくストレートに聞いちゃいました。なるほど。

大きな要素の洗い出しの参考として使えそうですね。
入社エントリの王道構成は、
・自己紹介
・なぜ転職を決意したか
・どんな転職軸だったか
・その会社に軸がハマった理由
・入社した感想
・今後何をしていきたいか・興味持ってくれたらカジュ面しようぜ

なんてところかと思いますが、ChatGPTの出力結果と重なり合うところも多いです。

そもそも書くのが苦手で……いやその前に、内容を整理するところから苦手で……という人も中にはいると思うので、こうした構成のガイドをうまく使うのはアリなのかもしれません。


どう書くの

構成が決まったあと、入社しての感想の項目で、MNTSQについて「フラットで議論が活発」「心理的安全性がある」「これまでの会社とは違って、社員に任されている感じがある」といったことを書きたいとは思っているものの、具体的な表現がなかなか思いつかなくて、みたいな場合どうするか。

おっ、これはなかなか参考になりますね。
特に、「フラット」という言葉について何がフラットなのか(組織構造、と補足してくれています)とか、
「これまでの会社」(これまでの経歴で勤めてきた会社、というようにちゃんと解釈してくれています)とか、
「任されている」を拡張して「自分の業務に対する責任や所有意識を高めることができる」というところまで付加してくれていたりとか。

これを踏まえて、「いやフラットなのは組織構造というよりマインドセットだからその表現いじろう」とか、「これまでの経験、のくだりはよさそう。基本的にこれをベースにする」とかいった風に方向性を自分で決めていけます。

あくまでそれっぽくいい感じに見えるよう書いてくれているだけなので、最終的なニュアンスや表現の調整は自分が責任もって行わなければならないと思いますが、書きたいことの文例が出てくるだけで大いに気分が楽になる人はいるのではないでしょうか。

ちなみに、ChatGPTについて書きたいんだけど、とやってみる。

おお、なんかそれっぽいことが返ってきた。

というか、前回の構成(性質の説明、向いているタスクから始めて、できないこと・注意点に言及、最後に文章の質について評価、特徴に触れる)に似ていますね。

※誤解のないように申し上げますと、今回の前後編は、あくまで佐藤が自分で考えてすべてを執筆しています!!!

私も世の中にある既存の記事や文献をたくさん読んで学習してきているわけで、私も結局ChatGPTと似たようなアプローチで似たような学習用データにアクセスして似たようなアルゴリズムを獲得したということなのかもしれません


英文の知識を教えてもらった

そういえば前回トップ絵にStable Diffusionに英語で指示を出して絵を作って貼りましたが、そういうちょっとした一言を英語で書いたり、本文中に格言を英語で書いて格調を上げて見せたいな、みたいなことってたまにありますよね?

でもそういうのって周りに気の利いた英語表現に詳しい人がいなかったりとか、めっちゃ初歩的な文法間違いしていたら恥ずかしい、みたいなことも間々起こるんじゃないかと思います。
私としては、漫画『鋼の錬金術師』で主人公エドが決意を忘れないよう懐中時計の蓋の裏に「Don't forget 3.Oct.11」と刻んでいるというネタを思い出します。
連載時は「Don't  be forget 3.Oct.11」と書かれていて文法間違いを読者から指摘されたらしく、単行本だとbeの部分がスクリーントーンで消されていますが、よーく見るとうっすらbeの痕跡が……みたいな。

そういうことも踏まえて、
たまたまYouTubeで見た動画で、「日本人がよくやる間違い」というあるあるネタをやっていたのでそれを聞いてみました。

なんでか和文と英語の回答が混じってしまう

翻訳や文章校正は苦手だ、と自己申告している割には、きちんと教えてくれます。
聞いている質問は、be動詞の性質(be動詞の前に来る主語と、後に来る名詞をイコールで結ぶ。※「イコール」とする説明には異論もありますが)について感覚的にせよ理論的にせよ理解していればあまり間違えなさそうなものなので、人間相手にうっかり聞いたら、人によっては勉強不足となじられてしまうかもしれません。

ただ機械相手なら、回答者のテンションや機嫌、「聞き手は〇〇すべき」(調べてから聞いてこい、初歩的なことを聞いて時間を奪うな、何度も同じ話を聞くなetc…)といった信条に左右されずフラットに聞くことができるので、安心して質問と回答のラリーを続けることができます。

これは、文章や考えをまとめたりブラッシュアップするときに、時間と根性さえあれば繰り返し試行して一人でどんどんレベルを上げていくことができるかもしれませんね。

※しつこいようですが今回の前後編はあくまで佐藤が自分で考えてすべてを執筆しています!!!

