新人弁護士の雑記(3)

刑事裁判編です。この時期のことを書くのはあまり筆が進まないんですよね。いろいろなイレギュラーがあったから書かなくてはならないんですが。無理やり書いていきましょう。

1.楽しかった検察から一転

検察修習は端的に言って楽しかった。確実に仕事をしている感覚になったし、人と触れ合い、責任をもって何かを決断する。その生産的な過程が楽しいというのはなんとなく理解していただけるだろう。

しかし、裁判修習はそうはいかない。毎朝厳格な登庁時間に管理され、ひたすら裁判傍聴、起案、模擬裁判をこなすのだ。
しかも、我々が配属された部は当地でも有名な厳格な空気が漂う部であり、ワイワイしていた検察修習から一転、静かに黙々と記録を読みパソコンで起案をする。うーむ。これは、、、

さらにさらに、第二クールは異動時期が被る。この部では何と四人中二人が異動になっていたので、そもそもあまり打ち合わせや裁判が入らない調整がなされていた。そうなると煽りを食らって裁判がないあいだに起案と模擬裁判を入れこまれ、いきなり起案ラッシュ模擬裁判準備で事務作業しかした記憶が残っていない。。

模擬裁判は裁判官役だったが、タイトなスケジュールにより被告人質問から即日判決という厳しいスケジュールを組まされたので、こんなのどうやればいいんだァ~と足りない経験をアドリブでカバーするしかない感じで取り組んでいました。
模擬裁判では様々な機材トラブルもおり、裁判所中に迷惑をかけ、明らかに問題児として認定される我々。前述のように厳しい裁判官たち、さらに全く笑わず謎の怒りスイッチがある部長、彼らが被告人、証人役を担い、明らかに準備期間が足りない我々をあざ笑うかのような受け答えをする。それにつられて踊る弁護人役と検察官役。

最終的には明らかに検察官が立証足りていないのに、とっちらかった裁判をなんとか収めるためだけに有罪にする裁判官たち(私含む)。

事実上2日で模擬裁判は無茶です、、、

起案については厳しい裁判官方でしたのでビシバシためになる知識を教えていただきました。ここはかなり力がついたと思う。

裁判所はセキリュティ面からWi-Fiが通らないと聞いていたが、うちの部は普通に通っていたので、沈黙が流れる中、修習生同士でLINEで会話することでなんとか励ましあって地獄の起案月を終え、なんとか次の月へたどり着いたところで、我々の刑事裁判修習は終わりを迎えるのです。

2.突然の終了宣告

刑事裁判修習も半分をこえるか、というところ、4人中2人の裁判官が異動し、気難しい部長と新人左陪席と、我々が残る部屋。もはや気まずさは最高潮。新人裁判官のメンタルを心配し始めていたところ、異動してくる裁判官は産休明けでまだまだ来ず、傍聴する期日もなく。カタカタと起案をしていたあの頃。
にわかに世間が慌ただしい。感染症の蔓延により、ロックアウトが行われるという噂が立ち始める。

そういえば、先日弁護士会のセミナーでも濃厚接触者が出て出席していた修習生が自宅待機になっていたな。そんなに酷いのか、と思っていたらなにやら唯一残っていた部長の期日も感染症の影響で先延ばしに。もはや見るものがない。明確に法律上の日数制限がかかる期日以外は何もかもなくなった。
こりゃもう登庁する意味が無いな、と思い始めたところで、ついにロックアウトが宣言される。

そして発表当日に、我々の自宅待機が確定し、期間内に第二クールが終わるため、即日荷物をすべてまとめ、慌ただしい挨拶をして1ヶ月ほどで刑事裁判修習は急速に終わりを迎えたのである。

なんてこったい!結局傍聴できたのはほとんど事前打ち合わせ、裁判員裁判は同じクール全員で1つしかないという状態。流石にこれは酷い、、、と思っていたらのちのち司法研修所から研修が足りないという認識はないとのありがたいお言葉。そりゃあないぜよ。私裁判員裁判の量刑決める所しか見てないよ?

3.裁判所は人による

後輩たちのためにもう少し身のあることを書きたいとは思っていたが、無理だ。本当に思い出してみれば見るほど中身がなかった。そのためここからは雑談になる。

裁判所は各部事に詰所が別れているが、この部にどのような人がいるかでずいぶん楽しさが左右されるのはもはや言うまでもない事実である。我々は既に第一クールで刑事裁判だった者からここはヤバい。と言われる部であった。私は言うてもそんなことないだろうと思っていたが、確かにしんどかったと言わざるを得ない。特に裁判所のように部長、右左とキャリアに差があると部長の空気が部屋を支配する。

そう、部長が世界の中心であった。部長がすべてを決める。こればっかりはもう運である。そういう部に配属された場合はいかに働く際のストレスを減らすかを工夫すべきであろう。異動の度にこのガチャを引くことになる裁判官は大変だろう。ただし、良い部に行けば相当楽しい仕事だろうな、というのは後に民事裁判修習で実感することになる。
そう、すべては人なのだ。職場環境は人に左右されるし、それを自力で変えるのは難しい。選択肢がない公務員よりは自分でやめたりできる弁護士はずいぶん気が楽なのかもしれない。

我々がやった工夫は、パソコンにブラインドシートを貼り、裁判官にバレないようにチャットで密談をしたり、するくらいだった(電子マンガを読む猛者もいたが)。適度に無理をせずに修習の効率を伸ばすことが大切だ。いまさらながらこの記事公開したら誰かに怒られないかな。

裁判所や検察では事務官と仲良くする努力をすると、縁が繋がる。一緒にゴルフをしたり、修習中も助けてくれたりとやって損は無い。異動もあるのでまたどこかで会えることもあるかもしれませんしね。

裁判所や検察でも私はマイペースだったので朝来たら給湯室でたっぷりコーヒーを容れて冷蔵庫に保管して飲んでました。お茶作ってるやつもいました。それくらいには自由度はあります。人のこない階を見つけて休憩してる人もいました。息が詰まるので責められないです。

合わない修習が一つくらいあっても仕方ない。そういう時はうまーく手を抜くというのもまた必要なスキルかと思います。起案は早く出さずともちゃんと書いてればいいし(下手に早く書くとお代わり起案がきて首を絞めることになります。)傍聴も記録を消化できる量で行くのが適切です。もちろん、任官等を考えている場合は全力で行くべきでしょうが。

ちなみに、このあと弁護修習の前半くらいまで我々は自宅待機になります。研修所から起案の課題が出る以外は特にやることもなく、研修所もイレギュラーすぎて、課題に対して大した解説もなく、弁護修習先の先生と連絡を取りつつ、宣言明けを待ちました。

この頃あまりにも人と合わないので、我々の中ではどうぶつの森が流行しましたね。オンラインで遊べるツールが沢山あるのはとても良いことです。わたしは修習地で出来たパートナーとゲームしたりしてなんとか生きていましたが、流石に毎日家にいると鬱っぽくなり、外に散歩したり、趣味の歌に時間を費やしたりしていました。
今年はこのようなことにはならない、と思いたいですね。なんだかんだ非常事態宣言が今と同じように出ることになれば、また修習生は自宅待機になったりするのかな?流石にないと思いますし、昨年よりは研修所も準備が出来ていると思います。
我々が体験した経験が次の世代に活きるといいですね。

それではまた、弁護修習編で。

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