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『推し、燃ゆ』のあのセリフって、こういうことだったんだわ。

昨年末からずっと、鬱々として過ごしていた。
何にもやる気が起きない。
何を食っても美味しくない。
本を読んでものめり込めない。
noteに記事を書くどころか、パソコンを開くのさえ億劫。
ああああああ、私、一体どうしてしまったんでしょう。
はっ、まさかコレがうわさの更年期ってやつ????

体調もすこぶる悪かったので、とりあえず医者に診てもらう。
丁寧な問診の結果、不眠症とのこと。
軽い睡眠導入剤を処方され、一月ほど飲み続けていた。

これがまあ、素晴らしく効く。
ベッドに入って3時間は眠れずにいたのが嘘のよう。
飲んだら30分もしないで夢の世界へ。
あまりに効くもんだから、私は不安になった。
この薬が無かったら、私、一生眠れないんじゃないか??
一生こいつ(デエビゴという)と別れられないんじゃないの???

それくらい依存していたデエビゴちゃんなのに、今、私はそれを全く必要としていない。
なんでかって?
推しができたのである。

眠れない夜の暇つぶしにドラマを観始め、そのなかの俳優さんにすっかり骨抜きにされてしまったのだ。

そのーあのーあれです。
「おっさんずラブ リターンズ」です。
それの和泉幸さんです。
和泉さんのなかの人である、井浦新さんです。

ドラマというものをほとんど観てこなかった自分でも、井浦さんの存在は知っていた。つーか、結構、かなり好きでした。
でもそれは俳優さんとしてではなくて、日曜美術館の人として。
知的な雰囲気と、穏やかで、相手のお話に真摯に耳を傾けているお姿が本当に素敵で、日曜日の朝が華やぐ気がいたしました。

「おっさんずラブ リターンズ」で井浦さん演じる和泉幸は、主人公はるたん(田中圭さん)の部下として登場。コピーも出来ないポンコツで、常にぽやぽやしているキャラだ。公式ではいずぽやと呼ばれている。(かわよ)

そのぽやぽや感がも~カワイイのなんのっ!!!
表情や仕草、ちょっとした動作も全部、ぽやぽやなのだ。
おっさんのはずなのに、え、なに、うそ、魔法っすか、私には子猫に見えるんですけど???
と、その愛らしさに悶えていたら、まさかの元公安という設定がぶちこまれ、しかも鬼教官であったという・・・。
公安時代のエピソードでは、オールバックの激渋な強面姿。
ぽやの片りんもない。(ようでいて、ほんのりぽやを滲ませるという凄さ)
うわー、なんなんだこのギャップは。
というか、なんなんだこの人は。
カワイイとカッコいいと美しいとエロいが一堂に会してるじゃん。
これって奇跡じゃない? もう存在がミラクルじゃん? イコール存在が神ってことじゃん?

てな感じで、すっかり信者になってしまいました。
ドラマをほぼ観たことなかった人間が、今ではアマプラに入ってまで出演作を追いかけているという始末。
そうして見れば見るほど、
「はーカッコいい・・・」
「えええ、こんなドSな役もやっているの?? 普段と全然違うじゃん、すっげー!!!」
「くううう、なんなのさ、この文系男子の究極系みたいなの!ズルいわぁ」
などと心の声を駄々洩れさせながら沼にハマっているのである。
溺れているのである。
そして、それがとんでもなく幸せなのである。

ああ、たしかこの状況を言い得て妙な小説があったなあ。
宇佐見りんの『推し、燃ゆ』だ。
あれに書いてあった。

推しを推すことがあたしの生活の中心で絶対で、それだけは何をおいても明確だった。中心っていうか、背骨かな。

宇佐見りん『推し、燃ゆ』

そうなのだ。今、私はこの状況にある。
井浦さんのおかげで、私は今、デエビゴちゃん抜きで眠れる。
井浦さんのおかげで、毎日めちゃくちゃ楽しい。
何食っても美味い。ランニングもすっげー楽しい。読書も再開できて、今5冊同時進行してる。
それまでふにゃふにゃだったのが、一本ビシッと新しい背骨を差し込まれた感じ。
なんつーか、ちゃんと地に足つけて、生きてるって感じがすんの。

主人公のあかりとは、母娘レベルの歳の差があるけれど、わかるんだよ。
いや、わかるを越えてる。
もう、あかりと同化しちゃってる。

この本を読んだのは、もう二年以上前。(あれ、もっと前かな?)
その本が今の私を説明しているというおもしろさ。

本を読んでおくと、こういうことが多々ある。
そのときはわからなくても、後々のいつかに、こうやって自分の状況をぴたりと言い当てる言葉が仕組まれているのだ。
全文を覚えているはずなんてないのに、ふとした瞬間に、言い得て妙な一行がぽーんと頭に浮かんでくる。
そういう本に出会っちゃうと、もうなんだか運命を感じてしまう。
私のための一冊な気がしてしまう。

これが、読書をする愉しみなんだよなぁ。
読めば読むほど貯まる、言葉貯金。
言葉にならない想いもきっとあるけれど、言葉にできたらそれをお守りみたいにぎゅっと抱きしめておけるじゃない?
たぶん、読書ってのはそういうためにするんじゃないかな。
少なくとも私は、そうやってコツコツ言葉を蒐集している。









最後までお付き合いいただきありがとうございます。 新しい本との出会いのきっかけになれればいいな。