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理工3兄弟 ーー ”ガリ勉族”の挑戦

ア式蹴球部には100名近い部員が所属している。その中で注目が集まるのはもちろん、これまでの競技実績を引っ提げて「スポーツ推薦受験」と「自己推薦受験」を勝ち抜いて入学してきたスター選手だ。しかし、彼らスター選手だけでア式蹴球部が成り立っている訳ではない。中には、”理系のガリ勉族”という稀有で特殊な存在がいる。そう、理工学部の学生だ。ア式蹴球部の中では圧倒的少数派。単位修得が難しく、授業や実験が被って練習時間も満足に確保できない。そんな状況にも関わらず、彼らはなぜア式蹴球部で挑戦し続けるのか。彼らの決意に迫る。

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○これが理工学部

ーーまずは自己紹介からお願いします!

楠:創造理工学部経営システム工学科新4年生の楠優輔です。出身高校は本郷高校です。

小林将:先進理工学部電気情報生命工学科新3年の小林将也です。出身高校は群馬県立高崎高校です。

小林俊:創造理工学部建築学科新2年の小林俊太です。東京工業大学付属科学技術高校出身です。


ーーそれぞれ学部ではどのようなことを勉強しているんですか?

楠:経営システム工学科、通称”経シス”は、世の中にある交通や情報通信、工場の生産システムなどをより良くしていくために統計学や数学的な観点から解決しようとする学部で、授業としては統計学や数学、プログラミング、簿記などを学んでいます。

小林将:電気情報生命工学科(以下”電生”)は、その文字通り電気分野、情報分野、生命分野、工学分野の4つを掛け合わせて、それぞれが単独でやっていくのではなくて、それらにつながりを持たせる融合を目指している学科なのかな。
授業的には、1年生の時はプログラミングや基礎科目(微分積分、力学など)を勉強して、2年生以降は少しずつ専門的になってきて、実験もやりつつ回路理論や電磁気学、論理回路なんかを勉強します。俺は生命系にはもう手を出していなくて、この前は電気機器(変圧器、同機器)がどのように鉄道に使われているかを考えたり、コンピューターの構造について勉強したり。今はそんな感じのことが多いですね。

小林俊:僕は建築学科なので、1年生のうちは図面を描く練習がほとんどで、有名な建築家が書いた図面を見て白い紙に丸々写す練習は毎週宿題で出ています。あとは元々ある建築物の模型を今年は2回作りました。1年生の時はとにかく練習する感じです。
他の建築の授業では、建築の歴史や都市、環境、構造、地震などについて勉強します。情報分野ではプログラミングはやってないです。

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ーーそれぞれどのように学科が分かれているんですか?

楠:それぞれの学部の下に5〜6個の学科があって、基幹理工学部だと数学とか情報とか表現工学がメイン。
創造理工学部は学科が5個あるんだけど、どちらかというと理論というよりかは実学的で、社会との関わりについて勉強している。

小林将:先進理工学部は社会につながることもそうだけど、どちらかというとネチネチ理論的にやっていくイメージが個人的にある。創造とか基幹って割とスケールが大きめのことをやると思うんだけど、先進は粒子を扱ったり、ミクロの視点で見てそれをゆくゆく大きくしていこうだとかそういう感じ。先進の中ではそういうミクロなことをやっているところもあるけど、電生の人気の研究室だと、街全体のエネルギーを可視化してそこにどれくらい無駄なエネルギーがあって、有限なエネルギーをいかに無駄なく回していくかを研究しているところもある。


ーー自身の学科はどのように選ぶんですか?

楠:創造と先進は、一般入試の段階で希望する学科に出願して試験を受ける感じ。

小林将:変わらないよね。

楠:基幹だけは入試の段階で3つくらいの学系に分かれて、そこから東大の進振りみたいに分かれていく感じ。


ーーそれぞれの学科のあるあるを教えてください。自分の学科の授業で「これはちょっとキツイな…」って感じることはありますか?

