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一帯一路の障害

■一帯一路
 中国は現代版シルクロードを陸路と海路で構築している。一帯一路として実現に向けて動いているが、一帯一路を守る基地と人民解放軍の展開が遅れている。何故なら交易路は常に安定していることが重要で、現地で発生する地域紛争やテロは交易路を遮断する。

 だから交易路を守る基地と人民解放軍の介入が求められる。一帯一路の交易路でテロが発生すれば、即座に人民解放軍を介入させて鎮圧しなければならない。これは世界の警察としてアメリカが行ってきたことを、中国が行うことを意味する。

■世界の警察
 第二次世界大戦の世界は、アメリカが世界の警察として介入してきた。これは建前で、本音は海洋国家アメリカが使う海上交通路の保護が目的。だからアメリカは世界各地に基地を配置し、海上交通路付近で紛争やテロが発生すれば軍事介入した。

 世界平和は建前で本音はアメリカの国益が第一。基地展開も海上交通路を守れる配置にした。アメリカは平時に基地展開を継続的に行い、緊急展開できる態勢を作り上げた。だがアメリカは海上交通路を守ることが第一で、内陸部の交易路まで守ることはしなかった。

■中国の覇権拡大
 中国が覇権拡大をしているのは事実。だが中国の覇権拡大は、アメリカが世界の警察をしていることが前提だった。アメリカが世界の警察として各地に軍隊を介入させた。中国はアメリカの軍事介入を利用し、安全を確保して基地を展開した。

 だが状況が変わる。アメリカが世界の警察を辞めれば、世界各地のテロ・紛争は現地任せ。そうなると中国の一帯一路を守るアメリカ軍はいなくなった。世界の警察を中国が直接行うことになり、余分な軍事費が増えたことを意味する。

 中国が一帯一路を実行することは覇権拡大を意味する。覇権拡大には世界各地に軍事基地と人民解放軍の配置が必要。何故なら国際社会では軍事を背景に外交を行うことが基本。

 国家戦略=外交×軍事

 だから一帯一路と覇権拡大はワンセット。常時人民解放軍を世界各地に待機させ、テロが発生すれば迅速に軍事介入しなければ維持できない。アメリカは海路だけだったが、中国は陸路と海路を維持する必要が有る。これはアメリカ以上の軍事費負担が明白であり、アメリカ以上の対応数と負担は明らかだ。

■マハン海軍戦略
アメリカのアルフレッド・T・マハン(1840-1914)の海軍戦略は、海軍戦略の父と称されるポルトガルのアルブケルケ提督(1453-1515)以後の海戦研究に、クラウゼヴッツの戦争論を適用した。

マハン海軍戦略概要
1:有事・平時両用において行使する戦略であり「国益と不可分」。(外交の延長)
2:海軍の目的は海洋支配。作戦原則は目標を一つに絞り、全戦力を集中する。
3:海洋戦略の要素は、基地網+海洋戦力+海洋輸送力。(基地ネットワーク)

マハン海軍戦略論は海軍戦略だけではなく海洋国家の国家戦略論でもある。同時に世界各地の海軍軍人は必ず読む本となった。だから海路を用いた海軍戦略と国家戦略の土台と言える。

■欠落する海外基地
 中国は一帯一路に合わせて海外に基地を置いているのは事実。だが南シナ海に人工基地を建設したが、マレーシア・スリランカ・インドの基地配置が遅れている。

 中国はアフリカのジプチには建設したが、東アフリカに位置するケニアの建設が遅れている。これは一帯一路の海路を守る基地が相互支援できる態勢ではない。マレーシアからアフリカまで空白地帯が存在する。これでは一帯一路の海路を維持できないことを意味している。

 さらに基地展開は飛び飛びに行うのではなく連続して行うのが基本。そうでなければ相互支援できないし、敵勢力に後方連絡線を容易に遮断されるからだ。だから海戦用の基地配置は、常に相互支援できることが基本となる。

 基地が継続的に利用できることで、基地と人民解放軍はマハン海軍戦略で言う外交の延長として機能する。さらに基地ネットワークが存在することで、世界各地に展開した海軍を一箇所に集中できる。だが一帯一路の海路防衛は欠落が多い。

■二兎を追う者は一兎をも得ず
 一帯一路はアメリカでさえ実行しなかった、陸路と海路の防衛と基地展開。端的言えば、「二兎を追う者は一兎をも得ず」状態と言える。基地ネットワーク建設は時間と資金が必要で、アメリカでさえ30年以上の歳月を必要とした。これは海路に限定されており、陸路防衛は行っていない。それでもアメリカは30年以上の歳月を必要とした。

 中国は一帯一路実現に向けて動いているが、アメリカでさえ出来なかったことに挑戦している。これは必要な資金がアメリカ以上になることを意味しており、失敗が保証された一帯一路と言える。

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