見出し画像

放課後

暮れきった 

小学校の校庭で

ぼくはいま

サッカーボールを 大きく蹴った


薄闇の むこうには

どうしても名前の思い出せない

赤いキャップをかぶった 友達が

どこか うんざりしたようなしぐさで

バウンドしたボールを トラップする


次にボールが 帰ってきたら

もう遊びはやめて 

家に帰ろうと 言おう

しかし

気付けばボールは

薄闇からまた

ぼくの足もとへ 

素早く回転しながら転がってきていて

ぼうん という 

友達の ボールを蹴った音が

真っ暗な校舎に 遅れて低くこだまするのを

いらだたしい思いで またしても耳にする


しょうことなしにぼくは 

赤いキャップを憎々し気に にらみながら

本当にほんとうに 決別する思いで

もう一度

ボールを 大きく

大きく蹴るのだ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?