小林将:とにかくレポートとテスト。授業中の板書はそこまで苦痛ではないんだけど、課題が多かったり、実験のレポートが多かったり。テストは割と重いし、そういうところが個人的にはキツイかな。

小林俊:僕は製図の課題です。建築学科にいる人は基本的にそれがキツイって言うんですけど、やっぱりやるのに時間がかかって終わらないっていうのがあって。毎週月曜に必ず新しい課題が出るのはキツイです。
製図以外だと絵を描く課題が結構あるんですけど、それが嫌だと結構つらい。立体のものを作ったり絵を描くのは楽しいんですけど、製図はとにかく写さないと終わらないので、憂鬱なところもあります。

小林将:絵は上手いの?

小林俊:あ、普通です(笑)。化け物みたいに上手い人はいますけど…。

小林将:普通なんかい(笑)。

楠:経シスは1年の時の授業数が他の学科に比べて多くて、ほぼ毎日1限から5限まで入っていて。その分課題も毎週たくさん課されていたし、そこはキツかったな。
あとは、経シスっていうのが理工学部の中で「楽だろう」っていうイメージがついているところがあって。「科学実験がないから学校にいなくていい」「授業がない」みたいに思われていて少しキツイかな(笑)。

小林将:いや、楽やん!

楠:いやいや、楽じゃないんだって。自分でやらなきゃいけないから。やっていることは難しいし、それを自分で進めないといけないところがちょっと厄介かな。

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○理工学部×ア式蹴球部

ーーそもそも、どうして早稲田大学理工学部を進学先に選んだんですか?
早稲田大学が良かったのか、それとも理工学部が良かったのかも含めて、数ある大学とその学部の中から早稲田大学理工学部を選択した理由を教えてください。

小林将:俺は指定校推薦で来たんだけど、俺の高校は夏まで部活をやって、そこから勉強して国公立を目指す高校だった。俺は冬までサッカーをやりたいと思ったし、浪人もしたくなかったから、指定校推薦を使おうと思った。だから、指定校推薦を使うことになって初めて早稲田なり慶應なりの推薦が来ている大学を選んだ感じ。でも、俺の高校の理系の人はあんまり指定校推薦を使わないのね。だから、早稲田の理工を選んで確実に指定校推薦を取ろうと。その時に(今通っている)電生と、基幹理工学部の選択肢があったんだけど、その時は「理工学部でどういうことをやりたいのか」が分からなかったから、「いろいろなことをやって自分のやりたいことを見つけよう」みたいな感じの電生を選んだ感じかな。

楠:俺も将也と同じ感じ。サッカーを9月くらいまでやってそこからいざ受験ってなった時に、自分の実力との兼ね合いもあったし、担任の先生との面談の中で「指定校推薦の道もあるよ」っていう話になって。募集が来ていたのが経シスだったんだけど、俺は理系だったけど社会科目(地理、公民)も好きだったし、自分が興味のあることを学べる学科から募集が来ていたから行こうかなと思った。

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小林俊:僕は工業系の高校だったので、指定校推薦だったら理系しかなかったんですよ。一般受験だと全然点が取れない感じだったんですけど、学校の成績は結構取れていて。サッカーをずっとやってきたこともあって指定校推薦を選んだ感じですね。(系列校の)東工大に行ける推薦みたいなものがあって1回受けたんですけどそれがダメで、そこから指定校推薦を選びました。
自分の高校は3年生の時に全員がやらないといけない課題研究があるんですけど、それを3年生の秋まで半年くらいかけてやるので、あんまり一般受験する人がいなくて、指定校推薦を使う人が多いです。一般受験で合格できる自信がなかったので、僕も指定校推薦を選んだっていう感じです。

小林将:みんな東工大に行くの?

小林俊:いや、学年で200人中10人しか行けないです。しかも、成績が上位30人に入っていないと、そもそも受験すらできないんですよ。

小林将:入っていたんだ!

小林俊:僕、学年で13番くらいだったんですよ。

楠:え、すごいじゃん。

小林将:200人の13番でしょ?

