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「宇宙保険」で挑戦を後押し。損保ジャパン担当者が語る、損害保険と衛星データ利用【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#13】

ワープスペース/WARPSPACE

「宇宙開発」と一口に言っても、開発しているものやその目的はさまざま。

このシリーズでは、ワープスペースのChief Dream Officerに就任した伊東せりか宇宙飛行士と一緒に宇宙開発の今と未来を思索していきます。

第13弾となる今回のテーマは、宇宙開発企業の成長です。損害保険を通じて世界の宇宙開発を支援する、損害保険ジャパン株式会社 航空宇宙保険部 営業課の伊藤穂乃香さんをゲストに迎え、せりか宇宙飛行士と議論しました。

宇宙開発企業の挑戦を支える「宇宙保険」とは

©︎小山宙哉/講談社

せりか:伊藤さん、こんにちは!今日は「宇宙保険」について教えていただけるということで、とても楽しみにしていました。

損害保険ジャパン 伊藤穂乃香さん

伊藤さん:よろしくお願いします!

わたしは航空宇宙保険部 営業課で、企業向けの営業を担当しています。宇宙保険のことは、就職活動中に業界研究をしていて知りました。ロケットや人工衛星など高額なものを垂直方向に打ち上げるなんて、ものすごく大きな挑戦だと思ったことを覚えています。

せりか:伊藤さんが取引されている企業は、やはり日本の企業が中心なんですか?

伊藤さん:日本企業だけでなく、海外との取引もあります。宇宙保険事業の業務内容から説明しましょう!宇宙保険事業は、大きく分けると「保険引受」と「キャパシティの提供」の2種類があります。

©︎損保ジャパン

まずは「保険引受」についてです。自国外の保険会社による保険の引受を規制する法律・法規での取り決めのもと、契約者は自国の保険会社の保険に加入します。なので、私たち損保ジャパンが宇宙保険を引き受けるのは、日本の衛星オペレーターさんや衛星メーカーさんが対象です。

宇宙保険と一口に言っても、衛星を工場からロケットの射場まで輸送する間に起こる損害を補償する「打上げ前保険」やロケットのエンジンが点火(※)されてから衛星が分離されるまでを補償する「打上げ保険」、衛星がロケットから分離されて以降の損害を補償する「寿命保険」など、いくつか種類があるんですよ。

※補償開始の起点は、打ち上げサービス事業者との契約内容により異なります。

©︎損保ジャパン

例えば、皆さんが自動車保険に入るときは、パンフレットに載っているプランを選んでいるのではないかと思います。宇宙保険の場合は、衛星事業者であるお客様のミッションがどのようなものなのか、どのロケットでいつ頃打ち上げる予定なのかなど、ヒアリングと対話を重ねながらプランを作り上げていきます。

せりか:宇宙保険はミッションに合わせたプランをオーダーメイドで作るんですね。宇宙保険はほかの分野の損害保険と比べると、金額の規模が大きいのではないかと思います。宇宙保険ならではの特徴はありますか?

伊藤さん:そうですね。宇宙保険のように、発生し得る一つの事故の規模が大きい分野では「再保険」を手配します。

そして、損保ジャパンでは海外の保険会社が引き受けた宇宙保険を再保険という形で引き受ける……つまり、「保険のキャパシティを提供する」という活動も行っています。日本では衛星を打ち上げる企業は少しずつ増えてきているところですが、アメリカやヨーロッパでは打ち上げられる衛星の機数が多いので、定期的に再保険を引き受けているとマーケットの状態がわかってきます。

日本のお客様の宇宙保険を引き受ける際も、海外のロケット、人工衛星と同様のリスクであるため、海外の宇宙保険市場での保険料レベルを考慮する必要があります。お客様に保険に加入していただきたいからといって安すぎる保険料を設定することはできません。宇宙保険のマーケットに精通して、適切なレートを出すのは、保険会社の腕の見せ所なんです!

挑戦を保険で後押し

せりか:伊藤さんがやりがいを感じるのはどんなときですか?

