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【TICAD 2022】「ネクストインディア」への事業貢献を提案、アフリカ進出への大きな一歩へ

3年ごとに日本とアフリカ諸国で交互開催されているアフリカの開発をテーマにした国際会議「Tokyo International Conference on African Development」(TICAD)の第8回が8月27日、28日にチュニジアで開催されました。アフリカでの開催は2016年のケニア開催以来、2回目の開催になりました。

イベントに参加したワープスペース・CEOの常間地が参加者たちの様子などを振り返ります。

登壇している常間地の様子。ワープスペースの事業によるアフリカの開発への将来的な貢献を提案しています。

なぜ、日本とアフリカ諸国の開発会議が開催されているのか?

TICADとは、日本がアフリカの国々と開く国際会議です。1993年に日本政府が国連などと共に東京で初開催して以降、3年ごとに開催されています。今年もアフリカから54か国の首脳らが参加し、日本との経済関係の強化や開発課題について議論しました。近年開催されるTICADでは、民間企業によるビジネスチャンスの拡大に注目が集まっています。回を重ねるにつれてアフリカのスタートアップの参加数が増加しているだけではなく、日本のスタートアップに対する期待値は非常に高まってきています。

アフリカ諸国でも近年衛星打ち上げを行う国が急激に増加し、世界から多くの投資が集まり続けています。ワープスペースとしては、宇宙ビジネスに対しポテンシャルを持つアフリカ諸国との関係を構築し、地上のインフラ整備を進めていく事は非常に重要なマイルストーンの一つです。

また、会場内ではスタートアップや人材育成におけるイノベーション・エコシステムの構築に主眼を置いたサイドイベントが多数開催されるなど、これまで以上に事業創出に向けた積極的な体制づくりが始動していると感じられる特徴的な会でした。3年後にはまた日本で開催される予定ですが、前回に引き続き、今回まいた種の芽が出るようにまずはWarpHub InterSatを着実に実現したいと思います。

当イベントにて常間地は、2日目に開催されたビジネスフォーラムにて登壇し、ワープスペースの紹介に加え、ワープスペースのサービスがアフリカの開発にどのように貢献できるのかについてプレゼンテーションを行いました。

アフリカ開発へ、ワープスペースならではの貢献とは

セネガルで電気と通信を未電化地域へと届けるインフラサービス事業を展開するTUMIQUI Japon(ツミキ・ジャポン)社の調査によると、全世界のうち未だに6億人がそもそも電気を使用できない状況にあります。また、高速に繋がるインターネット(4G/5G/固定回線)の普及率に関しては平均で56%となっていますが、人口が集中し高速通信の存在する都市部を90%とすると、地方では20%程度となっている現状があります。電気や通信の普及は産業振興においてかかせず、この状況がアフリカが経済的に発展することを阻む大きな要因の一つとなっています。

アフリ カ諸国の諸課題(※TUMIQUI Japonサイトより)

宇宙スタートアップ企業は一見アフリカ開発とは関連が薄いと思われますが、宇宙での通信インフラ構築を目指すワープスペースだからこそ、アフリカの通信インフラの課題に対してクリティカルな貢献ができると常間地は述べます。

アフリカには広大な土地がありますが、その広大な土地の中にある程度人口が集中する都市や村が分散して存在します。このような環境で、先進国のようなメッシュ型の有線のネットワークインフラを実装する計画は、経済合理性、および物理的な実現可能性に乏しいと考えられています。

そのような状況下で重要となる技術が、衛星通信です。
広大な土地に散在する都市や村の間を有線ネットワークで接続するのではなく、都市や村ごとに衛星を用いた通信によりインターネットにアクセスすることで、上記の問題を回避して通信インフラを構築することができます。ワープスペースはまさに、そのような通信インフラ構築に貢献することができるのです。

インターネット上では、24時間365日、リアルタイムでグローバルな情報が更新されていきますが、たとえ先進国のインターネット利用者であっても、必ずしもすべての情報が最新の情報である必要は無いと常間地は述べます。インターネット会議など、もちろんリアルタイム通信の需要は存在しますが、インターネットの利用者はネット上のリアルタイム情報のごく一部を閲覧するのみであり、後はアーカイブされていく、という実情があります。

