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“英語がわかれば、何処へでも行けるさ!”_“The Search”(1948)

フレッド・ジンネマン監督の初期作「山河遥かなり」より。
一言で言えば、チェコの裕福な家庭に生まれながら、アウシュビッツに入れられて、A24328の刺青を入れられ、恐怖の中で失語症となり、家族と離れ離れにさせられた孤児の少年の、「母をたずねて三千里」。

人間不信で獣のように生きていた少年に、アメリカ兵スティーブは優しく寄り添う。演じるのは、後の作品につきまとう「影」を全く感じさせない明朗活発なモンゴメリー・クリフト。
白眉は、スティーヴが「アメリカ占領下のドイツ」を生き延びるために、カレルに英語を、特にYES & NO を教え込むシーンだろう。

[Steve is teaching a young boy, whose name he does not know but has coined Jim, to speak English]
Ralph 'Steve' Stevenson: [to Jim] You have no idea how useful it's going to be for you to know English. You can go where ever you like. Everybody knows what 'OK' means. You can use English all over the world. Not, not just America: Canada, Africa, Australia, India. Even in England, they understand English... well, sort of.

日本語に安住する日本人にとって、半分はあたっている耳が痛い台詞
なのは置いといて。
後のジンネマン作品あるあるの堅苦しさはまるでなく、のびのびと人間が描かれているのが特長だ。アメリカは戦争による難民をどれだけ受け入れるのか?という問題提起もなされているのも、ポイント高し。

本作はアカデミー賞の監督賞、主演男優賞など4部門でノミネートされ、原案賞を受賞し、プラハ出身のイワン・ヤンドルに子役賞(特別賞)をもたらした。
しかし、当時、既に共産化が進みつつあったチェコスロバキアは、この少年がアメリカまで出向いて賞を受領することを許さなかった、皮肉。

現在、賞の像は、チェコの国立映画アーカイブに大切に保管されている。


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