世界文学のアーキテクチャ 終章 時間――ニヒリズムを超えて|福嶋亮大(後編)
福嶋亮大 世界文学のアーキテクチャ
6、南北戦争の解釈――マルクスとフォークナー二〇世紀文学が世界性の根拠を時間性に認めたこと――この現象を考察しようとするとき、一八九七年生まれのアメリカ文学の巨匠ウィリアム・フォークナーの名を欠かせない。思うに、一九世紀アメリカの最大の思想家は、他のいかなる哲学者でも学者でもなく、小説家のメルヴィルである。それはメルヴィルが、資本主義の空間性=世界性を誰よりも多面的に捉えていたからである。同様に、フォークナーは時間性=世界性の迷宮に誰よりも