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西部劇「ウィンチェスター銃73」_呪いの武器の、ものがたり。

妖刀村正はじめ呪われた武器、というものに、人は興味を掻き立てられる。

「ラスト・サムライ」で飲んだくれのネイサン大尉が実演販売に励み、なにより「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」でドクが、「荒野の用心棒」で名無しの男が、「ゴールデンカムイ」で土方歳三が得物とする「西部を征服した銃」、西部劇の代名詞といえる銃器が、ウィンチェスターライフル。

この映画は、そのとある一挺が呪われていく過程を描いたものがたりだ。

1876年7月4日(アメリカ独立記念日)、カンザス州ドッジ・シティ。父の仇を追うリン・マカダムは相棒のハイ・スペードと町に入る。リンは、父の仇がダッチ・ヘンリー・ブラウンの偽名を使っていることを発見する。
ウィンチェスターライフルM1873の特別仕様を賞品としたコンテストが街で行われている。二人は独立記念日の射撃大会に出場し、優勝賞品のウインチェスター製の名銃を競う。
流石は名うてのガンマン、勝ち残る二人。的を遠くしても勝負はつかず、投げ上げた穴あきコインの中央を射抜いたリンが優勝を決める。ダッチは不意を襲い銃を奪って逃走する。

一度ひとのものになったのが、不幸の始まりだった。千に一つの名銃ウィンチェスター。ころしてでもうばいとりたいやつは、いっぱいいるのだ。

千に一つの名銃ウィンチェスター、荒野を血で染める復讐の結末は?俳優ジェームズ・スチュワートの西部劇時代の幕開けとなった名作。
スタッフ
監督: アンソニー・マン
キャスト
ジェームズ・スチュワート, シェリー・ウィンタース, ステファン・マクナリー, ジェイ・C・フリッペン

NBCユニバーサル 公式サイトから引用

ダッチは武器商人ラモントとの賭けに負け、名銃を手放す。ラモントからシャイアンの族長ヤング・ブルへ、ヤング・ブルから酒場の女ローラ・マナーズの恋人で臆病者のスティープ・ミラーへ、ミラーからならず者ウエイコへ、そしてウェイコと手を組むダッチの手に再び戻る。
銃を手にした者が次々に死んでゆくという呪いのサイクルを軸に、次から次へと印象的なエピソードが挿入される。ヤング・ブルは「カスター将軍と戦った一族が手に取った由緒ある銃として」ラモントとの交渉の末銃を手に入れる、そのブルが率いる先住民にスティープ属するキャラバンが襲撃され何とか切り抜けたところ銃を拾う、そのスティープはウェイコに殺され恋人ローラを奪われてしまう、といった具合に。
リンとハイ・スペードは銃の行方を追い続け、結果としてダッチの跡を追い続けることとなる。

呪われた武器のせいでスティープ他無実の人間が命を落とす一方、呪いをものともしない悪運持ちもいる:ダッチとウェイコ、根っからの悪党ふたりだ。
このウェイコというやつ、終始ヘラヘラ笑い、楽しみながら人を殺し 、女性に厚かましく、悪知恵ばかり回り、早撃ちで、なにより、デバフを気にせず呪われた武器持ち。始末が悪い傍若無人なこのならず者に神経を逆撫でにされるのは、ローラだけじゃないだろう。

ともあれ、ダッチとウェイコの一味は悪党同士手を組み、金塊を運ぶ駅馬車の強奪を企てる。ダッチらが駅馬車の跡を追う一方、ウェイコはローラを連れてタスコサの町に先回りして駅馬車が銀行の前に到着するのを待つ。
そこへリンとハイ・スペードが間に合う。
ローラからスティープ殺害の事情を聞くや、リンは激昂し、ウェイコを力でねじ伏せる。彼の首を酒場のカウンターに押しつけ捻るのだ。優男ジェームズ・スチュアート演じるリンが数秒で制圧し 、痛めつけてくれるので、ローラと我々の溜飲もグッと下がる。

そうこうするうちに駅馬車が到着する。隙を狙って銃を取ったウエイコをリンは撃つ、しかしウィンチェスターライフルはいつの間にかダッチの手に渡ってしまっている。呪われた一品を手にするやトンズラこくダッチ。ローラをハイ・スペードに託し、リンはダッチの後を追う。


ダッチとは何者なのか。残されたハイ・スペードはローラに真相を告げる。ダッチはリンの実の弟で、やはりガンマンだった父親から教えを受けていたと。ダッチを岩山に追いつめ、リンは実の名マシューの名で呼びかける。因縁こそが、兄弟同士、リンとマシューの最後の戦いを盛り上げる。
岩山は凸凹が豊かで身を隠す影が多い、山の上から高精度のウインチェスターで狙うマシューの方が有利、敵を見上げる格好になるリンは不利だ。
だが、武器に頼るようなやつは所詮二流だ。重なる突起の間を見通す隙間を狙う、リンは間合いを見て慎重に追い詰め・・・ついに、リンの銃弾がマシューを捉える。
ローラとハイ・スペードの待つタスコサの町、そこに名銃ウインチェスターを携えリンが戻って来て…物語は幕を閉じるのだ。
呪いは消えたのか、この後銃は何処へ行くのか。それは誰にも分からない。それでも我々が願うのは、間違いなく「リンが天寿を全うした」ことだろう。


前半は名銃の行方ではらはらさせ、中盤はダッチとウェイコの畜生ぶりにひりひりさせて、最後はリンとダッチの恩讐の対決にどきどきさせる。
言及できなかったが、緻密な絵作り:あたかもリンの執念を象徴するかのような一面荒野、空と岩場の相克する画面構成、ダイナミックな馬の疾走、激しい殴り合い にも注目していただきたい。
西部劇の醍醐味の詰まった92分だ。

サムネイルはウィンチェスター社 公式サイトから引用


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