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私が好きな太宰の短編小説4選

太宰治といえば、代表作『人間失格』のように、陰鬱とした悲劇的な作品の印象が強いかもしれません。そういった作品も勿論太宰の魅力ですが、優しい眼差しで人々を描いた温かい短編も数多く残しています。

今回は私が好きな太宰治の短編を四編紹介したいと思います。
なお、物語の内容に一部触れている箇所がありますので、未読の方はご注意くださいませ。


1.黄金風景

主人公である「私」の再出発を描いた希望に溢れる作品です。十分程度で読める短い作品ですが、太宰が込めた想いがひしひしと伝わってきます。『黄金風景』については、別記事で詳しく紹介していますので、良ければそちらもご覧下さい。


2.女生徒

太宰の女性一人称小説が大好きです。女性独白体は太宰の真骨頂だと、個人的には思っています。太宰ほど女性の書き方が上手い作家は、なかなかいないのではないでしょうか。太宰の愛読者だった有明淑(ありあけしず)という女性から寄せられた日記をもとに、14歳の少女の一日が描かれた作品です。思春期の少女ならではの移り気な心情や繊細さが見事に表現されています。私は二十代で読みましたが、十代の思春期に読みたかったと強く思います。


3.ろまん灯籠

小説好きの五人兄妹がリレー小説を書くという微笑ましい内容です。リレー小説の内容もですが、個性的な兄妹たちが物語を紡いでいく過程がシンプルに面白く、一家団欒の温かさを味わえる佳作です。


4.畜犬談

太宰のユーモアのセンスが遺憾無く発揮された作品です。主人公の「私」は、犬のことを嫌悪し、いつか食いつかれると確信しています。

私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰くいつかれるであろうという自信である。私は、きっと噛かまれるにちがいない。自信があるのである。よくぞ、きょうまで喰いつかれもせず無事に過してきたものだと不思議な気さえしているのである。諸君、犬は猛獣である。

『畜犬談』本文より
主人公にとって犬はこんなイメージでしょうか。

冒頭から徹底的に犬を罵倒する文章が続き、あまりの熱量に思わず笑いがこぼれてしまいます。犬を避けようとするも、空回りしてしまう主人公の姿がコミカルに描かれています。


まとめ

本記事では四つの短編を紹介しましたが、この他にも多くの優れた作品が残されています。『ヴィヨンの妻』、『葉桜と魔笛』、『待つ』、『雪の夜の話』等々、短編だけでも魅力的な作品を挙げるときりがありません。
読みやすい作品も多くありますので、気になる作品があれば、是非読んでみてください。


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