2019 J2 M10 愛媛FC vs アビスパ福岡 マッチレビュー① 木戸プロ初ゴール! 理想的な前半と愛媛が抱えたジレンマ
前節、苦手な町田相手にお昼キックオフのホームゲームを落としたアビスパ。今節は、終了間際の失点でダービーを引き分けた直後の愛媛と、アウェイでの一戦。勝てば勝ち点で並びます。
両チームのスタメンとベンチメンバーは以下の通り。
目を引くユニフォームに、試合へ向けての準備が行われていることを連想させる写真。選手、チームのタグもそれぞれつけられており、愛媛FC公式のツイートのほうがフォロワーに与えている情報としては好印象です。
対してアビスパは事務的か。
あくまでこのツイート単体で比較したときですが。
さて、試合を見ていきましょう。
前節3センターバックでスタートしたアビスパは4バックに戻し、その前に城後と鈴木を平行に配置。前線には木戸が開幕節以来のスタメン復帰。4‐2‐3‐1の形を組みます。篠原は累積、石津は怪我(DAZN実況の情報)により不在です。
愛媛はお馴染みの3‐4‐2‐1。山瀬は守備的な中盤の位置で出ているのですね。彼と神谷をどれくらいケアできるかがカギを握りそうです。
ざっとではありますが、アビスパの各選手のベースポジションとボール保持時の動きを書き出し、愛媛と嚙み合わせてみます。
最終ラインに鈴木と城後を加えた6人で愛媛のファーストプレスのラインに対し数的優位を作り、ポゼッションから試合の主導権を握っていきます。二人セントラルハーフにいることで、アンカーを置くシステムの時よりも、選手の距離感を安定させやすく、横への運動量を軽減することができそうです。
松田、木戸、田邉の三人は流動的にポジションを入れ変え、アビスパのペースでボールを動かすサポート。
対して愛媛は、開始5分から10分程は、まず前に大きくクリアし、自陣からボールを遠ざけることを優先。愛媛なりの試合への入り方なのでしょうが、その狙いは、まずシンプルにリスクを回避すること。そして、毎試合不規則なアビスパのこの試合でのフォーメーション、戦い方を把握するための時間を作ること。とくに井原前監督とは戦い方やメンバーがガラッと変わっていますから、ピッチに立つ11名同士の力量の差を把握し、そのうえでボールの奪いどころ、ラインの設定を決定する判断要素を収集すること。などが考えられます。
アビスパもボールを保持しながら、相手の状態を確認し、臨機応変にゴールまでの筋道について共通認識を持つことができれば、ペッキア監督のイメージしているサッカーに大きく近づくと思います。
この試合では、偶然か狙い通りか、アビスパにとって有利なスペースがピッチにじわじわと。
上図の白い楕円のエリアでボールを動かしながら、高い位置をとる輪湖と石原を気にした愛媛のウイングバック5番と8番をつり出し、彼らの背後のスペース、図の暗くなっているエリアを活用するアビスパ。
時系列が前後しますが、アビスパの2点目はこのエリアに前向きで侵入したことから生まれます。
實藤ではなく石原が右サイドバックのスタメンなのは、篠原の出場停止により實藤をセンターバックで使わなければならなかったからかもしれませんが、サイドから押し込めることを想定し、より敵陣コーナーフラッグに近い位置で仕掛けていけるタイプの選手を選択したということであれば、スカウティングスタッフのレポートとペッキア監督の采配はお見事です。
愛媛はなぜサイドに生じたスペースをケアし、アビスパの攻撃に対応することができないのか。
問題はピッチ中央の部分にあります。
愛媛の3バックの前、かつ中盤の2人の後ろのスペース −図の白い台形のエリア– には、アビスパの4名の選手が断続的に侵入しています。
16番と33番は、それぞれ正面に立つ鈴木と城後へ圧力をかけるため、動きの矢印は前に向いているので、その後ろは空きやすくなります。
ここである程度自由に、ゴールを向いた状態でボールを触ることができるアビスパの選手。
16番の背後まで下りてボールを受けるヤンドンヒョン。
鈴木へのパスを警戒し自陣ゴールとは逆向きに踏み込む16番。
冷静にその逆を取るヤン。
慌てて近くの選手がチェックに行くよう指示する愛媛。
注目は完全にボールホルダー。
ヤンがいたスペースを駆け裏のスペースへ飛び出していく木戸。
視野外の動きに愛媛はついていくことができない。
14分。木戸のプロ初ゴールが決まりアビスパが先制。
右足の人差し指の関節に残る、浮き球とともに観衆すべての視線をも自分のものにした感覚は、 彼の記憶に残り続けるでしょう。
今日2回目のキックオフからわずか2分。前述のエリアでボールを受けた田邉のクロスに松田が頭で合わせアビスパに追加点。
その後両チームともにいくつかのシュートチャンスを迎えながら、ネットを揺らすことはなく前半が終了。
アビスパにとっては理想的な展開。
愛媛はもっとうまく守れたのではないか。そう感じるものですが、監督が選手全員に策を授けることができるハーフタイムまでは、あくまでピッチ上の選手個々が状況を判断していかなければなりません。
その個々の判断に迷いが生じ、後手を踏んだ愛媛。
先制点につながった、ピッチ中央のエリアでの福岡の優位性。
この図のように、仮に愛媛が一列重心を下げ、16番と33番ではなく、シャドーの7番と10番が鈴木と城後にアプローチしていたら。
アビスパの攻撃陣と愛媛の守備陣が交錯するエリアには愛媛の選手が7人。ここでアビスパが自由にボールを動かすことは容易ではありません。
しかし愛媛にはこうできない理由がありました。
まず、(おそらく)試合前のミーティングの時点でシャドーに任された役割が、中央に絞り福岡の中盤を見ることではなく、彼らの前に立ちセンターバックからのパスコースを塞ぐことであったこと。
もう一つは、重心を下げたとき、愛媛のウイングバックは福岡のサイドバックがボールを持った時、すぐに寄せられる距離にいないこと。
自分が行かなければ、シャドーが行くことになり、結果鈴木か城後がフリーでボールを受けることになる。しかし、自分が行けば、背後、3バックの脇にスペースを空けることになる。実際ここからアビスパの追加点が生まれています。
その矛盾を抱えたままプレーした愛媛は、意図した狙いを見せることなく前半を終えました。
当然、ハーフタイムを挟み、川井監督はこれに対する解決策を提示してきます。
形勢逆転となった後半...
思ったよりも時間がかかるので、続きは明日余裕があれば書きます。
#サッカー
#Jリーグ
#J2
#アビスパ
#アビスパ福岡
#愛媛FC
#ペッキア
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?