きみとの夏夜

空気の澄んだ夜、星をそっと掬ってみる、こうしてみると思ったよりちいさくて、つめたくて、星座にぶら下がりたいなんて本気で考えていた自分がばかばかしくなる、愛おしくなる、そんな夜

とんがりがゆるくなったソフトクリームを5秒間見つめて気を取り直す、明日天気になあれ、晴れたらアイスは溶けちゃうよ、きみの言葉が眩しく光って肌を照らす、わたしの、青白い腕

夏だって夜は涼しくて、お盆を過ぎたらもう秋、ムシの鳴き声が耳に残って馴染んでいったんだ、遠ざかって目を覚ます、蚊取り線香は滑り台、ぐるぐる回って地面に着地、転ばなくてよかったね、かわいいかわいいドジっ子のあきちゃん

となりに座るきみ、きれいな顔をしたきみ、夜に溶け込んでいるだけだなんて済ました顔で言うけれど、星のキラキラがきみを包まなくたって、きみはいつでもきれいだよ、鏡、そうだね、わたしの目に映るきみを見てごらん

黒い髪、白い肌、すこやかに育ったなめらかな筋肉、月が、星が、夜が、きみを夢につれていく、きみが星と眠れるように、きみが夜を走れるように

空気の澄んだ夜、小花がチラつく空を見上げてきみと手を繋ぐ、吸い込んだ空気はわたしたちの体を季節に染める、熱帯夜だってきみと過ごしたら大切な夜、わたしの頭の中にあるフォルダの名前は「きみとの夏夜」

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