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「自由進度学習」、公教育で広がる。          学校は何から手を付けた?どうやって目的を共有した?             広島・廿日市市立宮園小での実践事例②

子どもたち自身が授業の進度を自由に決めることができる、“自由進度学習”
これに取り組む広島県廿日市市立宮園小学校では
教科書以外にも様々な道具を用意し、教室外の空間も大胆に活用しながら
独自の授業を展開しています。

展開に際して、まず何に取り組んだのか?
教材や学習環境は、どのように整えていったのか?
…など、文科省の有識者会議で共有された内容をお伝えします。

教員たちがまず取り組んだことは…

宮園小が自由進度学習に取り組み始めたのは、2020・2021年度に広島県教育委員会指定校として、『個別最適な学びに関する実証研究事業』を行うことになったのがきっかけ。

取り組みに際しては、教員間の《対話》を最も重視したといいます。
2020年当時、教員の間では「授業改善に対する意識が高い」(中谷一志校長)一方で、過度に丁寧とも言える指導をしてしまいがちな傾向があったそうです。
「転ぶ前に、杖を何本も渡してはいないか(という問題意識があった)。
それよりも、転んでから杖を渡す方が大切ではないか、と」(中谷校長)。

そこで

「主体的な学びとは?」
「“自立的な学び手”を育てる授業とは?」

といったテーマから対話をスタートさせ

  • 学びの主体は子どもたちである

  • 自己選択・自己決定の場面が必要

といった共通認識を醸成していきました。

全社の教科書を徹底研究

対話を重ねた後、実際に教員たちが《協働》する場面では教員たちを2つのチームに分けて、体制づくり。
教材の制作から学習環境づくりまで、すべて教員たちで手掛けたそうです。
教材については全社の教科書を比較し、各社に共通している要素を洗い出してコーナーづくりの参考にするなど、徹底して研究したそう。

校長が、実際にやって見せる

また中谷校長は、自身が働きかけたことについて次のように話しています。

「なぜやるか」を繰り返し伝え、対話する。
⇒「自由進度学習は目的ではありません。目的は“自立した学び手”を育てることです」

まず、校長自身が自由進度学習の授業を実際にやって見せる。
⇒「そういう校長の姿を見た教員に、チャレンジの気運が生まれた」

いかにベテランを動かすか

こうして中谷校長が、教員たちの“はじめの一歩”を後押しし
子どもたちの姿に手応えを感じた教員から、自由進度学習が宮園小に徐々に根付き始めました。

その過程におけるポイントは【ベテランを動かすこと】

自由進度学習のような新しい取り組みに対しては、若手教員が意欲的な印象がありますが、
中谷校長は「経験値が高いベテラン教員が動いてこそ、組織的な取り組みになる」といいます。
そのため宮園小では、まず2名のベテラン教員が先進校を視察。続いて若手教員、という順番で視察を行ったようです。

ここまでをまとめると、

  • 理念の共有……手段も目的化を防ぐ意識付けをしつつ、教員間で対話を重ねること。

  • 推進者の育成……“最初の一歩”となる教員、核となる教員などがいてこそ組織的な取り組みになる。

中谷校長はこのほか、

  • 伴走者の存在……子どもの学びを価値づけ、教材研究の深まりを支援してくれる存在。教育委員会など。

  • 環境づくり……自由に活動でき、教材・教具を配置したままにできるスペースの確保。

…などを挙げました。

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