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PR広報の業務をフルリモートで成り立たせるための10の心構え

「フルリモートでPRはいくらなんでも無理やろ」と思っているPR広報の皆さま、多いと思います。

私も以前はそうでした。PR会社→フリーで複数社兼任→スタートアップ広報とやってきましたが、東京を中心にいろんな場所に行って人と会うのはずっと必須でした。オフィスで社内の人たちと話すのも、PR広報の大事な活動のひとつ。人とコミュニケーションする仕事だし、完全に離れたら無理だよね……と。

これは全部そのとおりなんですが、昨年から4,000マイル離れたオーストラリアから、日本向けPR広報をやっています(PR広報だけではないけど、わかりやすくいうとそれがメイン)。

今の“在宅”の状況に合うかどうかはわからないけど、フルリモートでPR広報をやるための具体的な心構えとTipsを紹介します。

はじめに:PR広報をリモートでやる難しさ

PR広報の仕事がリモートで困難なのは、人とのコミュニケーションがほとんどを占める仕事だから。

メディアの人と会うのとか毎日だし、現場での取材もたくさんあるし、取引先・ユーザー・関係各社と会う機会も多い。イベントやミートアップも行かなきゃだし、社外交流(飲み会とか)もけっこう大事。対社外・社内ともに、人と直接会えないことが死活問題な職種ナンバーワンだと思います。

その点で、「フルリモート企業の広報」というのは悲劇だなとかつては思っていました。だって自社がフルリモートなのに、広報はその恩恵に預かれないから。オフィスがなくても、特定の場所でのアポや取材はあったはずです。

とはいえ私自身も、ほとんどはリモートでいけてるけど「フル」まではたどり着いていないという状態が2年ほどだったので、これをフルにもっていくには今までにやってきたPRの枠組みを一旦崩して、力をどう活かせるのか再編成していかないといけないな、と思ったのでした。

従来の仕組みのままリモートでやろうとしてもむりで、リモートにはリモートにあわせて最適化すべきところがたくさんあって、それも含めてPRパーソンの仕事と考えるのがポイントでした。というか、コミュニケーションに関わる部分はすべてPRパーソンの仕事と捉え直すことで、フルリモートでPR広報は不可能ではなくなる!ということで試行錯誤が落ち着いたので、偉そうに気づきをシェアします。

言語化スキル(特にテキスト)を磨く

リモートワークは、高い言語化スキルのもとに成り立ちます。対面コミュニケーションの機会が減る分、伝えたいことを的確にテキストで表現できないと、進むものも進まない。

PRパーソンにとって言語化力が大事だよ〜、文章も書けないといけないよ〜、というのが昨今の風潮ですが、リモートだとここが倍くらい大事になると思います。

初っ端から厳しいですが、これはもう磨くしかないです。対面打合せをなるべく減らして社内外のあらゆることを円滑に進めるためのコミュニケーションのベースになるので、もう逃げられないと思って鍛えましょう。

プレスリリース等はG Suiteでテンプレ化

PRパーソンにとって「プレスリリース」の作成はやっぱり欠かせない業務です。私もプレスリリースは全然自分で書きますが、よほどの事情がない限りGoogleドキュメントで作ります。各社のテンプレを最初に作ってしまい、それを毎回流用します。

スタートアップだとこの方法はもう普通かもしれませんが、まだWordやPowerPointで「20200404_製品Bプレスリリース_営業部確認済み_田中修正_修正2」みたいなファイルをメールで行き交わせている会社はたくさんあります。1本のリリースに複数部署が関わる場合、たらい回しになってどれが最新ファイルかわからなくなったりしますよね。オフィスで確認中の人のデスクまで行って「すみません〜あのプレスリリースの確認っていかがですか」とやったり。

この作成フローでフルリモート化はまずむりなので、Googleドキュメントで全員が並行確認ができる体制をつくります。私は社外確認が必要なものもGoogleドキュメントにしてしまいます。PDF化して手書きで修正が戻ってきたり、赤字の色付けや黄色の色掛けだらけになることもありますが、慣れていないだけなので、丁寧に続ければやがてこのほうが便利なことに気づいてくれます。ちなみに正解は、「提案モード」で修正してもらってPR担当が承認です。

