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痛みから逃げた先は?


私は昔から傷つくことがあっても
自分の中に押し殺すような子供だった。


例えば、友達に酷い言葉をかけられた時も
泣きながら家に帰り
家の押し入れの中でしくしくと泣いているのだ。


家族が気づく時もあれば気づかれないまま泣き終わり、また日常に戻っていく。


傷ついたことを、傷つけられた人に伝えることも苦手だった。


大人になっても恥ずかしながら、自分のその癖は直っていないなあと感じる。


ぐっと気持ちを押し殺してしまう。
でもそれをその場ですぐに消化ができず
もんもんとしてしまう。

そんな自分が嫌だと思いながら
なかなか直せない、変わることができない。


だから、「気持ちを吐き出してほしい」とか
「胡桃はどう思っているの?」と
色々質問攻めされるととても苦しい。


そんな自分を投影しながら読んだのが
村上春樹さんの短編集の「女のいない男たち」の中の「木野」だった。


やめてほしいとか
傷ついたとか思ったことを言葉にしきれずにいるのは、それを伝えた時に揉めることから逃げたり、伝えた時の空気がとても嫌だからだ。

だから、言わないほうが居心地が良いと思っている。


でもそんなことはなくて
その間にも自分の心は少しずつ少しずつ蝕まれていく。
その場は良いかもしれないが、結局は悪い方に転がっていくのだ。


木野を読んでそんな自分を再度認識した。


昔の押し入れの中で静かに泣いている自分と
決別しなくてはならない。

そんな決意をした。


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