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毎日の「ありがとう」としてすべきこと -お弁当箱は水に漬ける-

私は強豪と言われる中学校のバスケットボール部に所属していた。
月曜以外は部活がある、といっても放課後練習がないだけで朝練はあるし、土日は練習試合や大会でほぼ毎日朝から夜までバスケ三昧であった。
今では考えられない程厳しい環境の中で、よく3年もバスケを続けていたよなと自分でも感心する。

しかし、私の母はもっともっと大変だった。母には土日の大会・練習試合等を含めて、毎日お弁当を作ってもらっていた。
「タッパー2ℓ、ご飯もおかずも隙間なく」が部の決まりであったので、毎日重い2段弁当を作ってくれていた。本当はでかいタッパー1つにご飯もおかずも詰めるのが部の決まりだったのだが、「ご飯におかずが染みてしまう」ことを予防するためにタッパー2つで作ってくれていた。

しかも朝練がある日は、私は朝5時に家を出発する。
新聞配達もしていた母は朝4時に起きて作ってくれていた。

朝起きたら電気のついたリビングには誰もいなくて、朝ごはんとどっしり重めのお弁当が置かれている。朝は母とは顔を合わせることなく支度して家を出る。

10年近く前のことだから忘れていたけれど、今考えたら私は母にどれだけ鬼畜なことをお願いしていたのか。そしてそれを毎日してくれていたのか。

お弁当だけではない。

汗まみれの制服や練習着を洗って干してくれた。
練習中に飲むポカリの粉やテーピング用のテープを補充してくれた。
帰宅が夜9時半になっても夜ご飯を作って待っていてくれた。

「夜のお残り入れちゃってるから」
「冷凍食品多くてごめんね」
食べ物が入っているだけでありがたいのに、いつも私が好きなもの・栄養があるものを入れるよう工夫してくれていた。

自分が軽い気持ちでバスケ部に入ると言わなければ、こんなに母を巻き込まなくて良かったのに。時々とても申し訳なくなってしまう。それに毎日バスケばかりて遊べもしない、家族と居られない、勉強も思うように出来ない。家族を不幸にしてるように感じられて何度も何度も辞めてしまいたくなった。

そんな私に母は
「そう思うなら、弁当を水につけなさい」

申し訳なさやありがとうなどの気持ちを行動で示すことを教えてくれた。

こんな事は誰かからしたら当たり前で、言われなくてもやるべき事なのかもしれない。むしろ母は最低限の事だけを私にやるように言ってくれたのかもしれない。

帰宅したら「お弁当作ってくれてありがとう」と流しにからのお弁当を開けて、タッパーがいっぱいになるまで水を入れる。
汗まみれで臭い練習着を洗濯機にぶち込む。溜まっていたらまとめて洗う。
ご飯を食べてお風呂に入って制服をハンガーに掛ける。
明日の準備をして寝る。

毎日やってくれると、恩知らずにも忘れてしまうこともあった。
時々忘れてしまうこともあった。
たまに疲れすぎて甘えてすっぽかしていたよなあ…。空のお弁当箱を2セットシンクに置いてしまって注意される。

それでも辞めてくれなんて一言も言わず、
私を3年間支えてくれた。

バスケ部に所属して、忘れ物が多くて届けてもらう事もあったし、部内の雰囲気やコーチの気まぐれに振り回されて段々バスケを楽しいと思えなくなったりした。
それでも私が続けられたのは家族、母の支えのおかげ。

下手くそで弱っちい私を3年間ずっと応援してくれて感謝を行動に示すことを教えてくれた母に感謝している。

母というのは偉大だ。

私が母のような母親になれる自信はない。
でも同じくらいの愛を子供に注げるようになりたい。

振り返ってみると、バスケをしていたあの3年間で教訓やら後悔やら、大事なことをたくさん学んだ。それらは今の私の構成要素だ。

水漬けなんて、地味なことかもしれないけれど
大切な教えと記憶のひとつである。

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