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ワンオペ事務員⑤

キーボードを「カタカタカタッ・・・ッターン!!」と意味ありげに鳴らしまくって自己満足している人、またはその経験のある人はその場で挙手。
はーい、反省してください。

このように無意味に「仕事をしているふりをして満足している人」というのは未だに一定数存在する。

そして、副社長がそのタイプだった。

「ちゃんとして」のその先、では何をどのように確認したらいいのか。
書類があればそれらを精査したいところだったが、残念ながら納品書でさえ捨てているような会社である。

まともな契約書が存在しているはずがない。

契約書が存在していたとしても、ガサッとガサツにまとめられているのが関の山で仕分けなどされていようはずもない。

「これでよく契約内容が把握できているものだ」と思った。もちろん褒めてなどいない。これからの自分の苦労に想いを馳せては気が遠くなった。

そして、わたしが何を確認してリストをキレイにしたらいいのかと社長に確認したところ、社長からの指示は「副社長に聞いて」だった。

「契約書を確認して」ではなく、「副社長に聞いて」

これは、リストに転記するべき契約情報が「人間の記憶頼り」であることの証左でしかない。

しかしこの副社長、一筋縄ではいかない。
かなりのブラックボックスであった。

仕事をブラックボックス化する人間

馬鹿正直に正面から「時間を取ってください」「リストをキレイにしたいので情報をください」と言ったところで、この手の人間は自分の情報を正直に吐き出さない。

おおまかに理由は二つ。
「リストに載せずに自分の懐で温めておきたい案件」を抱えている場合。
「リスト化されては問題がある案件」を抱えている場合。
それらが複合的に絡んでいる場合。

副社長も一歩引いて見ているとどうやら「複合的ブラックボックス」と化しているようだった。その証拠に社長が少しでも副社長の持っている仕事に口を挟もうとすることを嫌がり、それは社長から「副社長の仕事を手伝って」と言われて言伝したわたしに対しての暴言として跳ね返ってきた。

その度に「社長に言われたから仕事の手伝いを申し出たのになぜそんなことを言われなければならないのか」と板挟み感を感じた。※これについてはまた別の機会にも書き添えたい。

なので、リストについても聞けども聞けどもノラリクラリとかわされ、きちんとした回答を得ることができないまま、副社長から別の急ぎの仕事を振られてしまい、ますますリストの整理はできなくなっていった。
副社長の急ぎの仕事は残業をしてでも終わらせていたが、それをやっていると社長からの依頼の「リストの整理」の優先順位は追いやられ、できなくなっていく。

それなのに社長からは度々「リストの整理」を持ち出され「急ぎじゃないけど」などと言われつつも急かされている感はあった。

ちなみに、これは入社して丸一か月くらいの時の事である。
まだまだ右も左もわからず手探りしながら毎日懸命にやっているような時期の上に他の事務員が入社してくる兆しもなく、わたしの心は徐々に折れ始めていた。


・・・つづく。

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