ruteth

地方都市の内科医。がん医療(特に抗がん剤治療)を専門にしていますが、診断学も好きで一般…

ruteth

地方都市の内科医。がん医療(特に抗がん剤治療)を専門にしていますが、診断学も好きで一般内科もやります。自主勉強の備忘録として作成しています。過去の記事一覧こちら→http://ruteth.cocolog-nifty.com/medical_bar/

最近の記事

がん関連孤発性遠位型DVT治療におけるエドキサバンの投与期間は12ヵ月か3か月か (ONCO DVT study)

Circulation. 2023;148:1665–1676 前回がんVTEのASCOガイドラインをまとめたが、VTE (venous thromboembolism: 静脈血栓塞栓症)とはDVT (deep vein thrombosis: 深部静脈血栓症)とPE (pulmonary thromboembolism: 肺血栓塞栓症)を併せた概念とされている。特にがん領域でのVTEはがん関連血栓症(cancer associated thrombosis; CAT)と表

    • がん患者におけるVTEの予防と治療:ASCOガイドラインアップデート2023

      J Clin Oncol. 2023;41:3063-3071. がん治療をやっているとVTE(venous thromboembolism: 静脈血栓塞栓症)は良く遭遇するイベントである。特に進行がんの患者がある日突然PEやトルーソー症候群などを発症し、治療半ばで亡くなる場面を見てきた。最初からリスクが分かっていれば予防も検討しうるのだが予測が難しい。かといって下手に抗凝固療法を行えば今度は出血のリスクに悩まされ、治療に支障を来したりする。無症状で発見されたVTEはDOA

      • 化学療法誘発性末梢神経障害に対するミロガバリンの有効性(MiroCIP study)

        BMC Cancer. 2023;23:1098. 化学療法誘発性末梢神経障害 (Chemotherapy-induced peripheral neuropathy: CIPN)は実臨床で問題となる事が多い。大腸がんのオキサリプラチンだけでなく、肺がん・乳がんの(Nab-)PTXなど予後が長くなってきたメジャーながん種にCIPNを伴う薬剤が増えてきたことが、一つの原因であろう。 過去にはデュロキセチン (サインバルタ)の有効性が報告され、2021年にJAMAで報告されたガ

        • 切除不能転移性大腸がんの原発巣切除は生存期間に寄与しない

          J Clin Oncol. 2024 Feb 27:JCO2301540. Online ahead of print. 転移性大腸がんにおける無症候性の原発巣切除については、本邦ではJCOG 1007(iPACS試験)が行われ、早期無効勧告から試験中止となりその有用性は否定的となった。しかし思った以上に症例集積が振るわなかったこともあり、厳密には検証的な結論までは至れなかった。今回そのiPACS試験のdiscussionにも記載があったSYNCHRONOUS試験, 及び

        がん関連孤発性遠位型DVT治療におけるエドキサバンの投与期間は12ヵ月か3か月か (ONCO DVT study)

        • がん患者におけるVTEの予防と治療:ASCOガイドラインアップデート2023

        • 化学療法誘発性末梢神経障害に対するミロガバリンの有効性(MiroCIP study)

        • 切除不能転移性大腸がんの原発巣切除は生存期間に寄与しない

          直腸がんTNT試験のまとめと雑感 in 2024.4

          Ann Oncol. 2016;27:834-42.       Polish II試験 Ann Oncol. 2019;30:1298-1303.       (長期報告) Lancet Oncol.2021;22:29-42.        RAPIDO試験 Ann Surg. 2023;278:e766-e772.       (長期報告) J Clin Oncol.2022;40:1681-1692.     STELLAR試験 Lancet Oncol. 20

          直腸がんTNT試験のまとめと雑感 in 2024.4

          カペシタビンの手足症候群予防にジクロフェナク軟膏が有効(D-TORCH試験)

          J Clin Oncol. 2024 Feb 27:JCO2301730. doi: 10.1200/JCO.23.01730. Online ahead of print. カペシタビンのHFSにCOX阻害が有効らしい。普通に知らなかった……。 既報ではセレコキシブを予防に使っているようだが、内服だと色々副作用もあるので軟膏なら良いんじゃないかというのが本試験。インドの単施設でのPhase 3という、いつもの力押し試験で信憑性に不安はあるが、軟膏ならそれほど副作用もない

          カペシタビンの手足症候群予防にジクロフェナク軟膏が有効(D-TORCH試験)

          非小細胞肺がん一次治療としてのオシメルチニブ+化学療法併用 (FLAURA 2試験)

          N Engl J Med 2023;389:1935-48. EGFR TKIに化学療法を併用するレジメンは、日本で行われたNEJ-009試験(gefitinib+CDDP+PEM vs gefitinib)では、最終的なOS解析では有意差は出なかったものの併用療法が良い傾向。インドの単施設で行われたP3ではPFS, OSともに有意に良好であったと報告されている。 EGFR TKI単独で治療を行った患者の内1/3くらいは二次治療に行けない現状があり、肺がんを専門でやってい

          非小細胞肺がん一次治療としてのオシメルチニブ+化学療法併用 (FLAURA 2試験)

          大腸癌肝転移に対する局所治療の方針決定に、造影CTに加えて造影MRIが必要か? (CAMINO試験)

          Lancet Oncol 2024; 25: 137–46 一般臨床において大腸がんの局所治療の方針決定には、通常造影CTに加えて造影MRIがルーチンで撮影されている。これは単純にMRIがCTと比較しコントラスト分解能に優れていることから、CTでは検出が難しい小病変でも検出出来るためと理解している。この論文のabstractに「大腸がん肝転移局所治療の術前に造影MRIをルーチンに撮影すべきかは、ガイドラインで結論は出ていない」と記載があり、日本の大腸がん診療ガイドライン20

          大腸癌肝転移に対する局所治療の方針決定に、造影CTに加えて造影MRIが必要か? (CAMINO試験)

          免疫チェックポイント阻害薬は早朝に投与した方が効果が高い?

