【読んでみました中国本】川崎有三「東南アジアの中国人社会」

「東南アジアの中国人社会」川崎有三(山川出版社)

「海と陸のシルクロード」構想によって、西へ西へと歩を進める中国。昔から良くも悪くも付き合いの続く東南アジアでは、我々の目にはよく映らない動きをしているようだ。折しも南シナ海裁定では、それをきっかけに「法の支配」をASEANで主張する日本に対して、裁定当事国のフィリピンの協力を取り付けたという話も聞かない。独特の協調策を模索する東南アジア諸国と中国のリアルな関係を知るには、まず現地と深い関係にある中国人たちを知ることから始めるべきではないか。

先月に続き、東南アジアの「中国人社会」についてのブックレット。個人的に東南アジア華人づいている。というか、8月末には日中韓3カ国外相会議が行われたし、9月頭にはG20、そして続いてASEANプラス3カ国首脳会議が行われた。そこで日本が一番主張したことになっているのが、南シナ海の領海裁定に対する「法の支配」である。ついでに先日、インドネシアで中国が発注した鉄道建設が予定を大幅に遅れているという報道もあった。こんな状態で中国の今後をウォッチングするのに、東南アジアづかずにいられようか。

中国は今や海外進出の軸足を東南アジアに向け、かつて西洋諸国が「最大の未開市場」と呼んだ中国を虎視眈々を見つめたのと同じように、東南アジアへの進出に期待をかけている。

前回の「読んでみました中国本」でご紹介した「中国は東アジアをどう変えるか」では、中国の台頭と海外進出が東及び東南アジアにいかなる影響を与えているかについて書かれていた。

この本には、そんな中国の東南アジア進出と聞くと、誰もがきっと頭に思い浮かべるだろう、東南アジアに浸透する華僑や華人社会についてその歴史や背景がまとめられている。だが、我々は「華僑」「華人」といった言葉以上にどれだけアジアに分散する彼らのことを知っているだろうか?

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