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『君たちに伝えたい③朝霞、校内暴力の嵐から生まれたボクらの平和学習。』を読んで

大学の教職課程における授業で、本書を読む機会がありました。

著者である中條克俊先生の授業をとっており、先生は現場主義の教育について、私たち生徒にさまざまな教育方法をご自身の経験を踏まえて教えてくださいました。

授業はすべて終了してしまいましたが、今回再読という形で本書の感想を書き留めておこうと思います。

1.あらすじ

1981年4月著者が着任した朝霞の中学は、校内暴力の嵐が吹き荒れていた。「日本1の荒れる学校」だった。
窓ガラスは割られ、天井には穴、トイレはドアがない、
自転車やオートバイを廊下に乗り入れる……。
なぜ荒れるのか? どうしたらいいのか?
著者たちは、子どもたち、保護者、地域の人びとと向き合い、悩みながら考えた。
非行を克服し、学校を再生させた、一つの教育運動史であり、朝霞からの平和発信である。

Amazon商品ページ「本の説明」から引用

2.感想

まず、この本を最初に読んだときは、驚きの連続でした。

自分たちの世代では、校内暴力というものは起こったこともないし、周りの学校においてそのような事実を耳にしたことさえありません。
そのため、校内暴力があったという事実を知らない私たちにとって、この本の内容には大変驚きました。

廃墟の様相

例えば、校内で自転車を乗りまわす生徒、中学生だがタバコを吸う生徒、壁や窓を壊すのは当たり前、そんな状況の学校などまったくもって想像がつきません。

また、中條先生が朝霞二中に教員として着任し、最初にやった教育活動は、天井の張り替えであったという部分からも当時の荒れ具合が伺えます。

1983年当時のPTA会長は、学校の現状を「廃墟の様相」と表現しています。

「3年B組金八先生」第2シリーズより

クリーン作戦

そんな状況の中、1983年4月10日からクリーン作戦が始まりました。

その年の入学式において、保護者への教頭の呼びかけに続いて、PTA会長が新入生保護者を対象に学校の現状を説明、協力を呼びかけたのです。

現場の教員が疲れ、保護者が無力感に襲われて、地域全体にあきらめムードが広がっていましたが、「朝霞二中を建て直してこそ、わが子の立派な教育ができる」という発言が保護者の中からあがり、それが現場教員の救いの声となりました。

そして、学校とPTAか一体となって何ができるかを真剣に話し合うこととなり、「PTAの手で学校を再建しよう」、「PTAが中心になって学校の補修をしよう」、「生徒の暴力行為で疲れ切った先生方にPTAの力で一層ふるいたってもらおう」、「先生方には生徒指導、学習指導に全力を傾けてもらおう」という、PTAの多大な協力の姿勢がクリーン作戦始まりのきっかけとなったのです。

しかし、クリーン作戦は毎日行われるようになったが、すぐに問題行動が減るという即効性はありませんでした。

ペンキを塗っているとツッパリのボスがバケツを蹴飛ばして逃げていくこともあったそうです。

何も言うな、黙ってやろう、保護者の姿を見ていつかは気が付くだろうという考えのもとクリーン作戦を続けていましたが、ペンキを塗ってもすぐにイタズラ書きという毎日。

クリーン作戦により学校が綺麗になり、校内暴力がなくなるという結果の確実性も担保できない中ではありますが、保護者や教員はひたむきに学校再建へ向けて努力を続けている姿勢に私、自身大変感銘を受けました。

ある日、ツッパリのボスが…

そして、くじけずに続けていたある日、そのツッパリのボスが「俺も手伝う」と言い出し、ペンキ塗りを始めたのです。

一番のボスが動いたことは、学校再建に向け好転的にはたらき、学校が整備され、廃墟から普通の学校に近づいてくるとともに、生徒による校舎破壊が激減していきました。

土足もほとんどなくなり教室もきれいになったことで、暴力事件も4、5月をピークに激減していきます。

それだけでなく、教員にも活力が出てきました。生徒は着実に良くなっており、自発的あいさつの励行、授業妨害の減少、トランプ遊びもなくなり、生徒の表情は明るく、物事への取り組みが積極的になったといいます。

このような結果が見えない中でも決して諦めることなくクリーン作戦を継続していき、朝霞二中の再建を実現させた保護者や教員の姿勢からは、私たちも学ぶことができると思いました。

3.継続力の大切さ

私が本書を読んで学んだことは、継続力(諦めない心)を持つことの重要性です。
継続力の重要性は自分自身理解はしているつもりですが、この本を読んで改めて継続力の重要性に気付かされました。

結果というものは、すぐに現れるわけではなく、毎日のコツコツとした努力が必要不可欠です。

身近な例でいうと、ダイエットで低カロリーな食事を続けても、体重がすぐに減少するわけではありません。
また、運動をすると筋肉量が増えるため、体重の減少が実感しにくくなることもあります。成果は階段状に現れてくるものであり、一気に劇的な変化を求めることは健康的なダイエットにはならないと言えるでしょう。

同様に、語学学習においても毎日の不断の努力が必要です。
単語を覚えたりリスニングをしたりしても、すぐに成果が上がるとは限りません。
しかし、毎日継続的に学習を行うと、ある日突然英語が理解できるようになることがあります。

何が言いたいかというと、朝霞二中の再建を実現させたように、結果が出るまで信じ続けることが重要であるということです。

努力の成果は段階的に現れます。

山登りにおいて一生懸命足下を見て登っていても、どれだけ登ったかは気付きません。

しかし、ある時ふと後ろを振り返ると絶景が広がっている。

気付かないうちに着実に確実に一歩ずつ前進していたのです。

不安になることもあるかもしれないが、やっていることが間違っているわけではありません。

自分を信じて、結果を信じてコツコツと努力を続けることが重要なのです。

おわりに

最後に、私の好きな名言を紹介します。

「成功とは成功するまでやり続けることで、失敗とは成功するまでやり続けないことだ」

パナソニック創業者 松下幸之助さん

私はこの言葉に高校生の頃出会い、多くの場面で私を救ってくれました。

一度や二度失敗してしまっても、「まだ成功していないだけだ」と考えることで、とても前向きな気持ちになれました。

この本を読んで、朝霞二中の保護者や教員のように、諦めないで毎日コツコツとやり続けていく姿勢を今後の私の人生でも実践していきたいと思いました。

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