見出し画像

「ほんまに宇宙人いるの?」若き日のドキドキを信じ、光通信事業に取り組むCTOが語る宇宙開発【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#7】

「宇宙開発」と一口に言っても、開発しているものやその目的はさまざま。

このシリーズでは、ワープスペースのChief Dream Officerに就任した伊東せりか宇宙飛行士と一緒に宇宙開発の今と未来を思索していきます。

第七弾となる今回のテーマは、地球外生命体です。せりか宇宙飛行士と地球外生命体の発見を人生の目標として掲げるワープスペースのCTO・永田が、宇宙探査や科学技術の振興の意義について議論しました。

父が話してくれた宇宙の謎

©︎小山宙哉/講談社

せりか:はじめまして。永田さんのインタビュー記事を読んで、一度お話してみたいと思っていたんです! 子どもの頃から宇宙、特に地球外生命体に関心があったそうですね。

ワープスペース CTOの永田

永田:そうですね。宇宙が好きになったのは、父の影響です。望遠鏡で月や火星を見せてくれて、よくスケッチをしたり、毎晩寝る前に、父が宇宙の話をしてくれたりしました。真っ暗な部屋で宇宙の広さや次元の話を聞いていると、理解はしきれないのですが、不思議さに酔いしれて、宇宙空間に浮いているような気分になったことは未だに記憶に残っています。上手く言葉にできませんが、ワクワクが止まらない感じです!

せりか:その感覚は私もよくわかります!

©︎小山宙哉/講談社

永田:父がくれた古い本に、タコ型の宇宙人のイラストが載っていました。「ほんまに宇宙人いるの?」と聞くと「それはまだ誰も確かめたことがない」と言われたのが、今でもずっと心に引っかかっているんです。

宇宙は、その起源やダークマターの正体など、わからないことばかり。なかでも、宇宙人-地球外生命体が存在しているのかどうかという疑問は、身近に感じられました。地球外生命体は、火星や深宇宙に行けば探せるわけで。それなら見つけてみたいなと思いました!

今は地球外生命体がいることは証明できませんが、いないことも証明できないというフワッとした状態です。それが、地球外生命体が一体でも発見されれば、この宇宙に存在している知的生命体が私たち人類だけではないことが証明されます。地球外生命体なんて今までオカルトだなんて言われていたのが、科学的に証明される爽快感は味わってみたいです。さらに言えば、人類を超える知能を持っている生命体がいてもおかしくありません。地球外生命体が一つでも見つかると、世界観がガラリと変わりますね。

©︎小山宙哉/講談社

せりか:確かに、地球外生命体が発見されれば、世間の宇宙に対する意識が大きく変わりそうですね!

大学の衛星開発プロジェクトで感じた宇宙開発の課題

せりか:ところで、そこまで地球外生命体に強く関心を持っている永田さんが、ワープスペースで衛星光通信事業に取り組んでいらっしゃるのはどうしてですか。

永田:衛星光通信事業を通して宇宙開発の裾野を広げられれば、探査を加速できますし、深宇宙探査も効率化できますよね。だから衛星光通信事業を推進するのも良い道なのではないかと思ったんです。

せりか:なるほど。衛星光通信事業は、地球外生命体探査のためのインフラ整備にも繋がると考えていらっしゃるということですね!ワープスペースには、どういう経緯で参画されたのでしょうか。

永田:きっかけは学生時代にまで遡ります。高校生の頃から将来は宇宙開発をしたいと思っていて、衛星開発に関われそうな大学を探していたところ、筑波大学には学年や学部を問わず、小型衛星の開発と運用に参加できる「結プロジェクト」という取り組みがあると知り、入学後に早速参加しました。

結プロジェクトは、宇宙に関連することに筑波大学としても、より力を注いでいこうと亀田敏弘先生が中心となって立ち上げられたプロジェクトです。亀田先生は教育者としての思いも強く、衛星開発を通して学生に色々な経験を積んでもらい、社会に送り出していきたいと思っていらっしゃったのかもしれません。ISSの実験棟「きぼう」から小型衛星を放出する無料枠をJAXA から提供いただけることもあり、衛星の打ち上げ実現に漕ぎ着けました。

