1976年のF1世界選手権でのジェームス・ハントとニキ・ラウダのライバル関係を題材とした2013年の映画「ラッシュ/プライドと友情」から。「炎のランナー」と同じく、実在の二人の天才レーサーの「勝負」と「対決」のスリルを根幹に、ドラマを組み立てている。
史実は、歴代のF1チャンピオンのエピソードをまとめた上記の書籍「Formula-One-Champions-legendary-drivers」(Prime Readingで閲覧可)に譲るとして、
映画は映画で、気に入った台詞を紹介しよう。
まずは、ジェームズ・ハントのものがたり。本からその人となりを引けば、
intriguing 【形】興味[好奇心]をそそる[かき立てる]、興味ある、魅力的な、面白い、不思議な
rebellious 【形】 〔人や言動が〕従順でない、反抗的な
anticipation 【名】 予想、予知、予期、心算
utterly 【副】全く、完全に、徹底的に、すっかり
何か孤高の場所まで上り詰めるために走った、または、走る中で何かに上り詰めていくタイプのレーサー、と言うべきだろうか。
その異様な精神状態を、ジェームズ・ハント自ら独白するシーンより。
pathetic 哀れな, 痛ましい(pitiful);感傷[感動]的な. ... ((略式))〈努力などが〉まったく不十分な, 取るに足りない;救いようのない, ひどい, とても悪い
「狂気の沙汰ほど面白い」の境地、とはこのこと。
続いて、ニキ・ラウダのものがたり。本からエピソードを引けば、
何が何でも勝つために走った、あるいは、走ることで勝つ不屈のレーサー、と言うべきだろうか。(冒頭のモノローグが、それを象徴する)
1976年のシーズン、もニキとハントは戦い続けていた。
シーズン成績1位を独走するラウダとそれを追うハント。ドイツグランプリのその日は朝から豪雨でニュルブルクリンクの状態が悪かったため、レースを決行するべきかどうか審議が行われた。ニキは中止を主張したが、ハントは決行を支持し、最終的に予定通り開催されることとなった。
しかし、
ニキは重傷を負い、ハントは「レースを決行してしまった」ことを後悔する。
それでも、振り絞るように、ハントはレースを続ける。それをみて、ニキも復帰を決意する。このシーズンはハントに勝ってみせる、と。
まさにその、ニキ・ラウダの復帰戦:1977年5月の南アフリカグランプリ 開始前の二人のやり取り からの引用。
命の間際で俺が戦っている間、ハントがレースに勝ち続けているのを観た、それが俺をF1へと引き戻したのだ、
と言ってみせる。
そしてこれはニキからハントへの宣戦布告。二人のレースの決着の行方は、果たして。
二周引き離しての、ラウダの、執念の勝利。
本作の熾烈な二人のライバル関係は、最後、以下のモノローグで締められる。
「彼は、私が妬んだ唯一の男のままでいる。」
人間として生まれたからには、いちどは、そう思われたい台詞。
さいごに、本作の真髄を突く、劇中のニキ・ラウダの名言を引いて、本記事を終わろう。