小林俊:いや、僕本当に頭良くないんですよ…。

楠:めっちゃ謙遜するじゃん(笑)。

小林俊:いや、僕はあんまり理系の頭していないんですよ。どっちかというと地理とか公民とか歴史の方が得意で、そっちで点を取って成績だけが良かったんです。数学好きな奴とかはそういうのを疎かにしがちなので、そっちで点を稼いで気が付いたら13番目の位置にいただけで、すごい人はもっとすごいですよ。

楠:それでもすごいじゃん。

小林俊:いや、すごくないですよ。大学に入って死にそうですもん(笑)。
あとは東工大は勉強が大好きな人しかいない印象があって(笑)、サッカーをしたい気持ちもあったので、結果的に早稲田に行けて良かったと思います。

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ーー早稲田しか指定校推薦の選択肢はなかったんですか?

楠:慶應もあったけど、俺よりも成績のいい奴が持っていったから、残りの中から早稲田を選んだ。

小林将:俺の高校は慶應からは来ていなかったんだけど、他の大学からは来ていて。でも誰も推薦を取る人がいなかったから、その選択肢の中で1番良いと思った早稲田を選んだ感じかな。

楠:なかなか指定校推薦を取りたがらないよね、理系の人って。「国公立の方が良いだろう」みたいな流れがあって。


ーー皆さんはサッカーありきで大学を選びましたか?

小林将:高校の時から、大学でも部活でサッカーをやるとはそこまで本気で考えていたわけじゃなかったんだけど、サッカーを続けたいとは思っていたから、早稲田に進学するってなった時にア式に入ることも考え始めた感じかな。だから、どちらかというと後付けみたいな感じにはなっちゃうけど、どうしてもア式蹴球部でやりたくて(大学を選んだ)っていうのはそんなにはなかったかな。

楠:俺も「ア式でやりたいから」っていう感じではなくて。運良く早稲田に入れて「ここから何をしようか」ってなった時に、今までサッカーをやってきたこともあったし、俺が入ったときの4年生に同じ高校の先輩がいて、俺の高校はそこまで強い高校じゃなかったけど、ア式に入ってやっている人がいるのを聞いて「自分でもできるんじゃないかな」って思ったところがア式に興味を持ったきっかけです。

小林俊:僕も最初から思っていたわけじゃなくて、早稲田に行くことが決まってからです。でも、ずっと迷っていて。サークルに入る気はなくて、「サークルに入るくらいならサッカーを辞めよう」と思っていました。大学でチャレンジするものもあった方が良いかなと思って、彷徨った末にア式にたどり着いた感じです。

小林将:確かに、今までサッカーを続けてきて、「大学でもチャレンジしたい」って思ったからかな。

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○”ガリ勉族”の挑戦

ーー理工学部だと、授業が遅くまであって練習に参加できる機会もかなり限られてしまう上に、勉強や課題も多くやらないといけない現状があると思います。しかし、どうして皆さんはア式蹴球部で挑戦しようと思ったのですか?

小林将:大学に入ってきた時は授業がこんなにあることは実際知らなかったっていうのもあるんだけど、確かに「練習に出ていないからコンディションが上がっていないのではないか」「使えないのではないか」という見方をされることも実際はあると思う。実際、1年の春学期は金曜日の17:00以降しか練習に出れなかった。それで週末にIリーグがあって、「最低でもベンチ入りでもしたい」って思った時に、金曜の17:00以降から土曜日にかけていかにして自分をアピールできるか、どうやったら普通に練習に出られている人に勝てるかを考えるようになって。
その考える力は勉強にも活かせると思っているし、社会に出た後も使えることだと思っているから、キツイけどその中にある様々な要素、特に”自分で考える能力”みたいなものを追求できる場なんじゃないかとポジティブに考えてやるようにはしているかな。今思えば、それがチャレンジした理由なんだと思う。

