ruteth

地方都市の内科医。がん医療(特に抗がん剤治療)を専門にしています。このnoteは基本的…

ruteth

地方都市の内科医。がん医療(特に抗がん剤治療)を専門にしています。このnoteは基本的に自主勉強の備忘録として作成しています。 医療に関する情報は世の中に溢れている反面、正しい知識を得ることも難しくなりました。専門家の立場で患者さんに役立つ情報も提供していけたら良いと思います。

最近の記事

  • 固定された記事

自己紹介 (2024/7/21更新)

はじめまして。地方都市でがん治療を専門にしている腫瘍内科医ruteth (るーてす)と申します。本noteは自身の勉強した知識のメモ目的に始めました。 医者になって15年以上経ちます。ずっと勉強勉強でやってきましたが、長く仕事に従事する中でがん医療に関する色々な問題なども見えてくるようになりました。 自分が勉強したものを載せていくことを通じて志を同じくする方と繋がったり、困っている方の助けになったりすれば良いと思っています。 主に医療者向けの内容になりますので、専門職以

    • 米国での終末期における免疫チェックポイント阻害薬の使用状況

      JAMA Oncol. 2024;10:342-351. 免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬は、従来の細胞障害性抗がん剤より副作用が比較的軽いことが多いため、私も高齢者の治療選択肢として優先的に挙げることがある。例えばNSCLCのNivo+Ipiや胃がんのNivoなどは、従来の化学療法はちょっと難しいが何か少しでも治療を、という患者・家族の希望に応えられるポテンシャルを秘めていると個人的には思う。 しかし標準治療がまともに入らなそうな対象に治療を行うことが本当に患者の

      • がんと自由診療:高濃度ビタミンC点滴療法について

        ※ 本記事は有料記事です。 ※ がん自由診療の概略と私の考え方はこちらにまとめています。 ※ 最終更新日 2024/7/10 (ver 1.0) 「高濃度ビタミンC点滴療法」とインターネットで検索すると、本治療を行っている日本全国多数のクリニックがヒットします。しかし各々のHPを見ても効果の根拠がはっきりと記載されていない、あるいは記載されていても効果があることに偏った情報しか書かれていないことが多く、患者さんが客観的な情報を得られないことが問題であると私は考えています。自

        ¥1,980
        • 七夕の願いごと

          現在当note初の有料記事を鋭意製作中です。記事を編集しようとnoteを訪れたら、七夕の願い事というハッシュタグ祭りが開催されていました。 Chatgptで見出し画像に使う七夕の画像生成をお願いしたところ、何度手直しをさせてもお祭りのような画像ばかりを生成してきます。例えばこんな。 建物や提灯は要らない、笹の葉に揺れる短冊だけ書いてくれと何度言っても、画像から提灯と中国風の建物は消えませんでした。指示が悪いのかChatgptのこだわりなのか。結局、最もイメージに近かった画

        • 固定された記事

        自己紹介 (2024/7/21更新)

          化学療法による脱毛に対する頭皮冷却

          J Clin Oncol. 2024, doi: 10.1200/JCO.23.02374. Online ahead of print. 化学療法に伴う脱毛は生命には直結しないものの、患者のQOLやボディイメージを大きく損なう。先進的な病院などでは頭皮冷却を導入している病院もあり、自分が以前勤務していた病院でも積極的な看護師主導で行われていた。しかし機械や専用帽子の準備、そして何よりコストをどう回収するかという点で苦労していたようであった。 化学療法誘発性の末梢神経障害予

          化学療法による脱毛に対する頭皮冷却

          切除可能NSCLCに対してはNACと手術先行、どちらが良いか(論説)

          J Thorac Oncol.2024;19:858-861. J Thorac Oncol.2024;19:862-865. NSCLC術前治療の潮流が来ているが、全ての患者に対しNACを行うべきと考える医師は少ないだろう。講演会などを視聴すると、比較的早期(N0など)は手術先行で、N2など進行期にはNACを行うという方針が散見される。 今回上記論文にNAC推進派、慎重派各々からの論説が掲載されていたので参考のために読んでみた。 J Thorac Oncol.2024;

          切除可能NSCLCに対してはNACと手術先行、どちらが良いか(論説)

          切除可能肺がんにおけるNivolumab周術期治療(CheckMate-77T)

          N Engl J Med.2024 ;390:1756-1769. ASCO2024では色々な発表が続き勉強することが盛り沢山ですが、ここでは淡々と論文紹介を勧めていきます。  現在肺がんの周術期治療は大きく変化しており、術後治療ではAtezo (IMpower 010), Pembro (KN-091), Durva (BR31), Nivo (ANVIL), 術前ではNivo (CM-816)、周術期(術前術後)においてはDurva (AEGEAN)、Pembro (

          切除可能肺がんにおけるNivolumab周術期治療(CheckMate-77T)

          がん患者と自由診療③

          今回がこのタイトルの最終回です。最後はどうしても自由診療を受けたい方へのメッセージです。繰り返しになりますが、自由診療を選ぶことは個人の自由です。しかしお金儲けの治療に手を出す人が減らないと業者も減らず、悪循環は断ち切れません。理性的になって善良な医療者の言葉に耳を傾ける勇気が必要です。 自由診療を受けたい場合はどう考えるべきか 患者さんが自由診療を考慮するパターンは、私の経験から3つです。 ① 標準治療以外でもっと良い治療を受けたい ② 標準治療に併用して、効果を高める

