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中国の瀬戸際外交と悩みの種

■核兵器を臭わせる
 中国・ロシア・北朝鮮は核兵器を用いてアメリカを脅す。中国はハワイ・グアムを標的とした核ミサイルを臭わせ、戦争を意識した発言が繰り返されている。だが核ミサイルを使えば中国は報復攻撃を受ける。これを知っている中国は、曖昧さを用いてアメリカに瀬戸際外交を挑んでいる。

■核兵器の存在意義
 冷戦期の米ソは核戦争を前提とした戦争計画を持っていた。だが核兵器を用いると自殺覚悟の相殺戦になる。双方が自殺覚悟であれば核戦争は発生するが、勝利を追求すると核兵器は使えない。

 米ソは矛盾を抱えながら戦争で使える核兵器を求めた。1キロトンクラスの戦術核を使うことを想定したが、イギリスの研究家リデル・ハートは次の様に喝破した。

「戦略核戦争論と戦術核戦争論を分離するのは無理。所詮、核弾道ミサイルは使えない兵器だ」

 1キロトンクラスの戦術核は使えると想定したが、一度使われると敵側も戦術核で対抗する。すると戦術核の報復合戦になり、結果的に汚染範囲は戦略核と同じになると気付いた。戦術核の使用でも放射能で汚染された土地は使えない。戦術核を用いても結果的には戦略核と同じ汚染範囲になる。

 しかも敵国の土地を占領してこそ戦争に勝利する。人類史で火力の投射だけで戦争に勝利した例は無い。第二次大戦のドイツと日本は都市を爆撃されたが降伏していない。ドイツは敵軍が首都を占領されて降伏。日本はアメリカ軍が本土上陸することを察知し、実行能力を確認してから降伏している。

 戦後であればイラクのフセイン政権はアメリカの空爆を受けた。だがフセイン政権は継続。フセイン政権を終わらせたのは地上部隊による首都占領だった。だから核ミサイルを用いても戦争に勝利しない。

■冷戦末期の米ソ
 冷戦末期の米ソは、核戦争は無意味だと気付く。これはリデル・ハートの主張を認め、新たな核兵器の存在意義を見つける。

「核兵器は実戦兵器から抑止兵器になり、今日では交渉兵器になった。従って核抑止力の信憑性よりも曖昧性の方がより安定と抑制に効果がある」
(ブレジンスキー論文/トレンズ第一号)

 核保有国の多くが冷戦期になると、核兵器は戦争用から政治の恫喝兵器になっていた。核ミサイルを使うと思わせて、相手国に政治的な譲歩を求める外交用になった。これは今の核保有国に受け継がれている。

■中国の瀬戸際外交
 中国は核保有国だが、核ミサイルは政治用の恫喝兵器として使われている。中国も核ミサイルを見せつけてアメリカに覇権拡大を挑んでいる。中国は覇権拡大として南シナ海・インド洋に進出。これだけでアメリカに警戒心を与えた。

 中国はアメリカに戦争するにはコストが合わない戦争を売りつけ、アメリカに戦争回避目的の譲歩を求めている。南シナ海・インド洋への進出がそうで、これだけではアメリカは戦争するにはコストが合わない。だから中国は核ミサイルを臭わせ、南シナ海・インド洋で覇権を拡大している。

 北朝鮮もアメリカに瀬戸際外交で挑んでおり、時の強国に挑戦する国が好んで使う。過去にはドイツのヒットラー・イラクのフセイン大統領が使っているが、最終的には戦争に発展している。理由は瀬戸際外交を売られた国が譲歩できないまで追い込まれ、怒って戦争を選ぶ。だから行き着く先は戦争になる。

■アメリカと北朝鮮に巻き込まれる
 アメリカと北朝鮮は非核化で対立しており終りが見えない。これに周辺諸国は巻き込まれており、アメリカに瀬戸際外交で挑む中国も巻き込まれている。そうなれば中国の思惑とは別に、北朝鮮の非核化中断で戦争に巻き込まれる可能性が出た。

 これでは中国が行っている南シナ海・インド洋での覇権拡大が困難。中国は北朝鮮を支援しているから、北朝鮮の暴発が中国の未来を壊してしまう。だから中国は北朝鮮の制御が悩みの種になった。

■核兵器シェアリング
 中国としては北朝鮮を管理したい。だが北朝鮮が中国の管理下から出ようとする。そこで考えられるのが、中国が保有する核ミサイルを北朝鮮と共有する核兵器シェアリング。核兵器シェアリングは冷戦期にアメリカとドイツが行った例が有る。この策を用いれば北朝鮮は非核化を行ったことになる。だが国外である中国に報復用の核ミサイルが有るので、北朝鮮は間接的に核保有国。

 朝鮮半島の完全非核化は事実だから嘘は付いていない。国外に報復用の核ミサイルが有るから、アメリカは容易には北朝鮮を攻撃できない。この条件ならば北朝鮮は中国に従うことになる。

■難しい舵取り
 中国としては戦争を回避しつつ覇権を拡大したい。これまでは上手く行ったが、北朝鮮が覇権拡大を妨害。だが中国は北朝鮮を放置できないのが現実。だから中国は、「二兎を追う者は一兎をも得ず」状態になっている。

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