私はもうスプレッドシートもスライドも含めてGoogleに完全移行していて、フルリモート時代にはわりと必須なので、これを機に導入をおすすめします。

メディアリレーションズ活動を主軸に置かない

フルリモートで一番のハードルがメディアリレーションズだと思います。

私は海外にいるので、基本的にメディアの方に直接会うことができません。これは明らかにハンデなので、もうあえてメディアリレーションズに比重を置かないようにしています。

もちろんメディア掲載を攻めの姿勢で獲得していく大切さはわかっているし、東京にいたときは散々やってきました。ですが、ゼロからアポを取ってキャラバンして自社紹介をして……という活動自体がもうちょっと時代に合いません。

やる価値はあるけど、コストパフォーマンスを考えると、その分の時間で自社コンテンツを充実させたり、オンライン上で密なコミュニケーションを取ったりしたほうが、結果いいような気がします。フルリモートにはフルリモートならではの攻め方があるということで、優先度を考え直します。

取材対応にリモートで同席することも可能

とはいえメディアさんと接すること、取材対応をすることは普通にあるのですが、オンラインでの取材同席はわりといけます。

取材を受ける人には、事前に取材シートを作って共有し、回答する内容などをすり合わせておきます。写真や映像を取る場合は、前もってオンラインで現場を確認して指示することもあります笑

今の状況だと現場取材自体が少ないと思うので、PRパーソンがオンライン取材を提案・調整してみるとよいと思います。日本のメディアのアナログ具合は半端ないので、むしろPRパーソンがリードして変えていく気概がいいんじゃないでしょうか。

コミュニケーションツールはすべて使う

基本的に、オンライン会議ツールやチャットツールなどはすべて使います。

「弊社はZoomがビジネスプランだから」という場合も、PRパーソンに限ってはWherebyもGoogle HangoutもSkypeも使えるほうがいいかなと思います。「仕事のやりとりはMessengerに集約したい」と思っても、相手がLINE派だったら合わせます。唐突な電話も大歓迎!にしましょう。

あまりこだわらず、相手にあわせてコミュニケーションツールを使い分けたほうが、フルリモートでも円滑にコミュニケーションが取れますよー。

社内ドライブの整理もPRパーソンの仕事

そうそう、フルリモートになるとPRパーソンの業務範囲って増えるんですよね。

リモートで連携する場合、共有フォルダ=みんなの脳内、になります。会議でホワイトボードを使ってディスカッション、日頃のおしゃべりの延長でなんか決まってた、みたいなことが消えるので、ドキュメントにすべてが落とし込まれている状態が理想です。

フォルダ内の状態がコミュニケーションを定義するようになっていくので、もはや社内ドライブを整えることは「社内広報」「インナーコミュニケーション」「ノンバーバルコミュニケーション」の領域だと私は捉えています。

Slackのオフィス化もPRパーソンの仕事

これも増える仕事で、「Slack=オフィス空間」と考えて活性化させていくこともインナーコミュニケーションのうち。

リモートでうまくいっている企業というのは、ほぼ100%Slackの使い方が上手です。「事件は現場で起こってるんだ!」の勢いで「仕事はSlack上で起こってるんだ!」という感じ。

弊社Slackじゃないんだけど……という人は、、、正直もう厳しいです。なんとか頑張って、この社会の状況を説得材料に使ってでも、Slackにしたほうがいいと思います。(いろいろ事情はあると思うから知らないけど)

オフィスがないと、何気ない会話を拾って記事ネタを考えたり、噂をなんとなく聞いて次の発信情報を見極めたり、雰囲気を察して立ち回ったり、というPRパーソンの特技も発揮しづらくなります。

ちょっとしたお役立ち情報やどうでもいい話もSlackに上がってくるように、チャンネルを作ったり名前を工夫したり、積極的に会話を促していったりするのは大事です。まあ私もそんなにできてないんですけどね。

自社の発信チャネルを整備する

PRは、それぞれの文脈で第三者に語ってもらうのが基本であり、最終的に目指すゴール(スタートかも?)。

……なのですが、それにつながる活動として、今までの対面コミュニケーションやメディアリレーションズが弱まり、ソーシャルメディアやオウンドメディアのプレゼンスが高まってきます。