テックブログを再現できるのか

私自身はテックブログを書く技術的素養がないので、既存のMNTSQテックブログみたいなことをどこまで書くことができるのか試してみました。

前提条件

一応該当するトピックについて知見があり、実例やコード等の話はネタや構成が決まればある程度書ける自信はある、というエンジニアが書き手候補だったとします。

参考事例

バックエンドエンジニアの西村が書いた、『Ruby on Railsをかんたんスピードアップ』

総論

そもテックブログとは何を書くか

ふむふむ、簡潔に、実例紹介やコードサンプルを書くとよさそう、ということですね。

Rubyについてのネタ出し

テーマがいくつか出てきましたね。

じゃあ一歩進めてRuby on Railsを早くしたいっていうニーズがあってそれを解決した、とかテーマにしたらどうだろう

コードは出てきませんでしたが、クエリ最適化、キャッシュ使用、インデックスの追加(整理)……おお、西村の記事で書かれているポイントですね

これを参考にして、サービスの性質や開発環境等に応じた順位付けをするなどしてテーマ決定をすることはできそうです。

ただ、単に技術を羅列してこうするといいよ、と勧めるだけではなくて、
最終的に「ときには使わない」選択肢も提示するということが西村の記事のオチでありキモですが、これは実務経験に根差した付加価値ともいえる部分で、機械のサンプルではなかなか書けない部分かもしれません。(法務でもこういう「敢えて書かない」ということはあり、共感する部分があります)

結局大事なことって

以上のように、ChatGPTを使って入社エントリーなどの採用広報記事を書く方法の検討記事を書いてみました。
私のスキル的な問題で、ChatGPTとGAS(GoogleAppsScript)とスプレッドシートを組み合わせて無限に記事ネタを生成!みたいなことはできず、カジュアルな使い方をさらった程度になっている点はご了承ください。

執筆を進めていて、「とはいえ『自分が何を書きたいか』だけはほかの誰でもない自分自身が考えて決断しなければならないよなぁ」ということはぼんやり考えていたものの、一方でこんなニュースも飛び込んできました。

現在、スタンフォード大学の学生の17%が、ChatGPTを使ってレポートを作成した経験があると答えているらしく、その多くはブレストや構成に利用しているなか、5%は出力をそのままを提出しているんだそうです。

また、ScienceではChatGPTを著者とするのがNGになったりしているとか。

いやおうなしにAIがすぐそこにある生活に巻き込まれていく、そしてテックの感度の高い人たちがそれにどっぷりつかって当たり前のものとして価値観を形成していく、我々もそれに向き合う社会になっていくという時代はもうすぐそこまで来ているんですね。

こんな時代では、先達が言うように、これからはAIを使いこなす人とそうでない人の差が広がる、ということは確かにあるかもしれません。

そういう意味ですと、AIが出力した情報を見極める目利き力・審美眼や、出力から離れてテーマに関する一次情報を咀嚼し読み取る力や、書かないこと・書かれていないことの出し入れをする力が、使いこなし力に直結しそうですよね(もちろんGASで自由自在に~~という実践的スキルも大事ですが)。

とはいえ、お手軽こたつ記事を連発・大量生産してGoogleの検索結果が汚染されることは本意ではありませんので、あくまで自分たちの発揮する付加価値を記事の中核に据えたうえで、枝葉の工数を省略して執筆に集中する手助けとして使いこなしていきたいものです。

いかがでしたでしょうか。
AI技術者でもないけど新しもの好きのメンバーが記事を書いてみるのも歓迎するオープンな風土のMNTSQにご興味持たれた方は、ぜひカジュアル面談のご連絡を!
お待ちしております。


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