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Lemonが流行った頃、私達は別れた

大好きな恋人がいた。本当に大切な人だったけど、決断をして、別れてもらった。
遠距離恋愛をしていた為、最後も電話になってしまった。あんなに一緒にいたのに。最後くらい、顔を見て、目を見て話したかったなあ。
電話越しに、お互い、泣いていた。

その頃、世間では米津玄師のLemonが盛大に流行っていた。
どこへ行っても、この曲が耳に入ってきた。
街を歩けばこの曲、なんとなくテレビをつければこの曲。笑

もともとは、終わった恋愛の曲ではなく
米津さんの最愛の亡くなったおじいさまを想って綴られた歌詞らしい。

そうなんだ、とその思いを想像して聴くも
やっぱり当時のわたしにとっては
別れた彼のことを考えてしまう曲だった。

どこかであなたが今 わたしと同じ様な
涙にくれ 淋しさの中にいるなら
わたしのことなどどうか 忘れてください
そんなことを心から願うほどに
今でもあなたはわたしの光

遠くにいたから、なおさら。
共通の知り合いも少なかったし。
すこし変わった人だった彼は、この時代でもSNSを全くしなかったこともあって。

彼がどうしているか、別れた後どれだけ気になっても全く分からなかった。

付き合ってる時に言ってた。「別れた彼女がどうしてるかは聞きたくない。自分の知らないところで幸せになってほしい。」って。
別れた彼女となった今、もう連絡は、取らない。

どこで何をしてるだろう。
寂しいのか、悲しいのか、もう平気なのか。

辛い思いはしてほしくない。
忘れてもらうくらいが幸せだと。
でも、忘れられるだなんて、とんでもないことだ、想像したらまた涙が出た。

この曲の中で何度も
「今でもあなたはわたしの光」
という歌詞が出てくる。

それって、辛いよなと思う。
別れた恋人なんて、ちょこっと悪口言えるくらいの方が幸せじゃないですか。なんであんな人好きだったんだろーなあって笑いながら言えるような。
でも、わたしは。
あなたの悪口なんて出てこなかったし、
あなたも、わたしの悪口なんてきっと言わないんだろう。
最後の電話、別れ話を承諾してくれた上でも尚わたしのことをめいっぱい褒めた言葉が贈られた。

「綺麗な人になりすぎてたのよ。」
母は言った。わたしが、彼の中で、実際の私よりも、ずっと綺麗な人になってしまってたんだって。
「ほら、贈ってもらってきたプレゼントだって。」
ウェッジウッドのかわいらしい佇まいの花瓶。
白い手には金より銀色が似合うと言って選んでくれた錫の指輪。小さなお花のモチーフは、つけると指に花が咲くようで嬉しかった。
明るく優しい空色のやわらかいマフラー。
涙型のダイアモンドは、店員さんに習ったという涙型の形に込められた意味まで教えてくれた。

母の言葉は、なるほどと印象に残った。
わたしは本当はそんなに綺麗な人間じゃない。
でも、そうじゃないところは
見せないようにしてしまっていたのかな。

きっとあんまり見せてなかったけど、
だめなとこも、やなやつなとこも、わたしいっぱいあるよ。
それを知ってもらっていれば、
今でもあなたはわたしの光、みたいには思われないですむのになあ。
いや、思われてないかな。そうだと、良い。
そんなことを思った。

何をしていたの 何を見ていたの
わたしの知らない横顔で

別れを切り出した方が
どきっとさせられる歌詞だ。
何もわるいことをしていたわけではない。
でも、ただ、誰かと一緒に同じものを見続けることは
難しいことなんだなあと、気付いた。

きっともうこれ以上 傷つくことなど
ありはしないとわかっている

電話をしながら泣いて、電話を切ったあとも泣いた。そのときは、そう思った。

別れてしばらく経ってからも、やっぱり
思い出せば涙なんて簡単に溢れた。

思い出すことが減ってきても、
この曲を聞けば涙は滲んだ。

だからわたしは、この恋とこの曲にちなんで
いつか思いっきり湿っぽい文でも書いてやろうと目論んでいた。

そういう予定だったのになあ。

彼と別れてから四季もひとまわりした頃
かつて暮らした街を久しぶりに訪れた。
彼との思い出も、至るところに詰まった街。

旅をする前、
あの街を歩くと、ぎゅーっと胸が詰まったりするのかな…と想像した。
期待と呼ぶとおかしいが、そうなる自分がいるのだと思っていた。

でもね、違うかった。
告白してもらった交差点。
いつも待ち合わせに来てくれた私の家の前。
付き合う前も、付き合ってからもよく行ったレストラン。
あー、こんなことあったな。
ただ、そう思い出して、ちょっと深呼吸するだけ。こころがいっぱいになることも、乱れることもない。 

過去が過去になった。

前向きなことなんだろうね。
「でも、なんかちょっと、さみしいよね。」
この変化を友だちはそう言った。

#米津玄師 #Lemon #恋愛 #別れ #歌詞 #音楽  


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