おねがい

第四話: ピーナッツの妖精からの頼みごと

初めての夜は、なんだか緊張してうまく寝れなかった。

「ぼくも結構繊細だから、きみが緊張してるのは伝わってるよ。ぼくのためにも安心してここに住んでもらいたいよ」

半信半疑だけど、別に悪いやつじゃないだろうし、向こうも歩み寄ってくるから、まぁこちらも少しは心を開こうかと思いだしてきた。


ピーナッツの妖精と一緒に住んで、2日で分かったことは、アイツはよく朝から口笛を吹いたり歌を歌ったりしている。よっぽど一人暮らしになれていたのだろう。もちこにとっては2階の自分の部屋まで、アイツの存在が主張してきているようでちょっと迷惑である。

時間があるときは朝食を作ってくれたり、夜ごはんを作ってくれたり、なんだかもてなしてくれる。まぁ、そこまでしなくていいし、そんなに距離が近くなりたくもないんだけども...。


ちょっとずつただのいいヤツなのか?と思い始めていた数日後の朝、ちょっぴり不愉快なオーダーが届いた。

「昨日太極拳のトレーニングで背中を痛めてしまったんだ。少し安静にしていないと。。嫌だったら遠慮なく断っていいんだけど、もしできたら背中に痛み止めのクリームを塗ってくれるかい?」


え、まじかよ... でもまぁ本当に痛そうだし...、しょうがないか...。

わたしもわたしで、断ればいいものの同情心が沸いてしまい、承諾してしまった。いやぁ、背中のTシャツの先にも茂みがあるとは思ってなかった。背中の毛がすごいわ。もちろん、不快感は1満点でしたよ。


後でアイリッシュの友だちに聞いてみたら、「そんなこと普通しないでしょ!笑」とのことで、やっぱりこの奇妙なピーナッツ妖精との同居話を半ばみんな楽しんでいるようだ...。


調子に乗ったピーナッツの妖精は、翌朝も同じオーダーをしてきた。


はい、もうもちろん断りました。

(つづく)


▼前回までのおはなしはこちらのマガジンにまとまっています▼

【アイルランドで最初に出会った妖精のおはなし】




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