9月8日台風の思い出
台風が来るというのは
どことなく
非日常感をおびていて
家の中で
過ぎ去る嵐を
じっと待つ
といった空気感は
むしろ
幼い頃の私には
ささやかな安心を与えてくれた
嵐の間
人は皆動かず
同じ家のなかの人は
嵐に気を取られ
私の動向の
チェックがゆるむ
そのなかで
本当に些細な呼吸をしつつ
ずっとこのまま台風だったら
いいのに
なんて思っていたなぁ
と思い出す
台風が過ぎ去った後の
晴れ間の
絶望的な悲しみは
表現するのが難しい
今は台風の日も賑やかだ
ひっきりなしの
注意報はTV
ネットだけでなく
街中の電子掲示板、
電車内、街の放送
至るところに溢れ
嵐を感じる暇さえない
そんなこんなで
あっという間に
雨風が静かになった
どこかに
昔の私のように
台風の中の
静かな時間に逃げ込みたい人は
この賑やかな世界で
どこに行くのだろう
そんなことを
台風の日に思うのだった
愛実