PLANETS
記事一覧
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の達成 アイドルの成熟から大ガールズバンド時代へ|徳田四
『ぼっち・ざ・ろっく!』『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』『ガールズバンドクライ』――2022年から毎年立て続けにヒットしている「ガールズバンド」アニメが、アニメ業界を震撼させている。2010年代以降のアイドルブームからの大転換、かつての『けいおん!』(2009)をはじめとする〈日常系〉の再解釈、「百合もの」の勃興、ロックンロール神話の再興、声優陣によるリアルライブと「2.
中心をもたない、現象としてのゲームについて 第41回 第5章-7ハブとしての循環概念を評価する|井上明人
井上明人 中心をもたない、現象としてのゲームについて
第41回 第5章-7ハブとしての循環概念を評価する5.7 ハブとしての循環概念を評価する
5.7.1 包含関係によるハブ概念としての循環概念
前回、「遊び-ゲーム」に関わる現象を観察する4つの観察モデルが、さまざまな遊び-ゲームを捉える説明(学習説や非日常説)の多くに適用可能なものであることを示してきた。
これは、いわば複数の要素間の
世界文学のアーキテクチャ 終章 時間――ニヒリズムを超えて|福嶋亮大(後編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
6、南北戦争の解釈――マルクスとフォークナー二〇世紀文学が世界性の根拠を時間性に認めたこと――この現象を考察しようとするとき、一八九七年生まれのアメリカ文学の巨匠ウィリアム・フォークナーの名を欠かせない。思うに、一九世紀アメリカの最大の思想家は、他のいかなる哲学者でも学者でもなく、小説家のメルヴィルである。それはメルヴィルが、資本主義の空間性=世界性を誰よりも多
世界文学のアーキテクチャ 終章 時間――ニヒリズムを超えて|福嶋亮大(前編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
1、近代小説に随伴するニヒリズム一八八〇年代に書かれた遺稿のなかで、ニーチェは「ニヒリズムが戸口に立っている。このすべての訪客のうちでもっとも不気味な客は、どこからわれわれのところへ来たのであろうか」と書き記した。ニーチェによれば「神が死んだ」後、人間の基準になるのはもはや人間だけである。しかし、神の死によって生じたのは、神のみならずあらゆる価値を崩落させ、意味
勇者シリーズ(7)「勇者警察ジェイデッカー」|池田明季哉(後編)
母なる勇太、父たるレジーナファイヤージェイデッカー誕生は、次のような展開を通じて行われる。
かつてデッカードを倒したチーフテンは、紆余曲折を経て再びブレイブポリスの前に立ちはだかる。もともとは相棒を失ったことを悲しむ心を持っていたチーフテンは、しかし創造主たるビクティムが「強い者が全てを手にする」という「悪の心」を徹底させたことで、片方が片方を殺害し、そのパーツを吸収するかたちで一種の「グレート
世界文学のアーキテクチャ 第一四章 不確実性――小説的思考の核心|福嶋亮大(後編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
7、グローバリズムをくり抜く地震こうして、一八世紀の新興の小説家=散文家は、オープンで不確実な世界への冒険を活気づけた。ただ、ここには面白い逆説がある。それは、進歩的な冒険者に集中すればするほど、その主人公をあらかじめくり抜いている力が目立つことである。小説を読むとき、われわれは主体という「図」にフォーカスするだけでなく、主体の背後にあって主体をあらかじめ規定す
世界文学のアーキテクチャ 第一四章 不確実性――小説的思考の核心|福嶋亮大(前編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
1、不確実性を思考する本連載もそろそろ終わりに近づいている。私はここまで、世界文学の中心を占める小説を、広義の人類学的対象として捉えてきた。人類の諸文化がそれぞれ世界理解の型をもつように、小説もいわば特異な人工知能として、世界を思考し、解釈し、再構成する力をもつ。人類と小説はドン・キホーテとロシナンテのように、異質な隣人として共生関係を結んだ。人間は小説を利用し
中心をもたない、現象としてのゲームについて 第40回 第5章-5.4 遊び-ゲームにおけるルールを循環モデルとして再記述する|井上明人
井上明人 中心をもたない、現象としてのゲームについて
第40回 第5章-5.4 遊び-ゲームにおけるルールを循環モデルとして再記述する5.5.4 遊び-ゲームにおけるルールを循環モデルとして再記述する
一見すると構造が固定されているようなルールやゴールについても、循環モデルで記述しなおすことができる。
構造として固定されているものを、ルールやゴール、ソースコードといったゲームのメカニクス部
21世紀のジャポニズム 陰影「礼賛」から陰影「退散」へ(ニューヨークのイノベーションシーンについて 後編#2)|橘宏樹
橘宏樹 現役官僚のニューヨーク駐在日記
第13回 21世紀のジャポニズム 陰影「礼賛」から陰影「退散」へ(ニューヨークのイノベーションシーンについて 後編#2)こんにちは。橘宏樹です。本稿では、前々回に引き続き、ニューヨークにイノベーションをもたらしている日本人をご紹介したいと思います。
▲フォーブス誌やフォックスニュースにも掲載。
1人目は、PLANETSでもおなじみのアーティスト、増田セ
【6/ 18 (火)】信田さよ子×三宅香帆 「母娘問題」の「解」を探す対話——『娘が母を殺すには?』出版記念トークショー@青山ブックセンター
PLANETSよりトークイベント開催のお知らせです。三宅香帆さんの『娘が母を殺すには?』出版を記念して、信田さよ子さんのトークショーを青山ブックセンターにて開催します!