伊藤さん:挑戦する人を保険で後押しできたときです。

私も色々なことに挑戦してみたいとは思いつつも、少し身体が弱くてできなかったり、機会に恵まれなかったり……なんだか一人でできることは限られていることに気付きました。挑戦する人を応援できる損害保険は、私がやりたいことにあっていていいなと思ったので損保ジャパンに入社しました。

例えば、私は美術観賞が好きで、会社としても損保ジャパン本社ビル敷地内の「SOMPO美術館」でポスト印象派の巨匠ゴッホの《ひまわり》を常設展示していますが、美術品の展示にも損害保険が必要です。収蔵品をほかの美術館にも貸し出して、より多くの方に観賞してもらうのは美術館の重要なミッションですが、運送保険がなければ、数億、数千万円もするような美術品を運送する業者は見つからないかもしれません。

SOMPO美術館 展示室風景

万が一の場合に壊してしまうのが嫌だから、展示会を開けないなんて、もったいないじゃないですか。

せりか:それは、宇宙業界でも同じことが言えそうです。新しいことに挑戦すると、上手くいかないことも出てきますがそれを恐れているばかりでは、先に進むことはできません。

©︎小山宙哉/講談社

伊藤さん:誰も自ら失敗をしようとしているわけではありませんからね。挑戦の過程で実績が積まれていくのをパートナーとして後押ししていければと思っています。

日本では言霊を気にする方も多くいらっしゃるので、損害保険や事故という言葉を出すと「縁起でもない」と嫌な顔をされる方も一定数はいます(苦笑)。損害保険をネガティブなものではなく、挑戦するために必要なものだと認識していただけると嬉しいです。

宇宙スタートアップとタッグを組んで、発災時の保険金支払いをスピード化

せりか:宇宙保険引受のほかに取り組んでいることはありますか?

伊藤さん:小型SAR衛星コンステレーションの運用や衛星データを活用したソリューションの提供を手掛けるSynspective(シンスペクティブ)社と協業させていただいています。

Synspective社の衛星データを当社の保険金支払いサービス向上に活用できないか検証を進めているところです。

せりか:衛星データが保険金の支払いに役立つんですか?

伊藤さん:はい。水災害や地震などの災害発生時には、通常現地の保険金サービス部で保険金支払いをします。それでも人数が足りない程度の大きな災害が起きた場合、お客さまにいち早く保険金をお届けするために災害対策本部が設置され、当社の全国の社員がその地域に駆けつけて保険金の支払いを支援します。

水災害の保険金を計算するためには浸水高の測定が必要になるので、水災害発生時にはスタッフがお客様のお宅に伺って浸水高を確認するか、もしくはお客様に被害箇所の写真を撮って送っていただく必要があります。浸水が発生しているエリアのお客様から保険金請求が来ていない場合はこちらからお電話をしています。私も何度か行ったことがあるのですが、2週間くらいずっとオフィスに缶詰状態で対応しました。

衛星データの解析結果から被害状況を把握して災害対策本部を設置するのに活用できないかと、まさにSynspective社と対話しながらソリューションを作り上げているところです。これまでは気象データや過去の災害時の経験などを参考にしていましたが、気候変動の影響で災害の規模が拡大していることから、発災後の被害状況データの重要性が増しています。衛星データが加わることで、スタッフ、ホテル、タクシーを手配すべき地域や数を効率的に計画できるようになり、訪問までにかかる時間を削減でき、より早く保険金をお支払いできるようになります。

衛星が画像を撮影してから地上でダウンリンクするまでのリードタイムが短縮されれば、衛星データはより便利になると思います。ここは衛星間光通信を使ったネットワークシステムの開発に取り組むワープスペースさんの事業の見せ所ですよね。頑張っていただきたいです。

せりか:宇宙保険で衛星事業者を応援しながら、衛星データを実際に活用して、お客さまの保険金支払いのスピードアップにも活かそうとされているんですね。

伊藤さん:そうですね。宇宙開発企業ではない外の目線から、衛星データのユースケース創出に繋がるような提案をしたり、実際に衛星データを使ってみて感じた課題について意見交換をさせていただいたりすることは、宇宙産業の成長に繋がると考えています。こういう面でのご支援も、宇宙保険事業と並行して取り組んでいきたいです。

せりか:伊藤さん、ありがとうございました!

せりか宇宙飛行士との対談シリーズ第13弾のゲストは、損保ジャパンで宇宙保険の営業を担当されている伊藤穂乃香さんでした。
次回は、アストロスケールの伊藤美樹さんをお迎えして、宇宙の持続可能性について議論します。お楽しみに。



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