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画一的な世界に慣れた子どもたちへの新たな体験;自然素材が心に与える影響

こんにちは、シュタイナー手仕事教育協会の門野由香子です。今日は、自然素材が子どもたちの心に与えてくれる影響についてお話ししたいと思っています。


自然素材に触れることによって、子どもたちの生命力は内面から生き生きとしてきます。羊毛のふわふわとした感触、草木の色、木の枝、石の重さや冷たさといった自然のものが持つ有機的な手触り

手仕事教育では、可能な限り、自然素材を用いることを心がけています。道具や材料も0から創り出すことを大切にしています。なぜならその過程は、人間が経験してきた進化の道へと立ち返ることでもあるからです。


工場で大量生産されたものを目にし、手にし使うことの多い現代の生活。でも、人として私たちがどのような過程を経て今に至るのかという体験をわずかながらでも知識としてではなく、心と体で感じてく事には深い意味があります。


木や花や草や石には一つとして同じ形が存在しません。独自の美しさを持つそれぞれの違いを目にし、感じることは、現代社会で規格化されたものに慣れきった私たちにとって貴重な経験となります。


画一的なものに囲まれて暮らしている私たちにとって、自然素材が持つ流れるような有機的なかたちを目にし、感じていくことは心にも大きな影響を与えます。そこには、「画一的でなくていいんだよ、流れるようなものの中にこそ、人間らしさがあるんだよ。心を自由に動かし感じてごらん」というメッセージがあるような気持ちにもなります。


また、子どもたちは本来、じっと体全体を使って観察することが大好きです。雲が移り変わる様子や夕暮れ時の驚くような壮大な色彩の変化を見ることや、満天の手が届きそうな星空。まあるく大きなお月様やまたは時には鏡のようにピカピカと光る月の不思議さ。子供時代には大きな畏れの気持ちも感じながらも没頭しながら壮大な自然の不思議さに見入った体験はどなたにでもあるのではないでしょうか。


しかし、現代の忙しい生活の中で、子どもたちに十分な時間を与えて自然を観察し、味わい、感じさせるということができているでしょうか?自然の中に連れて行き、心ゆくまで自然の恵みを観察し、体全体で伸び伸びと自由に、ただただ感じる入る時間を与えられているでしょうか。ついつい説明をたくさんして教え込むという時間にはなっていないでしょうか。

手仕事教育では、子供たちは使用する自然素材を丁寧に見て、感じ入るという時間を大切にしています。小さなことに「気づき、不思議さを味わい、心いくまで感じ入る」という時間をとても大切にしているのです。
それは、膨大な情報や知識が重要とされる世の中で歯痒いぐらいにゆっくりとした時間に見えるかもしれません。でも、幼いうちにはこの「感じ入る、不思議さに没頭する」という時間がとても大切なのです。この時間こそが、子供たちが大きくなった時の創造性、生み出し自分で進んでいくという力へ変わっていくのです。


また、自然がもたらす流動的な美しさに触れることは、子供たちの心を動き出させるきっかけにもなります。


人工的で画一的で手が加わりすぎた「物」の世界に生きる私たちにとって、自然の流れるような美しさに目を向け、そこを心に染み入るように感じていく事には、皆さんが想像している以上に、子どもの心の成長には欠かせない事なのです。


そして、自然素材には生きているものが持つ生命に根ざした確かなぬくもりがあります。パソコンやスマートフォン、ゲームなど機械に触れることが多い現代の生活では、柔らかくあたたかな素材に意識的に触れる機会を増やさなければ、子どもたちの心はあたたかく豊かになりません。この温もりに触れることは、子どもたちの心をも温かくし、それこそが子供たちの心の感性や成長を促すのです。

このように育まれた心の温もりは、周囲の友達関係にも良い影響を与えることでしょう。温もりを知る子どもたちは、周囲にもその熱を分け与えることができるからです。

最後に、自然素材を用いた手仕事教育には、子どもたちにとって多くの教えや価値があるだけでなく、大人にとっても改めて自然と向き合い、人間らしい感性や豊かさを再認識する良い機会となります。私たち大人も、自然からの素材を「物」へと変容させていく中で、手仕事に意識的に取り組むことで、日々の生活の中で失いがちな心の豊かさ、生きがいといったことも感じられる時間となっています。


最後までお読みいただきありがとうございました。
門野由香子/ Yukako Kadono



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