マガジンのカバー画像

作品解説

2
特定の作品解説
運営しているクリエイター

#読書

文豪たちと『桃太郎』 ─桃太郎は悪人だったのか

文豪たちと『桃太郎』 ─桃太郎は悪人だったのか

桃から生まれた心優しき桃太郎が、鬼ヶ島に行き、悪い鬼を退治する─。
現代の『桃太郎』は、勧善懲悪の物語として誰もが知るところです。

しかし、こう思われたことのある方も多いのではないでしょうか。

「桃太郎は、ただの盗人なのでは」と。

『桃太郎』は、物語の大筋は揺るがないものの、時代や地域によって形を変えながら伝えられてきました。時代とともに変化してきた桃太郎像ですが、中にはやはり、桃太郎=正義

もっとみる
負けた。これは、いいことだ。  ─ 太宰治が見た『黄金風景』

負けた。これは、いいことだ。 ─ 太宰治が見た『黄金風景』

太宰治の『黄金風景』を初めて読んだのは、学生時代でした。
太宰=陰鬱という先入観を持っていた私は、この物語を読み衝撃を受けました。

『黄金風景』は、原稿用紙八枚の短い物語です。『きりぎりす』(新潮文庫)に収録されているほか、青空文庫でも読むことができます。

「私」の回想

物語は主人公である「私」による幼少期の回想から始まります。
裕福な家に生まれた「私」は、横柄な性格で、お慶という名の女中を

もっとみる