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夏のときめき

いまだに、忘れられない男の子がいる。

その男の子を気になり出した時期(もう五年くらい前のこと)私はその人をメモ帳に,”気になる人”と記載した。
単に名前を呼んだことがなくて,喋ったこともなかったからそうしただけだった。

去年の夏,自転車で隣駅まで走った。
暑くて暑くて溶けそうだった。
確か無印のワンピースを着ていた。
夏の植物が若々しい緑と,その匂いが生ぬるい風と一緒に過ぎ去っていったのが懐かしい。

トンネルを見つけた。
そのトンネルは青いタイルで装飾されていた。
ひんやりしていて冷たくて,さっきの暑さと比べると,ありがたいほどに冷たかった。
熱で膨らんだような私の皮膚が冷たい風に包まれて,落ち着いていった。少し下り坂で、自転車の回る音がトンネルに反響していた。意外と長くて楽しかった。
虫取り網を持った少年3人組とすれ違った。もう去年のことなので顔もどんな服を着ていたのかもわからない。だけど,少年3人とすれ違ったことはやけに記憶に鮮明だ。
トンネルを抜けて坂を登ってまた家に帰る時そのトンネルを通って帰った。帰りのトンネルは,坂道で立ち漕ぎしてもきつかったので歩いて登った。

こんなことをバイトの帰り道に思い出して,なぜか心がキュンとした。脳内で自分がその時のことをフィルム映画みたいに処理していたのかもしれない。だけど,それはそれでいいなと思った。

なんか,あの男の子を気になり始めた時に似ていた。どこが似てるんだろって考えたら,その男の子は夏生まれだった。
夏のキラキラした木漏れ日みたいに、いい感じに脳内に焼かれたた記憶が心に染み付いていて,いつまでも心に残っている。


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