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読んだ本「美容は自尊心の筋トレ」

長田安奈著。美容ライターの方で、多種多様な美を見てきたであろう人が「みんなそのままで美しいんだよ」とありとあらゆる角度から力説してくれる。世のしがらみとか言葉や慣習の呪いとかが空気に溶け込んでいて、それを吸い込みながら生きている我々(ほとんどの人がそうだと思う)にはかなり響くんじゃないだろうか。第一章の言葉たちの力強さにほろっと涙がこぼれたりとか。

「自尊心の筋トレ」っていう言葉もパンチがあるし、あなたは美しいと力説してくれる、なんて書くと誤解されるかもしれないが、決して「ほら!!!アンタ自信持ちなさいよ!!!」とこっちの気持ち置いてけぼりで背中たたきまくられる、というわけではない。心をじっくりほぐすストレッチやマッサージみたいに、時間をかけてゆっくりゆっくりほぐしていくのを手伝ってくれる、みたいな本だった。自信の育て方というか、美の視野の広げ方を教えてくれる。出会えて良かった。

自分を肯定することって難しいけど、長田さんは本の中で美の多様性を絵画で表現してわかりやすく説明してくれる。
油絵で描かれていても水彩で描かれていても良いし、抽象画だからとか静物画だからとかで文句付けられるのはおかしい。
美術館にさまざまな画風の作品があり、どれもが美しいように、人間の美にだって多様性があっていいはずだ。わたしは勇気付けられる。清潔感さえあれば、あとの美は自分次第で良い。

自己肯定、自己愛、というのは最近のわたしのテーマともリンクしていて、「うんうん、これで良いよね!」と背中を押してもらえる。
これら満たされ具合というのは他者にも影響するというのも書かれていて、なるほどと思った。自己愛が満たされれば、幸福にしたい対象は広がっていくけれど、逆も然りであるということ。
たしかに自分がしょうもなく感じる時って、ベクトルは「しょうもない自分」にしか向いてないのかも。たくさんの名言になっているように、大事な人を大事に出来るのも、まずは自分を愛すことから。

「でもどうやって?」というところに、長田さんはいくつか「自分は何が好きか知る」「謙遜をやめてみる」などのアドバイスを筋トレメニューよろしくしてくれている。
自尊心を持ちましょう!なんて言われても、、、となるところを、ちゃんと教えてくれている。審美眼のストレッチ、などの独特な言葉で伝えられるメニューは、想像するだけで明るい気持ちになれるものばかりだ。

「努力は痛気持ちいいくらいで」というのも印象的な言葉だった。手を抜く日があってもいい。「あえて」ですよ〜〜って振舞って仕舞えばいいというのも素敵だと思った。完璧じゃない自分を認めてあげる。そのためには、他者に軽率にレッテルを貼ることをやめることも必要だ。他者を縛ると、自分をも縛ることになるから。「個性派至上主義」でしか自分と他人との差をつけられないと思い込んでいた過去の私も成仏したことだろう。

この本で「ああ、救われたなあ」と感じるポイントの一つに「後ろ向き、マイナス、ネガティヴは決して悪いことではないんだよ」というメッセージを何度も送ってくれるところだ。嫉妬もするし落ち込みもする。まずそういう自分すら認めてあげることだと長田さんは書いてくれている。どんなわたしでも大丈夫なのだ。

これから先のふとした時にこの本を読み返すことは何度もあると思う。クスっとくる言葉のセンスや長田さんの体験談に癒されながら、美とは?自分とは?を掘り下げていく感覚は心地いい。

長い時間かけてこびりついた「わたしなんて…」を落とすのには時間がかかるけれど、そんな思想を抱きながらも生きてきた自分を労り、誇り、ほんのちょっとずつ、日々の繰り返しの中でその呪いを解いていってあげたい。せっかく自分として生まれたのだから。

自尊心の筋トレ、おすすめです。


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