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もうすぐ

もうすぐ死ぬなら
私の人生最高だったーって
笑顔で叫べる最後にしたい
もうすぐ死ぬと分かってても
突然訪れても悔いなく1日を噛み締めたい
だからまず
朝起きてする事は太陽におはようって
笑顔で言っていっぱいの光浴びる事
もちろん早起きは三文の徳だから
それ前提で
その後、トイレ行って顔洗って
一杯のコーヒーを飲むために
やかんに火をつける
コーヒー飲んだら化粧して寝癖直して
1日の戦闘服を決める
これ来たら絶対
今日は最高に楽しいってなる服
女の子だもん妥協はしない
綺麗に変身できたなら
小さなバッグを持って
エナメルのパンプス履いて
玄関を思いっきり開けて外に出るの
大きく深呼吸して一歩一歩進んでいく
管理人さんに挨拶をして
駅に向かう道のりを歩く
ポッケに入ってるSuicaをピッてして
ホームで電車を待つ
待ってる間も本を読む
もうすぐ死ぬなら
この世の全ての本、読めるだけ読みたい
短い時間でも1ページ進めることに意味がある
3分後に来た電車に乗って
恵比寿に向かう
乗り換えは1回
50分はかかるけどその時間も本を読む
そうしているうちに電車は高田馬場に着く
山手線に乗り換えて
恵比寿に向かう電車に乗る
今度はポエムや小説ネタを書く
有名になったら嬉しい
もうすぐ死ぬなら
一度でいいから私の書いたポエムや小説を
沢山の人に読んでもらいたい
だから毎日人間観察、ネタ探し
本を読んで学ぶ
もうすぐ死ぬなら
映画のヒロインになってみたい
悲劇じゃなくて観てる人を幸せな気持ちにさせるハッピーなヒロイン
そうこう考えてるうちに恵比寿に着く
西口を出て働く飲食店へ向かう
社員に挨拶して制服に着替えて
アナログなタイムカードを押して
店内の掃除を始める
トイレだって隅から隅まで掃除する
その後、テーブル拭いてメニュー置いて
開店準備をする
11時30分お店はオープンする
来るお客さんは近くの会社の人だったり
近所に住んでるマダムだったり
ランチはどれも1000円の定食で
ボリューム満点、味満点の料理ばかり
みんな笑顔になって帰っていくのを
見て私も笑顔になる
ランチは15時で終わる
私は夜の営業準備をしてタイムカードを押す
帰り支度が済んだら賄いをいただいて
社員にお疲れ様と言って店を出る
身体に異変を感じてからは
長時間働かないように自分と相談して
毎日を過ごしている
辛いこともたくさんあるけど
大事に思う人たちとの時間を大切にしたい
もうすぐ死ぬなら
友人や家族、お世話になった人たちとの
思い出を沢山残したい
色んなところに出掛けて笑い合って
今日一緒に過ごせて良かったって思える時間を
作っていきたい
もうすぐ死ぬなら一世一代の恋をしたい
結婚はできなくても
この人といれて幸せだったと思いたい
私が死んだ後のことは分からないけど
でも、悲しさに包まれるような
そんな死に方はしたくない
大切な人みんな私が死んでも
あぁ、あの子そういえばチョコ好きだったよねとか、あの話題で爆笑してたよねとか、私がいなくても私との思い出を思い返して笑ってほしい
だからもちろん私がもうすぐ死ぬってことは
前々から伝えてある
お互い覚悟が鈍らないように
泣いてもいい泣いてもいいから
最後には笑ってほしい
帰宅するといい匂いが立ち込めてる
今日の晩ご飯はシチューだって
今日の出来事を家族に話して
あつあつのシチューを口に頬張る
気持ちのこもった食事は
どんなに効く薬よりも妙薬だと思う
ほかほかの気持ちのままお風呂に入る
身体は右腕から洗う
頭も洗って湯船に浸かる
芯まであったまると夢見心地な気分になる
少し目を閉じると大好きな人が笑ってた
嬉しくなって私も笑って
この場所にいれてよかったって思う
悲しいわけじゃないけど
でも目を開けたら涙が流れてて
今日もいい一日だったって思えた
色んなものに感謝して
色んな人に感謝して
私は生きている
誰も、誰にも迷惑をかけずに生きてる人なんていなくて助け助けられて切磋琢磨に努力を重ねている
お風呂から上がって体を拭いて
ルームウェアに着替える
髪を乾かして歯を磨く
お肌のスキンケアをして
鏡の中にいる私が笑った
ベッドに潜り込んで
同じ一日より違う日々を過ごせるように
明日も笑っていられますようにと
私は目を閉じた
もうすぐ死ぬなら
一分一秒、悔いなく過ごしたい
もうすぐ死ぬなら

次、目を覚ます時は
眩しい光の中にいるんだろう

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