マガジンのカバー画像

洒落怖漢譯

31
ネットの日本語文章を漢譯していきます。
運営しているクリエイター

記事一覧

【洒落怖漢譯】二層幽室

譯文吾少時,居二層家。父母爲工作出,半晝不還。某日之暮,學訖而還,宅中暗昧。吾思母恐已在室,呼之,則自二層幽室有聲希微。上梯而呼,則復應。暗疑其聲,將入室,聞母之呼我於門口。吾去其室,反顧於梯之半,見戸間有人面蒼白視我。 書き下し文と語彙解説吾少き時,二層の家に居る。父母工作の爲に出でゝ,半晝還らず。某日の暮,學訖りて還る,宅中暗昧たり。吾母恐らく已に室に在りと思ひ,之を呼べば,則ち二層の幽室自り聲の希微なる有り。梯を上りて呼べば,則ち復た應ふ。暗かに其の聲を疑へども,將に

【洒落怖漢譯】岐阜廢屋

譯文岐阜山中有廢屋,此所謂妖怪所居,今爲無頼所玩而畫,故莫畏也。十五年前,三夫來試膽,畫於壁而拍照。他日,見照片,有婦鬼遍身戲畫,而瞋之。 書き下し文と語彙解説岐阜の山中に廢屋有り、此れ所謂妖怪の居る所なれども、今は無頼の玩びて畫く所と爲れり、故に畏るゝ莫し。十五年前、三夫來りて膽を試し、壁に畫きて拍照す。他日、照片を見れば、婦鬼の遍身戲畫ありて、之を瞋る有り。 ○無頼 ならず者。○試膽 肝試し。現代漢語を參考にした。○拍照 寫眞を撮る○照片 寫眞。○瞋 睨む。 各種リ

【洒落怖漢譯】婦頭

譯文坐列車時,望窗外,有婦人之頭舞天。驚而思此錯誤。他日,與友復坐,友望窗外,突謂曰:「見婦頭否?」果然非錯誤也。 書き下し文と語彙解説列車に坐したる時、窗外を望めば、婦人の頭の天を舞ふ有り。驚けども此れ錯誤なりと思ふ。他日、友と復た坐る、友窗外を望めば、突に謂ひて曰はく「婦頭を見ずや否や」と。果して然り錯誤に非ざるなり。 各種リンク參考元:短くて読みやすい怖い話【5】全10話 – 洒落怖 ショートショート の10 私の漢文アカウントはこちら:書くための漢文研究(@ka

【洒落怖漢譯】工夫拍照(原題:不明)

譯文富山縣氷見市有工夫曰安。安好照片,其所至無不拍照。左右念踰,許之以其功大。他日,安絶照片。知己問其故。答曰:「自數日前,毎照片有人面醜怪」知己請見,則答以可。其日,安觸電死。 書き下し文と語彙解説富山縣氷見市に工夫の安と曰ふ有り。安照片を好み,其の至る所拍照せざる無し。左右踰ゆるなりと念へど,之を許すに其の功の大なるを以てす。他日,安照片を絶つ。知己其の故を問ふ。答へて曰はく:「數日前自り,照する毎に片に人面の醜怪なる有り」と。知己見んことを請へば,則ち答ふるに可なるを

【洒落怖漢譯】陋屋(原題:不明)

譯文某夫騎車行於男鹿。將過一陋屋,驟雨,不得已入之。其窗破壁有孔,然中整頓,夫以爲有人居奧室,試呼,則應以怒聲曰:「何爲者也?」夫驚出去。反顧,壁門皆崩,柱斜而已。車亦枉而遍體鉎。 書き下し文と語彙解説某夫車に騎りて男鹿を行く。將に一陋屋を過ぎんとするに、驟雨あれば、已むを得ず之に入る。其の窗破れて壁に孔有り、然れども中は整頓せり、夫人の奧室に居する有りと以爲ふ、試みに呼ばへば、則ち應ふるに怒聲を以てし曰はく「何爲る者ぞや」と。夫驚きて出去す。反顧すれば、壁門皆崩れて、柱斜

【洒落怖漢譯】匠兒(原題:不明)

譯文昭和之初,匠家有一兒。兒爲五歳,始欲斧鑿。其父是以教之小鋸。兒半晝略知其法,得伐枝條。父不許子之獨身執鋸,而竊刎蜥蜴。父思未知善惡,奪而匣之。他日,父見兒振物,察此猫肢也。傍有其所解之體及大鋏。父甚疑懼,匣百刀而鍵,又藏櫃而封。其翌日,兒爲所剄。 書き下し文と語彙解説昭和の初,匠家に一兒有り。兒五歳と爲れば,始めて斧鑿を欲す。其の父是を以て之に小鋸を教ふ。兒半晝にして略其の法を知り,枝條を伐るを得。父子の獨身にして鋸を執るを許さず,而れども竊かに蜥蜴を刎る。父未だ善惡を

【洒落怖漢譯】丈夫目我而去(原題:不明)

譯文日方暮,某夫走於熊本縣大津市。經一旅宿背徑,聞女喚聲。夫驚囘顧,無乞命者。少選,丈夫自後門出來,目我而去。其夜,有來電不名,男留言曰:「視我耶?」翌日,隣人被害。 書き下し文と語彙解説日方に暮れんとするに,某夫熊本縣大津市を走る。一旅宿の背徑を經るに,女の喚聲を聞く。夫驚きて囘顧すれども,命を乞ふ者無し。少選,丈夫後門自り出で來たり,我を目して去る。其の夜,來電の名いはざる有り,男の留言して曰はく「我を視るや」と。翌日,隣人害せ被る。 ○熊本縣 。○大津市 。○少選 