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楠:部員ブログでも書いたんだけど、「上手くなりたい」っていう軸と「人に熱狂してもらえる試合をしたい」っていう軸があってア式にチャレンジしたんだけど、将也と同じで授業がキツイことを想定していなかったというか、高校の時のノリで「全然両立できるでしょ」っていう感じでいたから、その意味では「チャレンジしない方が良かったのかな」って思うことも何回もあった。でも最近新たに思っているのが、「そうやってチャレンジしている人がいるんだよ」っていうことを周りが知ってくれれば「また新たにチャレンジしてくれる人が出てきてくれるんじゃないかな」という気持ちもあって、それもア式にチャレンジしている理由のひとつにあるんだと思う。

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例えば、慶應ソッカー部には理工学部の人はほとんどいなくて、「理工学部でもサッカーをやりたいんです!」って思っていても「ソッカー部に理工学部の人いないからな」ってなってしまっているんじゃないかと。だからこそ、挑戦する前からチャレンジする幅を狭めてしまう環境にしたくないというか、自分たちを見て新たに頑張ろうと思う人が出てきてくれれば嬉しいと思っています。

小林俊:僕は「少し忙しくなるだろうな」とは前から思っていて。建築学科は早稲田に関係なく世の中的に忙しいイメージがあって、自分がア式に挑戦するか迷っていた理由のひとつもそれだったり。でも、チャレンジできる時間は今しかないし、社会に出てしまったらサッカーをやると言っても今ほど本気ではできないと思います。だから、誰かに影響を与えたいというよりかは、自分が勉強とサッカーの両立をできれば、それ以上大変なことがあったとしても何とかやっていけるんじゃないかなと思って。自分はサッカーがそんなに上手くないという中で、人として成長するためには、ただ大学に通って勉強しているだけじゃダメだと思ったから、ア式に挑戦しようと思いました。

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ア式に入ってみて、理工の先輩がいたのは気持ち的に楽でしたね。同じ授業でやってきた人がいたから「何とかなるな」っていう気もしたし、気持ち的にしんどくなった時もありましたけど、理工の先輩の存在は大きいですよね。

小林将:今はキツイんだけど、その先に見える自分の成長が、自分を動かす原動力になるかな。

楠:謎の信頼感はあるよね。自分と同じような経験をしてきたけど、続けて結果を残してきた人もいたし、そういう人を見ていると「自分もまだまだできるんじゃないか」とか「このままじゃ終われないな」って思う。



ーー授業以外の時間をなるべくサッカーに費やせるように、勉強とサッカーの両立で工夫していることはありますか? 普段なかなか他の部員に伝える機会はないと思うのですが。

楠:授業をめっちゃ真面目に聞く。授業内でなるべく理解しようと思っている。結局テストの時に跳ね返ってくるし、テスト直前に「ここのノートの内容全然分からないんだけど」ってなってももう時間がないから、分かるところから重点的にやろうかなってなる時はある。
あとは、睡眠時間を削る。

小林俊:確かにそうですよね。

楠:他に削る時間がないから…

ーーそれでコンディションを保てますか?

楠:しんどい。1時間半睡眠で朝練に行ったこともあったし(笑)。

小林将:それはね、夏にやったね(笑)。2年の春学期の期末テストでそれやったわ。9:30から練習だったんだけど、その日のテストが本当に重くて勉強が終わらなくて気付いたら朝の4:00とか5:00とかになっていたから、「やべ、寝るか」ってなって8:00くらいまで寝て9:30から練習するみたいな(笑)。その日はしかもフィジカルで、吐きそうになりながらやっていたな(笑)。テスト前は本当にしんどいね。


ーー練習に参加できる機会は限られていますが、1回1回の練習の中で何か工夫していることはありますか?

