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【IAC 2022 Paris】世界最大級の宇宙開発カンファレンスにて見える国際情勢とワープスペースの集大成

 宇宙開発分野では国際宇宙航行連盟(IAF)が毎年主催する世界最大級のカンファレンスイベント「国際宇宙会議(通称IAC)」が今年はパリで開催されました。その歴史は長く、1950年に始まって以来、今回で第73回になります。各国宇宙機関の開発計画、学術研究成果の発表の場として、全世界から6000名以上が参加しています。
 IACでは各国の宇宙開発機関の理事長クラスが登壇するメインセッション、トピックごとに査読された学術研究が発表されるテクニカルセッション、各国宇宙機関や宇宙関連企業が展示を行うブースセッションが用意されています。ワープスペースからはCSOの森、CMOの高橋とBizDevの國井が参加し、JAXA主催のブース出展に加え、JAXA、三井不動産がそれぞれ主催するステージにてプレゼンテーションを行いました。
 今回の記事では、IACについて、その様子を詳細にお伝えいたします。

国際政治の縮図!? IACメインセッションと参加各国の背景

 ひときわ目を引くメインセッションでは、約1000人規模の大会場にてNASA(米国)やESA(欧州)、JAXAやISRO(インド)をはじめとした各国宇宙機関のトップが登壇し、各宇宙機関の宇宙開発計画などが発表されています。まさに、IACでしか出来ないような豪華な顔ぶれのセッションです。

メインセッションのステージ。世界最大級のカンファレンスの名に違わぬ顔ぶれによるプレゼンテーションが展開されました。

しかしその一方で、宇宙開発における主要なプレイヤーであるロシア、中国宇宙機関の参加者の数は非常に限られていました。

 昨今の社会情勢の変化を受けて、ロシアからの参加者はいなかったと森は語ります。
 その一方で、昨年までは中国政府からIACへの参加を制限されていたためほとんど見ることのなかった中国人の科学者、技術者などが、未だ少数ではありますが確実に増えてきているそうです。国際情勢上、アメリカと中国は互いに牽制をしあっていますが、欧州と中国は敵対的ではなく、むしろビジネスにおける良好なパートナーシップを築いています。そのため、今回のIACの開催地がパリという事もあってか、一部中国資本の入っている企業の参加が実現している背景がある、と森は考察します。実際に中国の嫦娥計画はIACにてThe IAF World Space Awardを獲得しており、その上中国は、嫦娥に後続する計画における国際的なパートナーを募集することもIACにて発表しています。
(参考:中国、月探査ミッション「嫦娥」でパートナーを模索–深宇宙探査でも
(UchuBiz))
 このように、欧州を舞台にロシアへの逆風と中国資本のさらなる台頭、というまさに国際政治の縮図のような現象が散見されます。

フランスを拠点とするサフラン社も後述のブースセッションにて展示を行っています。サフラン社は40年来中国にて事業展開を行っており(参考:China/SAFRAN)、このように中国は欧州にとっては切っても切れないビジネスパートナーと言えます。

世界各国の企業や宇宙機関の展示が並ぶブースセッション


 その一方で、各国宇宙機関や宇宙関連企業が展示を行うブースセッションにおいては、ロッキード・マーティンなどの名だたる企業に並び、JAXAも展示ブースを展開していました。

左上:UK Space Agency、右上:LOCKHEED MARTIN、左下:ESA、右下:JAXAのブース展示です。世界各国の宇宙開発プレイヤーによる数多くの展示が目を引きます。

IHIなどをはじめとした国内の民間企業に並び、ワープスペースもJAXAのエリアで展示を行いました。また、JAXA、三井不動産のそれぞれが主催するステージでプレゼンテーションの機会をいただき、光通信技術が地球観測衛星業界に対してどのようなメリットをもたらすのか、またJAXAからの委託事業である「月・地球間通信システムの実用化に向けた検討」(参考:ワープスペース、JAXAより受託した 月と地球を結ぶ通信システムの実用化に向けた検討業務 成果報告書を提出(NEWSCAST))、光通信ネットワークの技術実証(参考:ワープスペースとSynspectiveが衛星データ取得の実証、防災に活用(日経XTECH))について発表し、会場には立ち見がでるほどの注目を集めました。
 光通信に関する話題は、やはりここでも多くの事業者から興味を示していただいています。。もちろん光通信に関連する事業者は世界中に多く存在しますが、衛星に搭載する光通信デバイスを開発する企業ではなく、ワープスペースのような光通信サービスを展開するオペレーター企業による話題提供は世界的にも限られています。それゆえ、
「光通信の展開について、観測衛星や光地上局を開発している事業者がワープスペースのセッションにて情報収集を行う、という流れが出来上がりつつある。」
と、森は手応えを実感しています。
 また、地球観測事業者だけでなく、宇宙ステーションの運用に関わる企業からもワープスペースの事業への関心を示していただくこともあり、光通信スタートアップとして確実に知名度が上がってきたと森は語ります。

JAXAが主催するステージで発表中の森。セッションは立ち見が出るほどの盛況でした。

 ワープスペースは昨年より積極的に海外展開を行ってきました。昨年度のIACではこうした訪問はありませんでしたが、今年度のIACにて、この1年の海外への事業展開の集大成が見えました。(昨年度の記事はこちら)その上で、ワープスペースの事業を更に大きく育てていくためには、
「注目だけでなく、技術実証。」
と森は語ります。そして、その技術実証における重要な布石こそ、Synspective社との光通信ネットワークの技術実証になります。ワープスペースは、衛星間光通信のキープレーヤーたるべく、さらに世界を舞台にくさびを打ち続けてゆきます。今後も引き続き、ワープスペースの事業展開にご期待ください。

JAXAブースにはロゴの入った枡に獺祭。世界最大級の祭典でも、日本のおもてなしの心は光りました。

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