          がん患者と自由診療③

          がん患者と自由診療②

           前回はがん自由診療についての私の考えについて述べました。今回は、がん患者さんが自由診療とどう向き合うべきかについて書きたいと思います。 がん患者さんは自由診療とどう向き合うべきか 患者さんが自由診療に目を向けてしまう理由の一つとして、逆に現在の医療への不信感がベースにあるような気がしています。通常の医療への信頼を取り戻すことが、自由診療に手を出したくなる気持ちを少しでも軽減させることに繋がるのかも知れないと考えています。  また自由診療や代替医療を勧める方の中には患者さ

          がん患者と自由診療②

          がん患者と自由診療①

           最近X (旧 Twitter)で、がん自由診療の話題が取り上げられていました。 がん自由診療については賛否ありますが、私は否定派です。自分の診る患者さんには、出来る限り自由診療に関わって欲しくないと考えています。当noteの読者は基本的には医療関係者の方が多いと思いますが、今回はがん患者さん向けに記事を作成しました。  このセクションでの自由診療とは、科学的根拠に乏しく、主に営利を目的とする保険外治療を指します。自由診療は法律で禁止されてはおらず、アクセスは患者の自由意

          がん患者と自由診療①

          エベロリムス関連口腔粘膜炎

          エベロリムス口内炎に対するデキサメタゾン含嗽 (SWISH試験) Lancet Oncol.2017 ;18:654-662. エベロリムス口内炎に対する口腔ケア介入(Oral Care-BC試験) Oncologist.2020;25:e223-e230. 先日紹介したカピバセルチブの論文で、口腔粘膜炎に対するデキサメタゾン含嗽液のことが書かれていたので2つの関連論文を確認。mTOR阻害薬による口腔粘膜炎は日本人を含むアジア人で出やすい有害事象として知られており、安定した

          エベロリムス関連口腔粘膜炎

          ホルモン受容体陽性乳がんに対するカピバセルチブ(CAPItello-291試験)

          N Engl J Med2023;388:2058-2070 AKT阻害薬のカピバセルチブ (商品名トルカプ)が今度当院でも採用になるらしいので予習。ホルモン受容体陽性(HR+)乳がんのCDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬(AI)に不応となった対象に対する二次治療以降の選択肢として登場したとのこと。 カピバセルチブは経口AKT阻害薬。AKTシグナル伝達経路の過剰活性化はHR+乳がんの約40%に認められ、この活性化はPIK3CAあるいはAKTの活性型変異、もしくは制御因子で

          ホルモン受容体陽性乳がんに対するカピバセルチブ(CAPItello-291試験)

          腹膜播種を伴う胃がんにおけるClaudin-18, HER2, PD-L1の発現ステータス

          Gastric Cancer. 2024 May 9. doi: 10.1007/s10120-024-01505-6. 新しく胃がんの一次治療に加わったゾルベツキシマブ(商品名: ビロイ)における臨床的疑問といえば、他の一次治療レジメンとの使いわけであろう。特にClaudin (CLDN)-18陽性かつPD-L1陽性の腫瘍に対して、どのレジメンを使うのかが悩ましい。 今回の文献はその前段階として各biomarkerの発現状況を病理学的に検索した研究。腹膜播種検体と原発巣

          腹膜播種を伴う胃がんにおけるClaudin-18, HER2, PD-L1の発現ステータス

          進行卵巣癌に対するddTC療法の有効サブグループ探索解析

          Int J Cancer. 2024 May 7. doi: 10.1002/ijc.34996. Online ahead of print. たまに胃がんの診断で卵巣がんの患者が送られてくることがある。多くは大量腹水がきっかけで見つかることが多い。問題はオキサリプラチンが効くので、胃がんとして治療され下手にCR・PRになってしまうとHRD, BRCAの検索やDebulking surgeryなどが行われず適切な治療介入が出来なくなってしまうことだ。そして再増悪後も胃がん

          進行卵巣癌に対するddTC療法の有効サブグループ探索解析

          がん関連孤発性遠位型DVT治療におけるエドキサバンの投与期間は12ヵ月か3か月か (ONCO DVT study)

          Circulation. 2023;148:1665–1676 前回がんVTEのASCOガイドラインをまとめたが、VTE (venous thromboembolism: 静脈血栓塞栓症)とはDVT (deep vein thrombosis: 深部静脈血栓症)とPE (pulmonary thromboembolism: 肺血栓塞栓症)を併せた概念とされている。特にがん領域でのVTEはがん関連血栓症(cancer associated thrombosis; CAT)と表

          がん関連孤発性遠位型DVT治療におけるエドキサバンの投与期間は12ヵ月か3か月か (ONCO DVT study)

          がん患者におけるVTEの予防と治療:ASCOガイドラインアップデート2023

          J Clin Oncol. 2023;41:3063-3071. がん治療をやっているとVTE(venous thromboembolism: 静脈血栓塞栓症)は良く遭遇するイベントである。特に進行がんの患者がある日突然PEやトルーソー症候群などを発症し、治療半ばで亡くなる場面を見てきた。最初からリスクが分かっていれば予防も検討しうるのだが予測が難しい。かといって下手に抗凝固療法を行えば今度は出血のリスクに悩まされ、治療に支障を来したりする。無症状で発見されたVTEはDOA

          がん患者におけるVTEの予防と治療:ASCOガイドラインアップデート2023