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いま、お寿司が食べたい

妊娠するということは素晴らしいことである。

だって、自分の中に新しい命が宿るのだ。

自分が今こうしてここにいるのも、隣の部屋でリモートワークしている夫と出逢い、結婚できたのも、自分や夫が同じように母親の胎内で大切に育てられ、この世に生を受け、ここまで大きく成長したからに他ならないのだ。

人体の神秘、奇跡。言い知れぬ感動が自分の中に駆け巡っている。

駆け巡ってはいるのだが、それとは別にちょっとした問題が起きている。

先日、つわりのことについて書いた記事を投稿した。最近は、何が食べたいかを自分の体に聞く日々を過ごしているよという内容だ。

実は、私はいま無性に食べたいものが2つある。

お寿司と蒙古タンメン中本(北極)だ。

お寿司はいなり寿司や納豆巻きをたまに食べるが、いや、そういうお寿司ではない。いわゆる生寿司だ。

まぐろ、いか、甘えび、たこ、サーモン、はまち、いくら、うに、つぶ貝…
※これ以上書くとつらさが倍増するのでここで打ち止めとする。

私はお寿司が大好きだ。小学生の卒業文集のプロフィール欄に「好きなたべもの:お寿司」と書くくらい、お寿司好き歴は筋金入りと言ってもいい。

毎日寿司でもおそらく飽きないだろう。それくらいの自信がある。

それと同じくらいに好きなのが蒙古タンメン中本、しかも北極だ。いわゆる激辛料理。

元々そこそこ辛い料理は好きだったが、以前中国に留学した際に、激辛好きに火がついた。以来、人が「なにこれ辛すぎ無理!」という辛さの料理でも美味しくいただけるようになった。

激辛料理を食べると、頭の毛穴が開きそこが呼吸しているように感じて爽快感が押し寄せる。そして舌を刺激し続ける辛味。
一度、激辛の虜になると、そこから抜け出すのは困難を極める。

現に、部署内で「中本会」なる集まりを作っているのだが、このメンバー(といっても毎回参加するのは私含めて3人…)達のいずれかが「中本切れ」を起こすと、招集通知がかかる。

「中本切れました。お願いします。行きましょう。」

といった具合だ。ニコチン中毒やカフェイン中毒と何ら変わらないのではないかというほどの中毒性なのだ。

「激辛好きはドMだ」などと言われるが、ドMで結構。
美味いものは美味いのだ。

それがどうしたことか。

お寿司と蒙古タンメン中本。私の構成要素といっても過言ではない、この2つの料理が一度にして私の前から消えてしまったのである。

そう、妊娠だ。

妊娠中は食べ物や飲み物に気を付けなければならない。

免疫力が低下して食中毒にかかりやすかったり、胃腸の機能も低下しているからだ。

それゆえ、お寿司も蒙古タンメン中本も控えなければならない食べ物となってしまったのである。

今までにも、口内炎でしばらく蒙古タンメン中本が食べられなくなるということはあった。でもその時はお寿司がそばにいてくれた。

逆の時もある。しかしどの場合もお寿司か蒙古タンメン中本のいずれかが私のそばで私の食欲と幸せを満たしてくれていたのだ。

食べたいときに食べたいものを食べる!そんな人生を送ってきた私にとってお寿司と蒙古タンメン中本はかけがえのない存在なのだ。
※なんだか壮大な話風になってきてしまっていることに一抹の不安を感じる。

分かっている、分かっているのだ。子どものためならばなんてことはない。
子どもができて、喜びの気持ちに満ち溢れているのは事実である。本当だ。

なので、なんとも言えない複雑な気持ちなのだ。

この複雑な気持ちを誰かに知ってもらいたい。子どもができて嬉しいんだよ!授かりものに本当に感謝しているよ!でも…!でもいきなり好きな食べ物を食べられなくなったつらさを聞いて…!という思いで今回はこの記事を書いている。

そんなこんなで出産後、退院したらいの一番に私は生寿司と蒙古タンメン中本に行くにちがいない。

きっと彼ら(いつの間にか擬人化してしまっているが)も長らく姿を見せなくなった私を心配しているはずだ。あんなに足繁く通っていたのだから。

「よ、久しぶり。」と、声をかけて、私はお寿司と蒙古タンメン中本を同時に相手にする気満々だ。食べ過ぎ上等。お願いこの時だけ許してください。

……いや、子どもがいるからお家でお寿司パーティーだな。セブンイレブンで買ってきた蒙古タンメン中本のカップ麺を添えて。

なんてことを考えながら、我が子が育つお腹をそっと撫でてみる。


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