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地方都市の内科医。がん医療(特に抗がん剤治療)を専門にしています。このnoteは基本的…

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地方都市の内科医。がん医療(特に抗がん剤治療)を専門にしています。このnoteは基本的に自主勉強の備忘録として作成しています。 医療に関する情報は世の中に溢れている反面、正しい知識を得ることも難しくなりました。専門家の立場で患者さんに役立つ情報も提供していけたら良いと思います。

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自己紹介 (2024/8/17更新)

はじめまして。地方都市でがん治療を専門にしている腫瘍内科医ruteth (るーてす)と申します。本noteは自身の勉強した知識のメモ目的に始めました。 医者になって15年以上経ちます。ずっと勉強勉強でやってきましたが、長く仕事に従事する中でがん医療に関する色々な問題なども見えてくるようになりました。 自分が勉強したものを載せていくことを通じて志を同じくする方と繋がったり、困っている方の助けになったりすれば良いと思っています。 主に医療者向けの内容になりますので、専門職以

    • 進行食道がんに対する術前DCF療法の有用性 (JCOG1109, NExT試験)

      Lancet 2024; 404: 55–66 日本における食道がん治療は、海外との組織型の違いから自前で治療開発を進めなければならない点が大変なところ。また日本の食道外科医のレベルも高いので、手術一つとっても海外のエビデンスをそのまま持ち込めない難しさもある。それゆえ結果的に他のがん種と比べ治療開発が遅れ気味になっている感は否めない。 その中でも今回日本から発信された報告は非常に示唆に富んだ内容であり、今後の本邦での治療開発の指針ともなる結果であった。最近は喫煙者の減少

      • 遺伝子検査に基づく原発不明がん治療の最適化(Fudan CUP-001試験とCUPISCO試験)

        Lancet Oncol 2024;25: 1092–102 Lancet 2024; 404: 527–39 原発不明がん (cancer unknown primary: CUP)の治療開発はなかなか進んでいない。本邦では数年前に二次治療のNivolumabが承認されたが、それ以降新しい治療は登場していない。 個人的には、CUP治療戦略はやはりどこまで原発巣に迫れるかではないかと考えている。しかし原発不明がんは臨床試験ごとのheterogenityに幅があり結果が安定

        • がんと自由診療:丸山ワクチン

          ※ 本記事は有料記事ですが、期間限定無料公開中です。 ※ がん自由診療の概略と私の考え方はこちらにまとめています。 ※ 最終更新日 2024/8/17 (ver 1.0) がんと自由診療、第二回。今回は丸山ワクチンについてです。 私はこれまで何人かの患者さんから丸山ワクチンを試したいと要望を受けたことがあります。最初は患者さんの励みになればと協力していましたが、配布元の日本医大の治験状況に疑問を感じてからは対応をやめました。 現在は書類作成や投与を引き受けてくれるかかりつけ

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        自己紹介 (2024/8/17更新)

        • 進行食道がんに対する術前DCF療法の有用性 (JCOG1109, NExT試験)

        • 遺伝子検査に基づく原発不明がん治療の最適化(Fudan CUP-001試験とCUPISCO試験)

        • がんと自由診療:丸山ワクチン

          HER2変異固形がんに対するエンハーツ (DESTINY-PanTumor01試験)

          Lancet Oncol.2024;25:707-719 DESTINY-Lung01試験 (単群P2試験)においてトラスツズマブ・デルクステカン (エンハーツ: 以下 T-Dxd)は前治療歴のあるNSCLCに対して、HER2遺伝子変異コホートにおいてORR 55%, PFS 8.2ヵ月、HER2過剰発現コホートにおいてもORR 約30%, PFS 約6ヵ月の結果を出した。 HER2遺伝子変異NSCLCに対してはDESTINY-Lung02で152症例への追加試験が行われ

          HER2変異固形がんに対するエンハーツ (DESTINY-PanTumor01試験)

          大腸がん一次治療におけるFOLFOXIRI+Atezo (ATEZOTRIBE試験)の4年アップデート解析

          J Clin Oncol. 2024 :JCO2302728. 大腸癌全部乗せ試験の追加解析が来ていたのでサラッと内容確認。FOLFOXIRIが出た当時はクレイジーだと言われていたのが、今となっては日常診療の選択肢として馴染んでいることに時代の変遷を感じる。 ATEZOTRIBE試験はTRIBEレジメンへのAtezolizumabの上乗せ効果について探索したランダム化Phase 2試験。今回post hoc解析の結果も追加されている。 対象患者はPS0-2で70歳以下、あ

          大腸がん一次治療におけるFOLFOXIRI+Atezo (ATEZOTRIBE試験)の4年アップデート解析

          米国での終末期における免疫チェックポイント阻害薬の使用状況

          JAMA Oncol. 2024;10:342-351. 免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬は、従来の細胞障害性抗がん剤より副作用が比較的軽いことが多いため、私も高齢者の治療選択肢として優先的に挙げることがある。例えばNSCLCのNivo+Ipiや胃がんのNivoなどは、従来の化学療法はちょっと難しいが何か少しでも治療を、という患者・家族の希望に応えられるポテンシャルを秘めていると個人的には思う。 しかし標準治療がまともに入らなそうな対象に治療を行うことが本当に患者の

