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【全訳】Whereby(旧appear. in)リブランディングストーリー

オンラインミーティングツールのWhereby(旧appear.in)が、12月4日(水)、スタートアップ業界でも稀に見る大規模なリブランディングを発表しました。

Whereby(旧appear.in)は、ノルウェーのオスロに拠点を置くスタートアップ。ブラウザでアクセスしURLを共有するだけでビデオ会議が行えるサービスを展開しています。チームが始動したのは2013年で、日本ではここ1〜2年で、リモートワークに寛容なスタートアップやフリーランスなどを中心にユーザーが増えています。※日本語対応はしていません

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appear.inからWherebyにネーミングを変更したのは2019年8月。ビジュアルはそのままで展開していましたが、段階式でこのたび新ビジュアルを解禁しました。これまでのグリーン&ピンク(レッド?)のシンプルなものから一転して、おとぎ話から出てきたようなポップでシュールな世界観になっています。

このリブランディングに関して、公式のMediumに英語で記事が上がっていました。個人的にとても素敵だと感じ、日本のユーザーにもぜひ背景を知って使ってほしいと思っていたら、記事の著者でWhereby Co-founder & CPTOであるIngrid Ødegaard氏に許可を頂いたので、全文訳を掲載します。

※どこかのメディアに掲載すべきかとも思いましたが、元記事がMediumであることやスピードを考えて、僭越ながら個人noteで掲載しますことをお許しください
※私はスタートアップのPRやコーポレートブランディングに関心がありライターもやっている通りがかりの者です
※タイトルでappear.inと書くとSNSシェアでリンク化してしまうのでスペースを空けています

原文 Introducing a new look for Whereby | Medium

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【以下全訳】

今年の8月、私たちはappear.inのプロダクト名をWherebyに変えることを発表しました。そして今ついに、新しいブランドアイデンティティとビジュアルプロファイルを発表します!

Dec 4 · 7 min read

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フレキシブルワークを追い求めて

2013年にチームがスタートしたとき、私たちはノルウェーのオスロに拠点を置いていました。しかしその後、何人かのチームメンバーが、それぞれのライフステージの変化により引っ越さなければならなくなります。優秀で大切なメンバーを失いたくなかったので、私たちはなんとか上手くやろうと、距離を超えて一緒に働く方法をいろいろと試すようになりました。

すぐにリモートワークがもたらす様々な課題に直面しました。言い換えれば、この経験こそがカスタマーの気持ちを理解し、自分たちのプロダクトによって解決しなければならない課題を明らかにするには素晴らしいものだったのです。

現在は、10箇所のロケーションに散らばる計25名のチームになりました。あるメンバーは大都市に住み、またあるメンバーは家族と一緒に小さな村に住んでいます。もし彼らが引っ越す必要があれば、仕事も一緒に移動します。チームメンバー、そして私たちのカスタマーにとって、仕事と場所を切り離せるようになることは、人生を変えられるほどの力があります。住みたい家に住め、通勤に使う時間は少なくなり、自然にもっと近づき、そうやって働く人の子どもたちは毎日おじいちゃんおばあちゃんの顔を見て育つことができます。チームの全員がフレキシブルワークによってもたらされる利益を大いに楽しんでいるし、未来の働き方は確実にこの方向に進んでいると信じています。

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働き方の変革

私たちが信じているのは、人々がベストな仕事をできるのは、彼らが幸せで意義のある人生を送れているときだということです。特にクリエイティビティに関しては、押すだけで生産的になれるボタンなどありません。内から湧き出るモチベーションや創作意欲こそが、仕事のクオリティを上げる鍵なのです。ベストな仕事をするために必要な環境は人それぞれ違うし、何が自分を突き動かしてくれるかは自分が一番よく知っているはずです。どこからでも働けるフレキシビリティによって、チームメンバーは働く日をコントロールできるようになり、仕事とプライベートのバランスを考えるストレスを減らすことができました。

最近の調査では、米国の63%の企業がリモートワーカーを雇っていることが示されています。アメリカ合衆国労働省労働統計局のデータによると、全労働者の29%が自宅で働くことができ、25%(3600万人)がときどき自宅で働き、57%が仕事を始める時間も終える時間も自分で決められるフレキシブルな働き方をしています。アメリカの交通機関に起きている変化を見てみれば、フレキシブルワークの普及をリアルに感じられます。最も伸びている通勤手段は、もはや「通勤しない」ことなのです。

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2010年〜2018年の通勤スタイルの変遷──アメリカの通勤者が普段使っている交通手段の変化
Source: https://www.washingtonpost.com/business/2019/09/28/fastest-growing-commute-is-no-commute-all/