          Eur J Cancer. 2024:199:113571. 抗がん剤の投与タイミングによってその効果が変わるかもしれない、といういわゆるクロノセラピー研究は昔からなされており、大学院生時代に5-FUの投与を深夜に行うのが良いという論文を読んだことがある。どの研究もかなり効果に差があることが示唆されているため是非臨床でやってみたいのだが、いかんせん病院の営業時間外に抗がん剤投与をやることが現実的に困難であり悩ましい。本研究でも他の結果同様、早朝投与で良い結果が出ている。投与

          免疫チェックポイント阻害薬は早朝に投与した方が効果が高い?

          無症状の高リスク骨転移に対する予防的放射線照射, ランダム化第2相試験

          J Clin Oncol .2024;42:38-46. 無症候性の骨転移に対し予防的にRTをしておいた方が良いかどうかという疑問はたまに遭遇する。骨関連イベント(SRE)が起きてしまうとガクッとADLが低下し、メインとなる化学療法の継続にも支障をきたす。最近はゾメタやランマークなどのBone Modifing Agents (BMA)の登場によりSREの発症も抑えられていること、また痛みが出ても早期に照射を行えば重篤なADL低下に繋がらず乗り越えられることもあり、果たして

          無症状の高リスク骨転移に対する予防的放射線照射, ランダム化第2相試験

          メラノーマに対する術後Pembro ± 個別化抗原治療mRNA-4157, ランダム化P2b試験KEYNOTE-942

          Published Online January 18, 2024 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)02268-7 メラノーマの術後Pembroに個別化抗原治療を上乗せすることで、再発の抑制を試みた試験。患者から採取した腫瘍と血液検体から、がん変異とHLAのタイピングを行い患者個々のデータを生成する。mRNA-4157をvectorとして、その上に生成したneoantigen配列を34種類まで載せてendogenousに発現させる

          メラノーマに対する術後Pembro ± 個別化抗原治療mRNA-4157, ランダム化P2b試験KEYNOTE-942

          NSCLCに対するAPPB(Atezo+CBDCA+PEM+Bev)療法(APPLE, WJOG11218L試験)

          JAMA Oncol. Published online December 21, 2023. doi:10.1001/jamaoncol.2023.5258 NSCLCに対するICI+Bev含有レジメンとしてIMpower150レジメン: ABCP(Atezo+CBDCA+PTX+Bev)やTASUKI-52レジメン: Nivo+CBDCA+PTX+Bevの有効性が報告されている。IMpower150試験はACP vs ABCP vs BCPの3群試験だが統計学的にはAt

          NSCLCに対するAPPB(Atezo+CBDCA+PEM+Bev)療法(APPLE, WJOG11218L試験)

          高度催吐性リスク抗がん剤投与における低用量オランザピンの標準用量に対する非劣性の検証 第3相非盲検化試験

          Lancet Oncol 2024, Published Online January 12, 2024 https://doi.org/10.1016/S1470-2045(23)00628-9 オランザピンは最近改訂された制吐剤適正使用ガイドライン第3版(2023年10月発行)で、高度催吐性リスク抗がん剤(Highly Emetogenic Chemotherapy; HEC) のアルゴリズムに標準的な治療として掲載された。 海外の標準量は10mgであったが、傾眠・ふら

          高度催吐性リスク抗がん剤投与における低用量オランザピンの標準用量に対する非劣性の検証 第3相非盲検化試験

          胃・食道胃接合部がんの術前atezolizumab+化学療法のP2試験 (PANDA試験)

          Nat Med(2024). https://doi.org/10.1038/s41591-023-02758-x 先日のJCOG 試験に対して、海外では胃がんNAC atezo+chemoのP2試験が発表されている。試験結果も非常に良好。本試験やNSCLCのNAC試験しかり、いつも疑問に思うのはNACでのICIは何故こんなに効くのかということ。Stage IVでは同じ治療を行ったとしてもCRに至る症例など限られるほどしかいないのに、NACだと数十%の割合でpCRが出る。腫

          胃・食道胃接合部がんの術前atezolizumab+化学療法のP2試験 (PANDA試験)

          高度リンパ節転移を伴う胃がんにおける術前DOS療法の短期成績(JCOG1704)

          Gastric Cancer. 2024 Jan 5. Epub ahead of print. 日本における胃がんの術前療法はこれまで色々な治療が模索されてきたが、あまりぱっとしない成績であった。しかしそれは日本の胃がん手術の成績がそもそも海外と比較し良いため、術前治療が入らなくても手術と術後治療で十分ということの裏返しでもある。 JCOG 1704では予後不良とされる高度リンパ節転移症例(主にPALN, bulky N)胃がん症例に対する術前DOS療法の効果を探索したP

          高度リンパ節転移を伴う胃がんにおける術前DOS療法の短期成績(JCOG1704)

          BRAFV600E変異の希少がんに対するダブラフェニブとトラメチニブの併用:第2相ROAR試験

          Nat Med 29, 1103-1112 (2023) BRAF変異陽性の固形がんにDabrafenib (タフィンラー) + Trametinib (メキニスト)療法が保険承認されたと聞いて、元文献を確認。本試験には血液がんも含まれているが、私は現在血液がんを担当していないのでその部分は割愛させていただく。 ROAR試験はBRAF V600E変異を持つ腫瘍に対するDabrafenib + Trametinib併用療法のバスケット試験。本試験には甲状腺未分化がん、胆道が

          BRAFV600E変異の希少がんに対するダブラフェニブとトラメチニブの併用:第2相ROAR試験