ところが初号機は、地上との通信が上手くいきませんでした。衛星の要である無線機を含め、部品は宇宙用に特別に開発・実証されたものではなく、一般的なものを改良して使用していたのが原因の一つではないかということでした。その経験を踏まえて2号機では、宇宙空間でも動作した実績がある無線機を購入して搭載すると、無事に通信に成功しました。

とはいえ、宇宙用に開発された部品は高価で、毎回購入しているとプロジェクトは資金難に陥ってしまいます。開発期間が限られているなかで、一般の部品が宇宙空間でも動作するか地上で試験を実施するのも難しい。こういったところが、宇宙開発が大学や高校にまで広がらないハードルになっているのではないかと感じました。そういった出来事があり、亀田先生は「宇宙用の部品を安価に提供したい」「結プロジェクトで(宇宙用に開発されていない)民生品を取り入れた衛星を開発し、実証していこう」と思われたようです。

その後、衛星の開発資金を調達するために、筑波大学に関連するクラウドファンディングを支援している「筑波フューチャーファンディング」に相談に行くと、現ワープスペースCEOの常間地さんと知り合いました。衛星技術に関心を持った常間地さんが「起業してみませんか」と背中を押してくださったこともあり、亀田先生がワープスペースを創業。常間地さんと私は、取締役として参画しました。

せりか:宇宙に関わる仕事に就きたくて、筑波大学の結プロジェクトに参加したところ、その理念を継承しているワープスペースに創業メンバーとして参画されることになったということですね。すごい!

進む光通信技術と宇宙探査

せりか:CDOに就任して、皆さんのお話をうかがっているなかで、衛星光通信は実用化が目前で、世界から注目が集まっていることを実感しています。今後はどのように発展していくと考えていらっしゃいますか。

永田:地上で使われている光通信は1970年代から研究開発が始まり、1980年までに伝送できるデータ量は1000倍にまで増えています。つまり1年に2倍のペースで増えていて、光ファイバーの性能も向上しています。宇宙用の光通信は実用化の元年といえるフェーズで、地上の光通信と同じか、それ以上のペースで発展していくのだろうなと思っています!

せりか:光通信の技術は、宇宙探査にどう役立てられていきそうですか。

永田:宇宙探査に必要な通信が光通信に置き換わっていけば、通信機のサイズは小型化し、消費電力も小さくなるので 、カメラやセンサなど探査ミッション自体に割けるリソースがどんどん増えていくでしょう。

ワープスペースの衛星向けの通信インフラ事業「WarpHub InterSat」を地球の周回にとどまらず、月や火星、木星、土星にも広げていき、太陽系全体をネットワークで結べば、深宇宙探査が進はず。事業を通して宇宙科学探査をサポートすることで、科学探査を推進していきます。そして、私の目標である地球外生命体の発見を達成したいと考えています。

せりか:今はNASAの火星探査機が取得した火星の画像やデータは、早ければ数時間程度で地上に届いています。それが大容量であっても、半リアルタイムで届くようになるということですね! 楽しみです。永田さんが探査してみたい星はどこかありますか。

永田:いっぱいありますよ! 木星の衛星・エウロパやガニメデ、土星のタイタンやエンケラドスは特殊な環境で、水やメタンが液体の状態で存在しているのではないかと考えられています。液体は複雑な化学反応が起きる大事な条件の一つ。液体が存在していれば、生命が生まれる可能性が一気に高まります。そういった環境は太陽系内にも、まだまだたくさんあるので、くまなく調べたいです!

せりか:地球外生命体が見つかる日も近そうです!

©︎小山宙哉/講談社

私が尊敬する天文学者の金子シャロンさんは、著書で「私が夢だった天文学者になれたのはきっと若き日のドキドキを信じたからです」と綴っています。永田さんが宇宙に関わる仕事に就けたのも、きっと若き日のドキドキを信じたからですね! ありがとうございました!

せりか宇宙飛行士との対談企画第七弾は、CTOの永田との宇宙探査や科学技術の振興の意義、そして衛星光通信のポテンシャルについての議論でした。

次回のゲストは宇宙分野に特化した投資家の方です。投資家の目線から見た、宇宙ビジネスの魅力を語っていただきます。お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?