NovelJam2018回顧録 第4話
キーワードは「フォロワーシップ」
さて、第4話は実際にNovelJamでお話した自己紹介スピーチの掲載ということにする。本番は若干アドリブを入れたので、厳密には違うところもあるが、概ね同じということでご了承頂きたい。
来年は来年でNovelJamのレギュレーションは変わっているかもしれない。でも、こういう立場の人間が、こういう思いを抱いて編集役も参加しているんだな、ということが伝われば幸いである。
今大会では「和良さんのスピーチ良かったね」というありがたいお言葉を多数頂いた。「スピーチを聞いて、最後まで和良さんに投票しようか悩みました」というのも、ああ、メッセージはちゃんと届いていたんだな、と思った。が、やはり「スピーチが上手い」というのは、くすぐったいというか、ん? と思うことなので…。色々慌てたり、ミスをした場面も多々ありましたし。
でも、壇上に沢山上がらせて頂いた中で、一回だけ、ビシッと決まったスピーチがあります。それがどれかというのは、まあ、別の話ということで。
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はじめまして、ノベルジャム2018に編集枠で参加する和良拓馬と申します。よろしくお願いします。名前だけでも覚えて帰って下さい。
自己紹介の前に、まずは今大会で私が目指すゴールを発表します。それは「自分自身が自信をもっておすすめできる作品を生み出す」です。
昨年は著者として、ノベルジャムに出場しました。昨年と今年のルールを比較し感じたのは、1つは「書く」だけでなく「売る」要素も審査対象であるということ、もう1つは「作品」ではなく、「本」そのものの質が問われているという点です。つまり、作品が無事完成しても、それが自分が売りたくない、自信をもっておすすめできないものだと、勝負になりません。この状態を避け、無事にゴールへとたどり着くためには、適切なチームビルディングが必要です。
例えば、こういう考え方があります。編集役が豊富な知識と指導力をもって、著者とデザイナーを引っ張っていく。ポピュラーですね。でも、こういうチームを私は作れるだろうか? と感じています。それはなぜか。
お待たせしました、経歴のご紹介です。肩書きを色々掲げましたが、ようするにサラリーマンです。参加者でもいち、にを争うくらいの、標準的なサラリーマンです。昔は学生新聞の記者兼編集担当だったり、社会人になってからは電子書籍のセルフパブリッシングをしていますが、商業ベースでの出版経験はゼロです。
そんな私が戦うために、色々考えました。様々なスポーツの取材や仕事の中で、「強いチーム」や「人が育つチーム」を見て、学んできたこと。そのエッセンスをこの大会で、活かしていけばいいのではなないか? と。
私なりのチーム作りのイメージが次のとおりです。学術的な言葉を使えば「フォロワーシップ」というものです。それをこの場所に合うワードに変えるならば、「4人で2冊の本をつくろう!」です。作業内容をベースに関係が分断された組織ではなく、各々が役割を越えて繋がり、各々の強みが本に反映させる。そういうチームを、私はつくりたいと考えています。
最後に駆け足ですが、私の好きなもの、好きな本を写しておきます。少しでも被っていたら嬉しいです。
これからチームを組む方も、よきライバルとして戦う方も、3日間楽しんでいきましょう! ありがとうございました
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大学時代の僕が衝撃を受けた組織のつくりかた。
それが、早大ラグビー部監督の中竹竜二氏が提唱した「フォロワーシップ」だった。リーダーが示した向きと同じならば、メンバーはリーダーより前にいても、横にいても、後ろにいても良い。そして、自らの強みを活かして、各々は動いていく。それをこのNovelJamに応用させると宣言したのだ。
そして、正直に伝えた。僕はただのサラリーマンです、と。直接的には言わなかったが「勝つ」や「賞をとる」「売れる」という要素を徹底的にスピーチから取り除いた。そういう要素に飢えている作家が何名かいることを、事前に把握していた。でも、そんなん言われても、僕はわからん。だから、誤って僕を選ばないようにしてくださいね。ごめんなさい!
そういうスピーチなのである。
とにかく、そんなチームが、このNovelJamにあっても良いのではないか? そんなチームなら僕も、僕なりのやり方で3日間を乗り切れるのではないか?
最後はちょっと慌ててしまったが、なんとか時間内にトラブルなく言い終えることができた。ホッとした。編集が自分の力で運命を操れる機会は、このスピーチの時間だけだと踏んでいた。やるべきことはやった。あとは運命に委ねるのみ…。
「和良さんを選びましたよ!」
「あっ、私もですー」
はいっ? 投票中は目を瞑って何も見ないようにしよう…と思ったら、思わぬかたちで覚めてしまった。
まず、一人目の声の主は藤沢チヒロさんだった。
マジかー! やったー!
というのも、僕がどう頑張っても手に入れられないものがあったからだ。NovelJamでの成功体験。これは経験者に頼るしかない。それがまさか、まさか…!!!
…ありゃ、Eテーブルにもう1名。確か自己紹介したときはフジサキさんと名乗られていた。Twitterのアカウント…ありましたっけ? 僕のリサーチ範囲外だった。
何はともあれ、ご指名頂けるだけで丸儲けだ。ありがたや、ありがたや…
かくして、著者の藤崎いちかさんとデザイナーの藤沢チヒロさんの加入が決まった。
そうこうしているうちに、チーム決めドラフトはくじ引きのフェーズに入っていた。特定の方に指名が集中したとは言え、意外と白紙委任組も多いみたいだ。
くじ引き組が予想よりも多いなあ…そんなことをぼんやり思いながら、Eチームにもう1つの名前が記入されたことを僕は確認した
(つづく)
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本連載をより楽しむには、下記の2冊を合わせて読むと更に楽しいです。
◆平成最後の1日を、逃げる二人の行く末は? アラサー女子が織り成す優しいロードノベル/新城カズマ賞受賞
藤崎いちか著「平成最後の逃避行」
https://uwabamic.wixsite.com/heiseisaigo
◇怪獣が現実に現れるようになった平成を舞台にした、生きる意味と恋を巡る青春ビルドゥングスロマン!!/海猫沢めろん賞受賞
腐ってもみかん著「怪獣アドレッセント」
https://uwabamic.wixsite.com/kaiju
【次回予告】久々の小説挑戦となった藤崎さん。ロードノベルの末に待つのは、山田太一とローリングストーンズ? お楽しみに!?
第5話はコチラ
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