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ビートルズとの出会い①

 ビートルズとの出会いは、遡ればもう20年以上前の出来事ではあるが、それと同時に、ファンになったのもそれぐらいの期間ということになる。月日が経つのは本当に早いものだ。
 
 中学二年の冬頃、一つ上の学年である「三年生を送る会」で英語の曲をみんなで合唱することに決まった。寝耳に水だった。これまで洋楽にはまったくといっていいほど触れてきておらず、テレビのCMや番組で英語の曲が流れてきても意識して聴いてはいなかったので、洋楽に対する印象が本当になかったに等しかった。
 英語に関しては授業も特段嫌いではなかったのだが、英語の発音をうまくメロディに乗せて歌えるのだろうかと自分もそうだったが、ほかの生徒も少なからず心配していたことだろう。
 それもあってか、英語の先生が、少しでも洋楽に慣れてもらおうと授業で洋楽を聴かせてくれた。ラジカセで最初に聴かせてくれたのが、ワムの『ラスト・クリスマス』だった。洋楽にもこんな良い曲があるんだ!という驚でいっぱいだった。それが洋楽との最初の出会いでもあった。
 
 さて、肝心のビートルズの楽曲に触れたのはいつかなのかというと、これも同じく中学二年生のときで、それは音楽の授業でのことだった。
 三学期、「三年生を送る会」で合唱する曲は、カーペンターズの『イエスタデイ・ワンス・モア』に決まり、その合唱の練習の合間に、リコーダーでビートルズの『イエスタデイ』を練習曲として吹いていた。最初、この曲をリコーダーで吹いたとき、あまりにも美しいメロディに思わずうっとりしてしまったのを今でも覚えている。ワムやカーペンターズよりもすごい曲があるとは! このビートルズとはいったい何なんだ! いや、ビートルズって名前は聞いたことがあるぞ、たしか前にちびまる子ちゃんでやってたっけ、ずうとるびがなんたらかんたらって……でも、こんな素晴らしい曲を書けるなんてきっとすごい人に違いない!
 その日、帰宅してさっそく母親にビートルズのことを聞いてみた。すると、ビートルズというのはイギリスの4人組のバンドで、そのうちのジョン・レノンという人はすでに亡くなっている、私も若いときはビートルズが好きで特にジョージ・ハリスンがかっこよくて一番好きだった、と教えてくれた。
 イエスタデイはリコーダーのメロディでしかそのときは知らなかったので、ビートルズが演奏している『イエスタデイ』を聴いてみたいと母親に言ったら、ビートルズのCDは持っておらず、レコードなら赤青盤とアビーロードは持っているが聴くためのプレーヤーがないとのことだった。当時は家にパソコンはあったのだが、まだYouTubeといった動画コンテンツやSNSさえもなかった時代であり、どちらにしろパソコンもまだ一人では扱えない状態だった。聴けないのなら別に無理して聴く必要もないよなと諦めて、それ以降は、音楽の授業で『イエスタデイ』をリコーダーで吹く以外に、ビートルズに触れる機会はなかったのだった。
 
 中学三年生になると、英語の先生が代わったのだが、前の先生と同じく時折ラジカセを教室に持ってきては洋楽を聴かせてくれた。最初に聴かせてくれたのは、ビートルズの『愛こそはすべて』だった。その少し前に、英語の教科書をパラパラめくっていたらビートルズのことが書かれているのを見つけ、それで彼らのことを再び思い出していたのだが、この曲をかけてくれたおかげで、ようやく、ようやくビートルズの楽曲に初めてちゃんと触れることができたのだった。そして、『イエスタデイ』とはまた違う衝撃を受けた。もちろんメロディの良さにも興奮したのだが、それよりもジョン・レノンのボーカルに心が持っていかれてしまった。なんて、なんて素晴らしい歌声なんだろう、艶のある声質、心を丸ごと鷲掴みされるようなたまらなさ……こうしてすっかりジョンの歌声にメロメロになった自分は、その日帰ってから、今度は父親にビートルズの曲が聴きたいことを告げた。すると、じゃあこれを聴いてみたらいい、有名な曲たくさん入ってるから、とあるカセットテープを棚から出して手渡してくれた。それは父が大学生のときにラジオでビートルズの特集が放送されていたときに録音したものだった。 
 ウォークマンなら持っていたのでさっそくそれを聴いてみることにした。ポールという人は高音だけどなかなか良い歌声してるなぁ、ハーモニーがうまくて素晴らしい、どっちがジョンでジョージの歌声かわかりづらい、ドラムもなかなか迫力あっていいなぁ……そんな感想を抱きながらずっと聴いていた。

 ビートルズってこんなに素晴らしいバンドなんだ!と、このとき感じてからもう24年が経ととしている。

※サムネの写真は、左側が上記の父親が貸してくれたカセットテープ、右側がビートルズ最後の新曲『ナウ・アンド・ゼン』のカセットテープである。

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