蜷川実花が実現させた妄想の共有「ダイナー」

2019.07.05
本予告が公開された時から、そのトンチキとも言える映像に興奮が抑えられなかった
Diner ダイナー

あまりに楽しみだったのでもちろん初日に劇場へ。
結果、ドハマり。
この週末は毎日映画館へ通い、公開3日ですでに3回観たことに。

こんなにも一瞬でこの映画の虜になった理由はまず第一に登場人物のとんでもないキャラクターカ!!
とくに
藤原竜也演じる「殺し屋専用ダイナー」のシェフ・ボンベロ

窪田正孝演じる「孤独な殺し屋」スキン

は、もはや二大巨頭。

藤原竜也・窪田正孝、両者ともに素晴らしい俳優であることは既知の事実だがとにかくこのふたりの色気がすごい。
何も話さなくてもあの衣装着てメイクして立ってるだけでいいですと言いたい程。
今回もキャラクターデザインは前作「ヘルタースケルター」に続いて長瀬哲朗氏。
私はもともと大好きなスタイリストだったけど、今回の映画でのキャラクター造形が完璧すぎてもはや崇拝したくなった。

このボンベロの長い髪はボンベロのイメージ「侍」によるものだろうが私にはとてつもない色気と、殺し屋から足を洗ってダイナーで過ごしてきた彼の一年を感じさせたし、洗いざらしのシルクで作られたという袴のような厨房着、あまりにも腰のあたりがセクシーすぎない?
しかも袴パンツだからよく見えないけどマルジェラのTabiブーツに似ているシューズ…
(階段を降りるときの靴音すらセクシーに聞こえる)

それに対してスキンの人目を忍ぶような真っ黒の服装に、そしてこの髪型。
前髪から覗く狂気と優しさを湛えた瞳にいったい何人の女の子がフェチズムを刺激されたことだろう。
しかも素肌にアーミーベストとか着てしまってる場面がある。あまりにも90年代すぎない?
すでに見た目だけでこの素晴らしさ。

なのに映画を見てくれ。
監督:蜷川実花だから実現できましたともいえる理想の詰め込みオンパレード。
「お前の生死は関係ない」みたいなニュアンスのこと言ってたくせに、
「お前が眠るときも、死ぬときも、全ては俺が決める」とカナコの寝顔を見ながら言うボンベロ
(しかも演じるのが藤原竜也)

突然非日常な環境に置かれ精神的にも肉体的にもギリギリなカナコに、出会った瞬間から優しく接し、客に絡まれるカナコを救い、尚且つカナコの過去に寄り添い孤独を共有するスキン。
(しかも演じるのが窪田正孝)
蜷川実花監督はインタビューで「スキンには自分の理想を詰めた」と仰っていましたが、
これ、ハマらない女子、居る?

スキンももちろん素晴らしいけど私はもうボンベロにメロメロ。
自分でなんでも出来ちゃう男の人が、強い女の子に骨抜きにされちゃうお話、とても好きなので。
(ボンベロとカナコの関係性はまさにそれ)
そしてボンベロ・スキン・カナコの関係性があまりにも少女マンガ(というより、これは壮大な予算で作られた二次創作物)
劇中には過激な言葉が飛び交うのに、わたしはもうこの映画を胸キュンラブストーリーとしてしか楽しめないし、毎回新鮮な気持ちで悶えている。

さらにこれだけでは終わらない。
なんていったって蜷川実花。かっこいい男子だけでなく、かっこいい女子も出す。
真矢ミキ演じる無礼図はそれだけでもうかっこいいのに侍らせてるのが真琴つばさ。
男装の麗人、の中世的な魅力には抗いようがないものですが、真矢ミキ様パワーで服従するしかない仕上がりに。

終盤のボンベロと無礼図のアクションシーンはセット・カット・音楽まで全てが合わさって
最高潮に脳内麻薬が出ます。
アクションシーンで流れるドヴォルザークの新世界で、演出のトンチキさも相まって私は毎回頭のネジが飛んでしまいそうに興奮する。

そして圧倒されるのが画面の隅から隅まで施された過剰なまでの装飾。
壁画を始め至る所にある横尾忠則作品

生花装飾は東信

それに加えて蜷川実花だからこそともいえる暴力的なまでの色に彩られて、セットは巨大なインスタレーション。
とにかくどこを切り取っても、いい意味でも悪い意味でも目を引く。

正直に言うと映画のストーリーはマジでつまらない。途中から展開は読めるし結末も「まあそうだろうね」とも言える。
絵作りに注力しすぎて登場人物の関係性の描写は希薄で観客は置いてけぼりだし、結局のところ蜷川実花の写真集をストーリー仕立てにしてみましたよとも言える。

緻密な原作の実写化を望んでいた人からしたらかなり不満な部分があると思う。

でもこの映画はストーリーだとか、映画的カタルシスだとか、そういうことを楽しむものではない。
とにかく画面から与えられる情報量に身を任せてひたすらに楽しんだもん勝ち!
いかにこの世界観に埋没して脳内麻薬を出せるか!
あまりの画面からの情報量の多さに脳がショートするが、それでもやめられない中毒性がある映画は「HIGH & LOW THE MOVIE2 END OF SKY」以来。
(ちなみに私はEND OF SKYを劇場で一か月に11回観た)

完全に人を選ぶ映画ではあるが、一度ハマったら抜け出せないこの中毒性。
設定のアラが気にならない人、とにかくトンチキ演出が好きな人、かの少年漫画BLEACHが好きな人、早めに見て損はない。
私は多分Blu-rayも買います。

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