臨床心理士として「アダルトチルドレン」「母娘問題」といった問題提起を通じて社会に大きな影響を与えた信田さよ子さんと、ベストセラー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか 』が話題の若手批評家・三宅香帆さんのトークショーを開催します
中心をもたない、現象としてのゲームについて 第39回 第5章-5 ゲームを循環として再記述する|井上明人
井上明人 中心をもたない、現象としてのゲームについて
第39回 第5章-5 ゲームを循環として再記述する5.5 ゲームを循環として再記述する
さて、「循環」の概念を捉えるための道具立てとして四つの観察モデルが整ったところで、ようやく「循環」の概念がなぜゲーム全体を統合的に捉えるキー概念なのかを示したい。
一言で言えば、ゲームを遊ぶというプロセスは、多様な循環プロセスであると言えるからだ。そ
第十三章 人間――悪・可塑性・人種|福嶋亮大(後編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
6、可塑性を利用する芸術家――オーウェルの『一九八四年』
架空の全体主義国家オセアニアを舞台とする『一九八四年』では、戦時下の党を率いるビッグ・ブラザーが、テレスクリーンを用いて社会の全体をくまなく監視している。真理省記録局に勤務するウィンストン・スミスは、過去の文書の改竄に従事しているが、やがて魅力的な女性ジュリアと出会ったことをきっかけに党の禁を破る。彼女
第十三章 人間――悪・可塑性・人種|福嶋亮大(前編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
1、悪の発明――ラス・カサス的問題
文学にとって世界とは何か。私は歴史的な見地から、その問いを初期グローバリゼーションと紐づけた。世界とはたんに空間的な広さを指す概念ではなく、異質なものとの接近遭遇がたえず起こる場である。異なる歴史、異なる習俗、異なる人間との関係の集合体としての〈世界〉――その成立に欠かせなかったのが、アメリカ大陸へのヨーロッパ人の進出であり
6/26(水)開催! 日本人はもう「田舎」には住めないのか? 「地方創生」の理想と現実を身も蓋もなく議論する|家入一真×宇野常寛×占部まり×たかまつなな×牧野圭太(渋谷セカンドステージ vol.28)
PLANETSよりトークイベント開催のお知らせです!
渋谷ヒカリエ 8/COURTを舞台に、PLANETSと東急株式会社が共同で、渋谷から新しい文化を発信することをテーマに実施している「渋谷セカンドステージ」、次回の開催が決まりました。
今回のテーマは「地方創生とまちづくり」です。
2010年代以降「地方創生」が叫ばれてきた一方、 都心部と地方との分断が加速しつづけた現代に必要な再建計画はど
勇者シリーズ(7)「勇者警察ジェイデッカー」|池田明季哉(中編)
「人間」になっていくロボットたち
ダ・ガーンは地球の意志ともいえるような超存在にその人格の根拠を置いていた。しかしジェイデッカーのブレイブポリスは、あくまで超AIという人間が生み出したテクノロジーである。これ自体はマイトガインの勇者特急隊にも存在した設定だったが、それはあくまで旋風寺舞人が所有する旋風寺コンツェルンのテクノロジーのひとつにすぎず、超存在「ではない」意志の根拠として設定されただけで
第十二章 制作――ハードウェアの探究|福嶋亮大(後編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
6、制作の哲学――他者性のオン/オフ
制作者は、素材=ハードウェアとしての他者を象る。これは他者性の創設である。しかし、この被造物が制作者と合一するとき、他者性はむしろ打ち消される。制作者にとって、素材の他者性はときにオンになり、ときにオフになる。さらに、制作者自身も自らの制作物の魅力や恐怖に屈するとき、自己がオンの状態とオフの状態が重なりあう。『フランケンシ