          米国での終末期における免疫チェックポイント阻害薬の使用状況

          がんと自由診療:高濃度ビタミンC点滴療法について

          ※ 本記事は有料記事です。 ※ がん自由診療の概略と私の考え方はこちらにまとめています。 ※ 最終更新日 2024/7/10 (ver 1.0) 「高濃度ビタミンC点滴療法」とインターネットで検索すると、本治療を行っている日本全国多数のクリニックがヒットします。しかし各々のHPを見ても効果の根拠がはっきりと記載されていない、あるいは記載されていても効果があることに偏った情報しか書かれていないことが多く、患者さんが客観的な情報を得られないことが問題であると私は考えています。自

          ¥1,980

          がんと自由診療:高濃度ビタミンC点滴療法について

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          七夕の願いごと

          現在当note初の有料記事を鋭意製作中です。記事を編集しようとnoteを訪れたら、七夕の願い事というハッシュタグ祭りが開催されていました。 Chatgptで見出し画像に使う七夕の画像生成をお願いしたところ、何度手直しをさせてもお祭りのような画像ばかりを生成してきます。例えばこんな。 建物や提灯は要らない、笹の葉に揺れる短冊だけ書いてくれと何度言っても、画像から提灯と中国風の建物は消えませんでした。指示が悪いのかChatgptのこだわりなのか。結局、最もイメージに近かった画

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          化学療法による脱毛に対する頭皮冷却

          J Clin Oncol. 2024, doi: 10.1200/JCO.23.02374. Online ahead of print. 化学療法に伴う脱毛は生命には直結しないものの、患者のQOLやボディイメージを大きく損なう。先進的な病院などでは頭皮冷却を導入している病院もあり、自分が以前勤務していた病院でも積極的な看護師主導で行われていた。しかし機械や専用帽子の準備、そして何よりコストをどう回収するかという点で苦労していたようであった。 化学療法誘発性の末梢神経障害予

          化学療法による脱毛に対する頭皮冷却

          切除可能NSCLCに対してはNACと手術先行、どちらが良いか(論説)

          J Thorac Oncol.2024;19:858-861. J Thorac Oncol.2024;19:862-865. NSCLC術前治療の潮流が来ているが、全ての患者に対しNACを行うべきと考える医師は少ないだろう。講演会などを視聴すると、比較的早期(N0など)は手術先行で、N2など進行期にはNACを行うという方針が散見される。 今回上記論文にNAC推進派、慎重派各々からの論説が掲載されていたので参考のために読んでみた。 J Thorac Oncol.2024;

          切除可能NSCLCに対してはNACと手術先行、どちらが良いか(論説)

          切除可能肺がんにおけるNivolumab周術期治療(CheckMate-77T)

          N Engl J Med.2024 ;390:1756-1769. ASCO2024では色々な発表が続き勉強することが盛り沢山ですが、ここでは淡々と論文紹介を勧めていきます。  現在肺がんの周術期治療は大きく変化しており、術後治療ではAtezo (IMpower 010), Pembro (KN-091), Durva (BR31), Nivo (ANVIL), 術前ではNivo (CM-816)、周術期(術前術後)においてはDurva (AEGEAN)、Pembro (

          切除可能肺がんにおけるNivolumab周術期治療(CheckMate-77T)

          がん患者と自由診療③

          今回がこのタイトルの最終回です。最後はどうしても自由診療を受けたい方へのメッセージです。繰り返しになりますが、自由診療を選ぶことは個人の自由です。しかしお金儲けの治療に手を出す人が減らないと業者も減らず、悪循環は断ち切れません。理性的になって善良な医療者の言葉に耳を傾ける勇気が必要です。 自由診療を受けたい場合はどう考えるべきか 患者さんが自由診療を考慮するパターンは、私の経験から3つです。 ① 標準治療以外でもっと良い治療を受けたい ② 標準治療に併用して、効果を高める

          がん患者と自由診療③

          がん患者と自由診療②

           前回はがん自由診療についての私の考えについて述べました。今回は、がん患者さんが自由診療とどう向き合うべきかについて書きたいと思います。 がん患者さんは自由診療とどう向き合うべきか 患者さんが自由診療に目を向けてしまう理由の一つとして、逆に現在の医療への不信感がベースにあるような気がしています。通常の医療への信頼を取り戻すことが、自由診療に手を出したくなる気持ちを少しでも軽減させることに繋がるのかも知れないと考えています。  また自由診療や代替医療を勧める方の中には患者さ

          がん患者と自由診療②

          がん患者と自由診療①

           最近X (旧 Twitter)で、がん自由診療の話題が取り上げられていました。 がん自由診療については賛否ありますが、私は否定派です。自分の診る患者さんには、出来る限り自由診療に関わって欲しくないと考えています。当noteの読者は基本的には医療関係者の方が多いと思いますが、今回はがん患者さん向けに記事を作成しました。  このセクションでの自由診療とは、科学的根拠に乏しく、主に営利を目的とする保険外治療を指します。自由診療は法律で禁止されてはおらず、アクセスは患者の自由意

          がん患者と自由診療①

          エベロリムス関連口腔粘膜炎

          エベロリムス口内炎に対するデキサメタゾン含嗽 (SWISH試験) Lancet Oncol.2017 ;18:654-662. エベロリムス口内炎に対する口腔ケア介入(Oral Care-BC試験) Oncologist.2020;25:e223-e230. 先日紹介したカピバセルチブの論文で、口腔粘膜炎に対するデキサメタゾン含嗽液のことが書かれていたので2つの関連論文を確認。mTOR阻害薬による口腔粘膜炎は日本人を含むアジア人で出やすい有害事象として知られており、安定した

          エベロリムス関連口腔粘膜炎