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ノスタルジア

忘れましたか たまゆらの日々 温泉地 

上流にかかる太鼓橋 

その上で 僕らは皆目を瞑り

優しい陽を浴びました 可憐な微笑み 微風と


往来の会話朗らかで 川の流れもしおらしく 


私の心は和むばかり 河原の砂利の音 水切りと


靴にかかった無邪気な雫 小さな蕾が川に落ち


川は些か垢抜けた 少女みたいな野良猫に


僕らは愛想尽かされて 善の笑顔が溢れたな


思わせぶりなあの態度 彼の娘と同じと 今思う


極楽鳥の囀りを その日は三度 聞きました


打算のなかった童の頃 浮かぶ景色 常緑樹


あの日の記憶と重なります 


糊の効いたあの浴衣 骨身にし染みる 畳の香り


翠の香りが心地よく 幸福をあの日に抱きました


星空 湯船で旅をして 野を超え 山越え 


女湯超えて のぼせて見上げた 枝垂れ柳


甘美な女性にみえました 


今尚胸に溶け込んで 追憶の果ては 涙がほろり


あぁ郷愁 掴めぬ幻影 時経つ度に 彩られ


幽けき幽けき かの情景 


優美な姿はどうしてか


日が暮れる度に 遠のいて 


脳裡にしつこく 染み付きます 


二度と届かぬ思い出よ 懐旧ばかりが膨らんで


いつかは僕らは忘れるかい

枯葉踊る箱根の晩秋


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