【洒落怖漢譯】兄化(原題:不明)

譯文吾少時,遭怪奇。當時,兄弟竝牀倶就褥,父母在他室。某旦,兄不起。呼搖數輩而不應,肢體虚脱猶屍。出循屋中,父母不在。吾疑懼,以出徘徊近鄰,陰雨昏昧,諸窗無光,莫行路。還家,涕泣良久,父母現。 吾問曰:「何由至今不在?」答曰:「父固在此,母固在此」惑而安心。兄亦現來,然其貌也,眼凶,鼻高,頬痩,非兄所具。吾脅息甚。以往,無若此者,然兄貌不復舊。 書き下し文と語彙解説吾少き時、怪奇に遭ふ。當時、兄弟牀を竝べて倶に褥に就き、父母は他室に在り。某旦、兄起きず。呼搖すること數輩に

【洒落怖漢譯】背海(原題:不明)

譯文初夏,一夫與友車行海道。濱涯有群衆遊。夫睇之,頗覺違和,卒不悟。去濱,友貌僵,謂曰:「群衆皆背海,視我」 書き下し文と語彙解説初夏、一夫友と海道を車行す。濱涯に群衆の遊ぶ有り。夫之を睇れば、頗る違和を覺ゆるも、卒に悟らず。濱を去る、友の貌僵りて、謂ひて曰はく:「群衆皆海を背にして、我を視たり」 ○海道 海沿ひの道。○睇 横目で見る。○貌僵 顏が強張る。 各種リンク參考元:短くて読みやすい怖い話【4】全10話 – 洒落怖 ショートショート の5 私の漢文アカウントは

【洒落怖漢譯】狗齒馬站(原題:不明)

譯文廿二年前,就八高列車,將自寄居到八王子。自經折原,不停二鐘頭。吾異之。未嘗不以一鐘頭半到八王子矣。遂停一站,開門。吾思今不下,不知其所至。下車。 牌記狗齒馬。又記隣折原、厄身。狗齒馬、厄身,皆非此綫所有也。顧眄有碧燈照數丈,紫霞盈中天。臺上無口,環之列柵。氣漸寒,思留則當凍。車門將閉,以身強入。司機盻我。 車不復停。經心身後,所經站牌記蓋下。其後站記何故。其後者自窓下矣,其後者下矣下矣。吾慄然蹙縮瞑目。又三鐘頭,俄有光聞雜踏之聲,到小川町站。不欲復用此綫。 書き下し

【洒落怖漢譯】電視雜訊(原題:不明)

譯文吾友所曰。夜半,友寤,不得復眠。看電視,唯雜訊。須臾看之,其閃爍凝爲長髮女貌。友驚而眴則無貌。 書き下し文と語彙解説吾が友の曰ふ所。夜半、友寤むれども、復た眠るを得ず。電視を看るに、唯だ雜訊あるのみ。須臾之を看れば、其の閃爍凝りて長髮の女貌と爲る。友驚きて眴けば則ち貌無し。 ○電視[現] テレビ。○[現]雜訊 テレビの砂嵐。現代漢語ゆゑ日本語の音讀みは未だ定まらず。ひとまづ「ざふじん」とした。○須臾 少しの間。○閃爍 光がちらつく。明滅する。この場合、「爍」をラクと讀

【洒落怖漢譯】東尋坊(原題:不明)

譯文福井縣有岸曰東尋坊。其下奔濤巉峭,投身者多。因而吏爲建碑、牌,築間置電話。夫婦歴遊至岸邊,坐而望晩景。有人入間話。伺之良久,乃出走及岸投身。夫婦驚甚。夫沿岸歩瞰而不見,婦思告官憲事,入間把筒將按鍵,聞女曰死矣死矣。 書き下し文と語彙解説福井縣に岸の東尋坊と曰ふ有り。其の下奔濤巉峭あれば、身を投ぐる者多し。因りて吏爲に碑・牌を建て、間を築きて電話を置く。 夫婦歴遊して岸邊に至り、坐して晩景を望む。人の間に入りて話す有り。之を伺ひて良久し、乃ち出走して岸に及び身を投ぐ。夫

【洒落怖漢譯】杭州僧(原題:不明)

譯文吾群旅於杭州,詣山寺。堂屋羅列,伺其一屋,有物自像出。此肢甚長貌似僧也。一座莫之識。僧飛來眼前,問所從來以土語。此怪異,應則當害矣! 乃與傍人,倶指連山,相語景勝。僧終始面而謂我,而恬不應。 僧曰:「不能捕不我識者」反而還像。時有鐘聲,人僧聚讀經堂中。諸僧何呪? 然後去此,遭危難,而存得歸郷。三日後,電視漢地。時應則吾存否? 書き下し文と語彙解説吾杭州に群旅するに、山寺に詣る。堂屋羅列す、其の一屋を伺ふ、物の像自り出づる有り。此れ肢甚だ長くして貌は僧に似るなり。一座に

【洒落怖漢譯】笑婦(原題:不明)

譯文吾居公寓。某夜,爲檢點不得乘電梯,因上以梯。至三層,自下聞鞏音。板間瞰視,有婦笑貌躩歩追我。吾甚恐,走而入房鍵戸。 書き下し文と語彙解説吾公寓に居る。某夜、檢點の爲に電梯に乘るを得ず、因りて上るに梯を以てす。三層に至らんとするに、下自り鞏音を聞く。板間より瞰視すれば、婦の笑貌躩歩して我を追ふ有り。吾甚だ恐れて、走りて房に入り戸を鍵す。 ○公寓[現] マンション、アパート。○檢點 點檢。○電梯[現] エレベーター。○梯 階段。現代漢語では樓梯と云ふ。○鞏音 足音。○躩歩