そのため、衛星通信による通信インフラといっても、インターネット利用者の全員が衛星通信を行うのではなく、地上の(例えば、村ごとの)ローカルなデータセンターに情報を蓄積し、利用者はそこにアクセスして情報を入手するシステムの導入が検討されています。そのようなシステムにより、経済合理性の高い通信インフラ構築が可能になるわけです。

そこで威力を発揮するのが、ワープスペースと、先程もご紹介した「TUMIQUI Japon」社のコラボレーションです。ワープスペースでは宇宙空間で光通信を使用し、人工衛星がデータを高速に地上へと伝送するためのネットワーク「WarpHub InterSat」を開発しています。人工衛星がレーザー光によって直接地上とも通信ができるように、光地上局の開発も進めています。また一方で、TUMIQUI Japon社はセネガル電気と通信を届けるために展開する、大容量発電に通信アンテナを組み合わせた「TUMIQUI Power Digital Solutions(ツミキ・パワー・デジタル・ソリューション)」を展開しています。これは大電力と高速回線を限定域内で使用できるサービスです。これらを組み合わせる事により、衛星間通信とローカルな通信インフラ+電力供給が可能なデータセンターの構築が可能になるわけです。このコラボレーションにより、先述のアフリカが抱える通信、電力の課題解決に向けて貢献できるようになります。

当社の事業である「WarpHub InterSat」は、光通信により、高速で大容量の衛星間、衛星・地上間通信を実現します。

「WarpHub InterSat」の特徴は地球中軌道における衛星間光通信の展開により地球観測データを素早く地上に降ろす即時性の担保にあります。そのため、リアルタイム性を求めないローカルなデータセンターの構築とは一見シナジーが無いように思われますが、ワープスペースは今後アフリカにも地上局を建設する予定があるため、衛星と地上局の間の光通信網の構築により、これまで以上に多量のデータを地上局のあるアフリカへと流通させることができるようになります。

「WarpHub InterSatの副次的な能力によって、アフリカの通信インフラ構築にクリティカルに貢献できる」

と常間地は考えます。

アフリカ開発への世界的な注目


TICAD 8では、ワープスペース、TUMIQUI Japonのようなコラボレーションが多く発表され、期待される効果や貢献についてプレゼンされていました。アフリカ諸国のスタートアップ関係者、経済、エネルギーに関係する分野の政府関係者、大使館、外交関係者、現地(チュニジア)の大手の通信、エネルギー、水道等のインフラ事業関係者が列席していました。アフリカでは現状、通信インフラをヨーロッパに依存する構図になっているため、それに対するリスク分散の観点や、上述の通信、電力の抱える課題、加えてスタートアップがもたらす社会的なメリットを理解した上で、

「日本の宇宙スタートアップが、アフリカの今後の持続可能な社会基盤、特に、質の高い生活環境や人材育成の基盤となるインフラの構築に貢献していく未来に対し、好意的な印象を受けた。」

と常間地は語ります。   

現在のアフリカの経済成長は凄まじく、事業者の間では「ネクストインディア」として、新時代のマーケットとして非常に注目されています。現地での会合に参加した常間地は、その印象をこう述べます。

「ルワンダをはじめとして、チュニジア、エジプト、セネガル、モロッコ、ケニア、南アフリカなど、アフリカ諸国のスタートアップ企業の層は3年前のTICAD 7と比較しても明らかに厚くなってきている。そのようなスタートアップに対する投資も活発に行われている。もっとアフリカにコミットしないと、ポテンシャルのあるマーケット機会を見逃してしまうのでは。そのような危機感を覚えた。」

だからこそ、ワープスペースがここで、TICAD 8のコンセプトでもある「持続可能性」に関連するインパクト投資をする意味は非常に大きくなります。加えて、アフリカ諸国だけでなく、日本や、同じくアフリカでの事業展開に熱視線を送るヨーロッパ系の投資ファンドに対しても、大いにアピールすることができました。また今回のチュニジアでのTICAD 8への参加により、そのアフリカに地上局を設置する際に重要となるアフリカでの土地勘、現地企業とのコネクションを得ることもできました。このTICAD 8が、ワープスペースのアフリカでの事業展開における強烈な楔となることに、疑いの余地はありません。

余談ですが、チュニジアでは3000年前よりワインの製造が行われており、イスラム侵攻による中断、フランスの植民地時代の製造再開という歴史があります。常間地がチュニジアで訪れた現地のワイナリーでは最新テクノロジーと融合した現代的な製造法が導入されており、大いに舌鼓を打ったそうです。

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