小林将:去年の春からFC(社会人チーム)ができて、その中のTM(チームマネージャー、戦術などを考える)メンバーに入ることになった。自分は去年の春学期は週2回練習に出られなかったんだけど、その2回は重くのしかかってくるから、TMに入ることでFCはチームとして何をやっているかを理解しようとした。その理解があると、いざ自分が練習に戻ってきた時に練習に入りやすい。「練習に出られないから追いつこう」ではなくて、「出られないからこそ自分がチームを動かしてしまう」という感じ。練習回数が周りより少なくても、理解があることによって身体もその理解のもとで動くし、そういうことが今年はできている。これが1年の時はできなかったから、1年の時と2年の時では大きく違っていて、だからFCで点も取れたのかな。「逆に積極的に関わっちゃう」ことで自分の意見をチームにどんどん入れていくと、主体的にできて良いのかなと。

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楠:めっちゃ熱く語るじゃん。

小林将:でも、そうしないと追いつけないから。

楠:次の日練習に出れないって分かったら走るとか、ちょっとキツめに練習するとか。練習は当たり前に100%でやって、その後の時間で自分に足りないことを練習する。休むと絶対にコンディションは落ちちゃうから、その落ちる幅を最小限に抑えるために前日の練習強度を上げることはしてます。

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小林俊:コバくん(将也)みたいなことはできないですけど(笑)、練習に普段いない分存在感は出さないといけないですし、声を出すことは意識的にやっています。それだけじゃもちろんダメなんで、今シーズンは試合で結果を残すことで存在価値を上げていかないといけないと思うんですけど。

楠:練習で存在感を出すの難しい。「いない分存在感を出そう」って思うけど。

小林将:俊太のやり方は本当にすごいと俺は思う。確かに「声だけじゃん!」って思うかもしれないけど、声が練習を作るというか、雰囲気がそこにあることでチームが動いたりするから、そこで一役買っている俊太の声は他の人に届いていると思うし、そこはすごい尊敬している。”存在感の出し方”は逆に俊太から学ぶこともあったし、(俊太が)自信がないみたいなのは違うかな。

小林俊:声は自信ありますよ!(笑)

楠:声は意識して出しているの? それとも自然発生?

小林俊:意識はしていますよ。ア式に来た初期の頃は、これまでと環境が違いすぎて縮こまっていたところはあって。あとは、自分が上手くいかなくなった時にどうしても暗いところが出てしまって、そうすると声が自然と出なくなっちゃう時があるので、そういう時から意識はして「出そう」と思ってやっています。
だいぶ慣れてきた今は、泰平くん(工藤泰平・新4年)とか、声の質が高い人のところまで自分も極めていかないといけないと思うし、周りから「声を出すことが当たり前でしょ」ってなってしまったらそれ以上はないと思うので、本当にここからですよね。

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楠:自分で気合入れてきた(笑)。

小林将:本当にすごいと思う。

小林俊:元からそういうキャラではあったんで(笑)。
高校の時はサッカーの技術的に自分と同じくらいの人が多かったので、今よりも自信を持ててやれていたし、今よりも周りに強く言えていたりしたんですけど、声を出すキャラはずっと昔からで。でも、それしかないんで(笑)。それがなくなったら自分はいる意味ないんで(笑)。いそうでいないじゃないですか、声出すキャラって。意外といないんで。

小林将:プレーだけだと、ここまでレベルが上がってくると難しいというか。だから、”プレー以外のところでどれだけ関われるか”は今シーズン意識してやっていきたいと思っているし、授業が始まって練習にいないと「またいないか」「しょうがないか」ってなってしまうと思うんだけど、練習にいる時に「いるんだよ、俺は」というのが伝わると良いですよね。


ーー勉強とサッカーが両立できている実感はありますか?

楠:俺はないかな。

小林将:いや、あるでしょ。単位も取れているし、成績も良いし。

楠:確かに、単位もあと卒論を書くだけだけど、前にやったことは全然覚えていなくて、短期記憶で乗り切ったから。下積みがないから、数学的な知識が求められる研究室で全然周りとレベルが違うこともあって、そこが両立できていなかったのかなって思うところ。
あと、睡眠時間を削って勉強していることが果たして両立と言えるのかどうかは感じている(笑)。

小林俊:でも、そうしないとキツイ時はありますよね。

小林将:自分は単位は取れているんだけど、サッカーの部分でもっともっと高みを目指していきたい。それこそ関東リーグにコンスタントに出て活躍するような選手になりたいと思っているし、まだまだ今のままじゃダメかなとは思っている。

楠:そうね。理工が関東リーグに出るのはなかなかないからね。

小林将:確かに難しいと思うし、イメージ的にも使いにくいと感じられているところはあると思うんだけど、それでも誰にもないものが自分にはあるはずだから、それを磨いて武器になるところまでいければ文武両道できているのかなって思うかな。



○”今”から”未来”へ

ーー最後に、”理工学部×ア式蹴球部”という大学生活を経て、自分の将来に何を見ていますか?