Facebook、Twitter、Instagram、メルマガ、blogやnoteでのオウンドメディアなどの自社の発信チャネル、案外パーフェクトに整っている企業のほうが稀です。フルリモートでPRをやるならこれらの充実と最適化は必須で、全部やってるとけっこうな業務ボリュームになりますよね。

雑談力をここぞとばかりに発揮する

フルリモートだと会議が基本的に「オンライン会議」になります。ここで雑談力を発揮して、チーム内でも社外とのミーティングでも、ちょっと和やかにしたりする役目は積極的に担っていくといいと思います。

私の場合はオーストラリアにいて気候が真逆だったりするので、天気ネタは鉄板です(あまり面白くはないけど)。最近はコロナ対策が日本と違うので、「聞いてくださいよ〜。今こっちスーパーしか空いてなくて、3人以上で外出してると$1000罰金なんですよ。ポリスが巡回してて容赦ないっす」みたいなことを言って、間を繋いでます笑

他のメンバーがオンライン会議に慣れてないと、全員揃うまでに気まずい沈黙が流れたり、誰かが離脱したときに手こずって会話が途切れ途切れになったりしてしまいます。PRパーソンならきっと柔軟な対応ができると思います!

社内でリモートおしゃべり会をアレンジする

上と同じくですが、フルリモートの場合、とくに目的のない座談会みたいな雰囲気の会をたまに開くのもおすすめです。

社内コミュニケーションが減っていくと組織は必ずバランスを崩すので、PR広報が率先してアレンジするといいと思います。社内だったらまずは4人くらいからがいいかな。事業会社の広報さんはもちろん、PR会社の人やフリーランスのPRも、クライアントさんとやってみるといい感じです。

とはいえ急には難しいと思うので、まずは通常の会議のアジェンダに「最近どう?(10分)」とか入れてみるのがおすすめ。

会社トップと仲良くして、PRマインドを刷り込む

リモートになればなるほど大事なのは、会社のトップ(CEOや経営陣)とコミュニケーションを密にして、PRマインドを刷り込むことです。

降りてきたことを発信するだけのPRであるほど、フルリモートでやるのは難しいのです。できれば経営会議や事業企画から入れるように、頑張りましょう。そこでなるべく「PR的には〜」という考え方を出し、こまめなインプットを行います。

そして逆に、会えなくてもトップの感覚を汲み取り続けることもかなり大事だったりします。私は「インストールセッション」を定期的にお願いして、シャチョーさんが今何を考えているのか、アタマのなかをバラバラっと曝け出してもらい、自分の脳内にインストールしたりしています。

けっこう時間も労力もかかるのですが、これの意義をわかってくれる経営者さんじゃないと、そもそもリモートに関係なくPRはやりづらいです。そこが難しさですね。

まとめ:フルリモート化でPR業界がもっとよくなるといいな

ここまでやってフルリモートでPR広報が機能しないとしたら、あとは相手の問題です。どんなに頑張っても相手がリモートに抵抗があったり協力姿勢がなかったりすると、できないので、今まで私はどうしても相手を選ばざるを得ませんでした。

だけど世の中が変わろうとしています。

在宅ワークは今だけ……これを乗り切れば……と思っているかもしれないけど、実はこの状態はずっと続くので、これをきっかけにPR業界も変わっていくときだと思います。

特にPR会社×オールドメディアの旧体質はけっこうしんどくて、未だに社内コミュニケーションがメールのみ、FAXでやりとりが必須、固定電話がないと生きていけない、とか普通にあります。だから都や国の記者会見もいつまでも密室空間に集めるし、テレビ局がロックダウンすると報道が止まります。

何かと「オフレコ」が物を言う世界なので、フルリモートになると困る人もいるのは事実だけど、そういうのも含めて健全になったらいいな。

自分の仕事がどうとかいう狭い問題じゃなくて、PRパーソンとして主導して、リモート化を進めていくべきかもなと思いました。だからフルリモートになってしまって困っているPRパーソンや広報さんがいたら、ちょっと話を聞いてみたいと思ったりします。オンラインで会いましょう〜。

おわり。


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