フレキシブルワークは、人間の欲求を最優先することを可能にし、私たちの社会を根本的によりよいものにしていきます。1歳の子どもを持つ母親として、働く日や場所を必要に応じて調整できることの価値は私自身が誰よりも感じてきました。パートナーと私で体調を崩した子どもの面倒を見ながら、自宅から交代で重要なミーティングに参加することもあります。こういったフレキシビリティは、働く親だけでなく障害などでオフィスに来ることが難しい人にとっても、ワークライフをもっと包括的なものにしてくれます。

仕事と場所を切り離すことは、地理的なサステナビリティも実現します。たとえトラディショナルな古いタイプの仕事がなくなっていっても、地方の小さなコミュニティが生き残ることができるからです。アメリカ合衆国国勢調査局は、リモートワークは「アウトドアレクリエーションの機会が豊富な人口密度の低い州にとって、最も一般的な働き方になるだろう」と示しました(これは私たちのいるノルウェーのような場所にも関係することです)。ユタ州ではリモートワークを推進するプログラム work-from-home program を展開し、参加したワーカーたちの生産性が20%以上も上がったという試験結果まで出ています。

私たちのビジョン

個人同士のリレーションシップを通じて、ヒューマニティ=人間らしさを仕事に取り戻していくことこそが、知識経済のコアになると私たちは考えます。あなたがリアルな世界でやっている「一緒に働く」と同じ体験をビデオ越しに実現し、生活がある場所から働くという選択肢を持ってほしいのです。あなたがフォーカスしたい大切な場所にいられ、そして必要なときは瞬時にシームレスな繋がりを持てるように。

これが、私たちが「その人の人生が豊かになる場所で働き暮らす自由を与える」というビジョンを掲げる理由です。

Wherebyとして新しいブランドを築くにあたり、このビジョンはずっとコアにありました。

新しいプロダクト名称

ネーミングに関しては、カリフォルニア州バークレーにあるネーミングエージェンシーA Hundred Monkeysに協力を仰ぎました。1990年からビジネスにおけるネーミングを専門にし、会社名の決め方について書籍まで出版しているエージェンシーです。彼らと一緒に、私たちのミッションを体現する名前を導き出すべく、挑戦的かつ攻めたプロセスを経てきました。

新しいプロダクト名称であるWhereby(ウェアバイ)は「何かを成し遂げるための手段や方法」という意味で、ユーザーの共働を手助けするという私たちのゴールにとてもよくなじみます。ロケーションを表す“Where”と、近さを表す“By”という2つの単語のコンビネーションで、グローバルにも通用するシンプルで短いものです(私たちの製品は世界中のあらゆる国や領域で使われています)。Wherebyという言葉は日常で使われることのない造語で、人によってはフォーマルで学術的な印象を抱くかもしれません。しかしそれは、他にないユニーク性があり、私たちが独自の意味をもたせていけるということでもあります。

新しいブランドアイデンティティ

ブランドアイデンティティについては、同じくオスロに拠点を置くデザインエージェンシーHeydaysにお願いしました。私たちはWherebyを、あなたがどこにいるかに関わらず、必要なミーティングに参加することに集中してもらい、ストレスを軽減させるツールにしていきたい。今の時代、社会をよりよくしていくために、新しい働き方やサステナブルなソリューションが求められています。

こうした要素をすべて、デザインと色使いに反映しました。Wherebyの新しいビジュアルプロファイルは、穏やかな心地よさを与えつつも、創造力や好奇心を掻き立てるようにデザインされています。山のなかでチームビルディングを行うことが慣習化しているようなここノルウェーの地を拠点にするチームとして、自然のエレメンツも取り入れました。新しいプロファイルを創るにあたり、ファンタジーの世界、おとぎ話、童話、空想・夢想、そして詩的なイメージへと転換しています。

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インスピレーション段階で作ったイメージボード

書体のインスピレーションは、昔の人たちがコミュニケーションを取り知識をシェアする手段のひとつだった、古き良き紙の本たちからきています。テクノロジーは進化するけれど、人間らしいコミュニケーションへのニーズは、今までのどの時代よりも大きいかもしれません。メインフォントはRoslindaleをカスタムしたもので、フォントデザイナーのDavid Jonathan Rossがデザインしました。

Davidは私たちのビジョンを体現するかのように、マサチューセッツ西部のヒルズにパートナーと2匹の犬と暮らし、自分のビジネスを立ち上げてきました。過去にはThe Wall Street Journalのフォントデザインを手掛け、毎月新しいフォントが手に入るサブスクリプション型のフォントクラブも展開しています。Davidが私たちのためにOpenType機能付きのカスタムバージョンを用意してくれたことは本当にラッキーでした。“Whereby”と文字を打つと、自動でテキストがロゴに置き換わるのです。

