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酒に溺れる今日も貴方に会いたい

ソウルにいる貴方に、私は今日も会いたくて涙を流しています。

私のライターを奪ってタバコに火をつける貴方の姿、私のタバコに火をつける貴方の姿、すべて鮮明に思い出せる。貴方と一緒にタバコを吸ってから、私はタバコに火をつける度に貴方を思い浮かべている。両国共にウイルスの影響で事実上の入国制限、本来なら私たちは月に1回、順番にお互いの国を訪れて会えていたはずなのに。だから私は金曜日に1本吸ったきり、もう10日もあなたを考えないようにタバコを吸っていなかったのに。

永遠の愛とか、国境を越えた愛、遠距離でも続く愛があったらいいな、それくらいに考えて今まで生きてきた。それくらいの思いで今まで恋愛をしてきた。傷つきたくなくて、苦しみたくなくて、過信しないように、自分が有利であるように、必死に自分を守りながら恋愛してきたのに。

「最近いつも電話は俺からだね」

「もう俺のこと嫌いなの?」

そんな風に泣きそうな声を出さないで。貴方の気持ちを信じたくなる。本当にあなたが心の底から私のことを愛していて、私とあなたが同じ思いで、私たちは海の向こうにいるけれど、世界的に猛威を奮っているウイルスのせいで会えないけれど、愛し合っていると。信じてしまいそうになる。

彼に会えないまま2カ月が過ぎた。今日で私が彼を好きになってから120日。彼と東大門市場のバス停で、3月19日に日本で会おうと約束してから65日が経過した。彼が日本に来ると約束した3月、私が韓国に行くと約束した4月23日、どちらも過ぎてしまって、私たちはお互いの国での生活を取り戻した。

電気系の仕事を退職した彼は2カ月の無職期間を経て、起業し忙しい日々を送っている。対する私はアルバイトと契約社員、インターンの3つの仕事を掛け持ちしていたが、コロナの影響で仕事を2つ失った。

新規感染者が連日一桁に減った韓国と、未だ東京都だけでも3桁の新規感染者を記録する日本。ソウルと東京、今まで感じたことのない、果てしない距離を今になって身に染みて感じた。飛行機で片道2時間弱、それでもパスポートは必要で、今となってはビザも必要だ。何より私と彼は言語においても私が妥協していた。どんなに愛する人でも所詮外国人だった。

貴方と私が一緒に居るためには、どちらかが妥協しなければいけない。貴方は日本語が話せないから、韓国語の話せる私が韓国に行くのが現実的だよね。でも、私は記者として、ライターとして、死ぬまで文を書いて、発信し続けたい。海外在住の日本人ライターはむしろ需要があるかもしれない。そんなことを真剣に考えてみるくらいには貴方のことが好きです。

貴方は、私が貴方を愛しているよりも、貴方の方が私を愛しているなんて言うけれど。そんなこと、当事者に限らず、誰にも分からないけれど。私はこの恋で傷つく準備は出来ました。今まで貴方の愛を信じられなくてごめんなさい。私も貴方を愛しています。


あとがき:こんなに恥ずかしげもなく「愛してる」って言葉を使うなんて、私も韓国の恋愛にすっかり適応してしまったな…(笑)​


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