小林将:自分の将来には「豊かな人生を送る」という目標があって。ア式の中での行動ひとつひとつをどのように社会の中に、自分の将来に結び付けるかを最近よく考えるようになってきて。小さなことかもしれないけど、ミーティングの中で自分のアイデアを出す、そのアイデアを出すのに必要な考える力が、自分の将来に結びつくだろうし、「アイデアを実践する→上手くいかない→チームメイトと議論して改善していく」というア式での行動ひとつひとつがきっと自分に返ってくると思う。そこが、自分がア式にいる時間の中でそれをどうやって社会の中に活かしていくかを考えている理由だと思うし、”ア式でなぜサッカーをやっているか”の答えにもつながってくると思う。豊かな人生を送るための術を身につけるために今この組織で活動していて、それを身につけるためには100%で全ての行動をやることで何か課題が生まれたり、何かに気づくことができるのかな。
理工のことで言うと、授業の中で身につく知識+今ア式でやっている活動における能力を掛け合わせて、ゆくゆくは自分の人生を豊かにするためにア式と理工を掛け合わせたいと思っている感じかな。

小林俊:僕は建築関係の道に進みたいとは思っています。建築関係といっても色々あって、環境系のことをやる人もいれば、都市を扱う人もいれば、実際に家やビルを建てる人もいて、色々な人がいて建物が出来上がっていくのが建築。そういう中で、設計する人になるというよりかは現場監督に憧れがあって、現場監督でギャーギャー声を出して働きたいっていうのがあります(笑)。でも、”建築は1人じゃできない”という点で言うと、チームワークだとか、何かを伝え合うとか、そういうものはア式で学ぶことはいっぱいあるし、そういうところはつながっていると思います。

楠:将来どうなりたいかにつながる”理工学部×ア式蹴球部”の過程だとは思うけど、将来の自分の目標は「幸せな生活を送る」っていうまだ漠然としたもので。”理工学部×ア式蹴球部”を3年間やってきて、誰よりも自分が置かれた環境とか、どうしなければいけないかは考えてきたつもりだし、周りの人よりも考えている自負はある。それが自分の強みのひとつになっていると思うし、就職活動の中で色々な仕事を見たりして、自分に合うか合わないかの判断する材料にも”理工学部×ア式蹴球部”での経験は活きているというのは感じるから、自分の強みが入った会社で活かすことが自分の目指すところだし、さっき言った「幸せな生活を送る」ことにつながってくると思う。”ア式×理工”は自分たちにしかない環境だと思うから、そこでの強みを見つけて活かしていくことが将来につながるんだと思っています。



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早稲田大学唯一の理系学部である理工学部。記事の中にもありましたが、授業が5限まで入るのは普通で、課題やテストの比重がかなり重いため、体育会との両立はかなりハードルが高く、一見無謀なチャレンジのようにも見えます。しかし、彼らは彼らなりの工夫で、限られた練習時間の中で自身の存在意義を示し、ア式蹴球部の中で貴重な戦力として挑戦し続けています。
彼らの存在が架け橋となり、今まで以上に理工学部からア式蹴球部へ挑戦する学生が増えることを願っています。

(インタビュー:林 隆生)

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楠優輔(くすのきゆうすけ)♢
学年:新4年
学部:創造理工学部
前所属チーム:本郷高校
小林将也(こばやしまさや)♢
学年:新3年
学部:先進理工学部
前所属チーム:群馬県立高崎高校
小林俊太(こばやししゅんた)♢
学年:新2年
学部:創造理工学部
前所属チーム:東京工業大学付属科学技術高校


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