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イラストレーションは、世界中を飛び回ってエキシビションやワークショップを開き、数々のクライアント(Le Monde, New York Times, Wired, Forbesなど)と働いてきたフランス人のイラストレーターデュオIcinoriが手掛けました。もはや昨今のSaaSカンパニーのデフォルトとなりつつある「フラット&シンプル」とは違うスタイルが欲しかったのです。

Icinoriの持つユニークで芸術的かつ、シュールレアリスムやドリーミングの遊び心を含んだスタイルは、好奇心をもって新しい未来への冒険を切り開きたいという私たちの思想にしっくりくるものでした。彼らのチームと一緒に、周りの環境や建造物などで冒険を楽しむように共働するキャラクターたちの世界観を創り上げていきました。ヒューマニティと穏やかさを感じられるように、色合いは自然からインスパイアされたものになっています。

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もし新しいイラストレーションを気に入り、オフィスに飾ってくれる方がいれば、ぜひポスター印刷用のデータ(PDF, A3 format)をダウンロードしてください。こちらからサインアップしていただければメールでお送りすることも可能です!

このイラストのように、私たちにとって2019年はまさに旅のようでした。ネーミングの変更に加えて、ドメインとブランドアイデンティティも刷新し、Webクライアントを書き換えて数え切れないほどの改善をし、新しいビジネスプランをローンチしました。何千マイルもの距離と6つのタイムゾーンを越えて共働し、あなたが輝ける場所でワクワクしながら働き続けることを促し応援できるような新生Wherebyを、ようやくお披露目することができました。そういった働き方こそが、「仕事の未来」を形作ってゆくはずです。

ユーザーの皆さんの経験や働き方もぜひ聞かせてください。コメントやメールで教えていただけたら嬉しいです。

Ingrid Odegaard, Co-founder of Whereby

原文 Introducing a new look for Whereby | Medium


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あとがき

あまり私自身の主観でバイアスはかけたくないのですが、少しだけコメントを……。

今回これを掲載するにあたり、Wherebyチームとコンタクトを取らせていただいたところ、日本人のユーザーもたくさんいると認識しているとのことでした。しかしこのリブランディングについてエゴサしてみると、日本人のユーザーからはこんな反応ばかりでした。

「(自動アプデで)知らないアプリが入っててびっくりした!」
「クリスマスキャンペーンか何か?」
「なんかアイコンに人がいるんだけどw」
「デザイン変わりすぎてて戸惑う、何かわからなかった」
「ただのビデオ会議サービスなのに、どこ目指してるの?」
「ロゴ変わったのは商標の問題で仕方なくらしいね」
「なんかダサくない……?」

か な し す ぎ る !

もちろん第一に、言語の問題はあると思います。けどせっかくユーザーがいるのに、こんなミスコミュニケーションが起きているのはあまりにも残念。Google検索してみても「海外発の無料ツール!Skypeより便利♪」みたいな感じで、数あるブログ記事のうちただのひとつも開発者の意図を汲んではいませんでした。

私はPR、Public Relationsのお仕事をやっています。メディアやユーザーなど各ステークホルダーと、地道で丁寧なコミュニケーションを通して関係を築いていくことを日々考えています。

特にここ2年ほどは認知フェーズのスタートアップに裏から関わらせてもらうことが多く、どんなプロダクトにも必ず想いやストーリーがあるということを強く実感してきました。もちろんお金儲け目的で起業する人もいますが、そういうプロダクトはすぐに消えていきます。別にエモくなくてもいいのです。きちんと伸びて市場に受け入れられていくプロダクトは、何かしらの原体験に基づき、課題を解決したいという熱いパッションを持ったものだけです。

実際のところのWherebyの日本市場規模はわからないし、ZOOM派が多いのかもしれませんが、少なくとも私の周りではけっこうみんな使っている実感がありました。そして私自身、海外からリモートワークをしていてチーム外の人と連絡することも多いので、相手がリモート初心者でも使いやすいWherebyにはとても助けられています。だから身近な人たちだけでも読んでくれたらいいかなと、勝手に翻訳をしてしまった。恩返しです。

最近は「いいモノを広める」というところに立ち返りつつあります。社会課題を解決するサービス、世の中をよくしていきたい人、ぜひWherebyを通してお会いしましょう👋 ではまた。

さらに書くための書籍代・勉強代に充てさせていただきます。サポートいただけると加速します🚀